美味しい「機内食」に救われた、羽田までの長い道のり
ポルトガルのリスボンから日本に帰る道のりは、とてもとても長いものでした。MotoGPのポルトガルGP取材を終えたわたし(筆者:伊藤英里)は、まずはリスボンからスペインのマドリードに向かいました。
余談ですが、その日のリスボンは荒天で、チェックインの手続きをしているときに、激しい雨音が空港内部にまで響いてきたほどです。飛行機がキャンセルにならないだろうかと本当に肝を冷やしましたが(といっても、後述のようにマドリードではたっぷり時間の余裕があったわけですが)、16時45分の予定から1時間半遅れて、18時15分に搭乗が始まりました。
無事に到着したマドリードでは、空港近くのゲストハウスで20時間を過ごし、カタールのドーハへ移動。空港内のラウンジで7時間ほど仕事をして、ここでやっと最終目的地である羽田空港に向かう飛行機に搭乗……という、約2日間の行程だったのです。
考えただけでもぐったりしてしまうスケジュールで、もちろん、実際にもしっかりとくたびれました。
こうして乗り継ぎの移動や、乗り継ぎの空港で歩き回って落ち着ける場所を確保することで頭がいっぱいだったからでしょうか。それとも、MotoGP開幕戦のカタールGPからポルトガルGPまでを取材し、約3週間、日本を離れていたからでしょうか。今回の機内食は、味はもちろん、とても心に沁みました。
マドリードからドーハまでの6時間半、カタール航空のフライトでサーブされたのは、メインが牛肉の煮込みとライスというメニューでした。もちろん、ご飯(ライス)は久しぶりです。ヨーロッパ出発の、しかも日本ではなくドーハに向かうフライトでご飯に出会えるなんて……! これまでの疲労とこれからの疲れを思ってぐったり気味だったわたしは、このご飯を見て、すっかり嬉しくなってしまいました。
日本のお米よりもパサついていたけれど、そんなことは問題ではありません。それがご飯であることが重要なのです。おかずとともにご飯を食べられる。機内という状況で(そしてエコノミークラスで)、これ以上の幸せがあるでしょうか。
少なくとも、わたしにとっては、ないと言えます。牛肉の煮込みもご飯に合う味で、しっかりと堪能することができました。
ラッキーなことに、ドーハから羽田空港に向かうカタール航空のフライトも、とても美味しい機内食でした。
離陸後の機内食ではパスタをチョイス。トマトソースのニョッキでした。このトマトソースが、びっくりするくらいに美味しいのです。
着陸前の機内食ではビーフシチューを選び、付け合わせのマッシュポテトもまた、バターと塩気がほどよく、ずっと食べていたいくらいでした。日本に戻るフライトの機内食は、わたしの気持ちをずっと上向きにしてくれました。
実のところ、わたしが機内食に大きな興味を持っているのは、味と言うよりも、食事に関するものが、小さなトレーに凝縮されている様子が美しいからです。けれど今回は、どっぷりと疲労の海に浸かっていたからこそ、美味しい食事のありがたみを感じました。
「おいしかったなあ」と、余韻を味わいながら羽田空港に到着したわたしは、その後、なかなか出てこない荷物と、税関での長蛇の列によって終電との接戦を強いられることになるのですが……。
そこでネガティブな気持ちに振り回されなかったのも、美味しいごはんのおかげだったのかも、なんて思います。少し、おおげさかもしれませんけど。
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