現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 機能よりモノっぽさで勝負!? ホンダ ザッツの叶わなかった挑戦【偉大な生産終了車】

ここから本文です

機能よりモノっぽさで勝負!? ホンダ ザッツの叶わなかった挑戦【偉大な生産終了車】

掲載 更新 15
機能よりモノっぽさで勝負!? ホンダ ザッツの叶わなかった挑戦【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

脅威の存在!? すでに抜かれている!? 中国自動車メーカーの知られざる実力

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ザッツ(2002-2007)をご紹介します。

【画像ギャラリー】シンプルで飾らないという魅力 ホンダ ザッツをギャラリーでチェック!!!

文/伊達軍曹、写真/HONDA

■シンプルに、さりげなく。クルマと若者たちとの「新時代」を考えたザッツ

 3代目のライフをベースに生まれた、主に20代から30代の男性をターゲットとした「モノっぽいデザイン」の新型車。

 しかしメーカーが想定したゾーンにユーザーはあまりおらず、車としての仕上がりが正直今ひとつだったこともあって、1代限りで生産終了となった異色の軽トールワゴン。それがホンダ ザッツです。

 ザッツの原型となったのは、2001年の東京モーターショーに参考出品された「w・i・c」(What is car?)という試作車。当時のプレスリリースには、以下のようなことが書かれていました。

「服や時計、あるいはカバンなど。モノがもつその“雰囲気”で、自分が身につけるモノを選ぶ人が増えているようです。そんな時代のクルマを求めて生まれたのが、《w・i・c》です。(中略)スペックよりも“雰囲気”で選ぶ。さりげなく、オシャレに乗れる。そんな“mono(モノ)”感覚のクルマが《w・i・c》です。

 このw・i・cほぼそのままのカタチで2002年に発売されたザッツは前述のとおり、1998年にデビューした3代目のホンダ ライフがベース。

ホンダ ザッツ。ボディフォルムからヘッドライトやリアコンビネーションランプ、ドアミラーにいたる全体に 「ラウンドスクエアデザイン」を採用し、「シンプル」「力強さ」「遊びごころ」を表現

 3代目ライフの車台とドライブトレーンに、「ラウンドスクエアデザイン」とうたわれた四角くて角が丸いボディを載せています。

 この四角いカタチは「軽規格のなかで最大限の居住空間を得る」という機能要件ではなく、どちらかといえば「シンプルさ」「さりげなさ」を訴求するというデザイン面での理由で採用されたものでした。

 そしてドライバーが「自分のための空間」と感じられるファーストカーパッケージを実現させるため、ルーフの四隅は運転席から遠ざけられ、ウィンドウを立たせてレイアウトを採用。

 言わば、目指したのは「若い男性向けのちょっとステキなワンルームマンション」といったところでしょうか。

「プライベートスペース」をイメージした、というインテリアデザイン

 搭載エンジンは自然吸気の直3SOHCと、そのターボチャージャー付きの2種類で、トランスミッションはいずれも3速AT。駆動方式はFFのほかに4WDも用意されました。

 そんなこんなでスタートしたホンダ ザッツは、当初「月販6000台」を目標としていましたが、発売翌年の2003年には早くも月平均1500台前後まで落ち込み、2004年には月平均800台前後という惨状に。

 そのためホンダは2004年10月、ベース車より18万円近く安い「スペシャルエディション」を投入。このグレードはよく売れたのですが、ザッツというブランド全体のパワーを押し上げたわけではありませんでした。

 そして2006年2月に、事実上の後継モデルである「ゼスト」が発売されるとザッツのターボ車は廃番となり、自然吸気版のみをマイナーチェンジ。

 しかしその自然吸気モデルも2007年9月には生産終了となり、同年10月、ホンダ ザッツは1代限りで販売終了となりました。

■ザッツが1代限りで消えた理由「新時代」なんて実はなかった??

 好き嫌いは分かれそうですが、「好きな人は好き」だと思われるデザイン性を有していたホンダ ザッツが、あえなく1代限りで消滅した理由。

 それは、ザッツの前身である「w・i・c」のプレスリリースにあった「スペックよりも“雰囲気”で選ぶ」というユーザーが実際の市場にはいなかったか、あるいは極端に少なかった――ということなのでしょう。

 ザッツは、確かに「雰囲気」がある軽自動車ではありました。そして前述のとおり好き嫌いは分かれそうですが、こういったモノっぽいデザインのプロダクトを好む層というのは、いつの時代も確実に存在しています。

リアビュー。「That’s(ザッツ)」という名前には、「クルマと若い人たちとの新しいつきあい方を考える中で、お気に入りのモノを選ぶように『あれだッ。』と思わず言ってしまうような、親しみを持てる存在のクルマになれれば、という気持ち」が込められたという

 しかしホンダ ザッツは、言ってみれば「雰囲気だけ」の車でした。

 2002年にデビューしたザッツですが、ベースは1998年デビューの3代目ライフですので、トランスミッションは古くさい3速AT。

 そして、運転者が「自分のための空間」と感じられることができる“ファーストカーパッケージ”についてはある程度成功していたように思いますが、後席は正直、「天井は高いのに足元空間はかなり狭い」というものでした。

 そしてリアシートは座面が短く平坦で、バックレストもヘッドレストも頼りない作り。「物置き」としては十分なのでしょうが、「人間が乗る」には、お世辞にも快適ではありませんでした。

 もちろん当時のホンダの技術者は、そんなことは百も承知だったでしょう。

 制約がある軽自動車規格の範囲内で「どうするべきか?」をとことん考え、

「後席も含めた実用性うんぬんではなく“雰囲気”を重視した軽トールワゴンを作る。そうすれば、モノについての感度が高い今どきの20~30代男性が買ってくれるに違いない」

と読んだわけです。

 その読みについて18年後の今、後出しで批判するわけではありません。しかし結果として、それは間違った読みでした。

 実際に売れたのは、あんまりオシャレではないかもしれませんが、ホイールベースを60mm延ばして後席を広くした2003年登場の4代目ライフであり、同時期のスズキ ワゴンRやダイハツ ムーヴなどの「機能的な軽自動車」でした。

 しかしデザインやたたずまいは決して悪くなかったホンダ ザッツだけに、「これで機能も伴っていれば……」と残念に思います。

 とはいえ実際の開発というのは、さまざまな制約や時代のめぐり合わせの下で行わざるを得ないものですので、まあ仕方なかったのでしょう。

■ホンダ ザッツ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1620mm
・ホイールベース:2360mm
・車重:860kg
・エンジン:直列3気筒SOHCターボ、656cc
・最高出力:64ps/6000rpm
・最大トルク:9.5kgm/4000rpm
・燃費:17.0km/L(10・15モード)
・価格:116万9000円(2002年式 ターボ FF)

【画像ギャラリー】シンプルで飾らないという魅力 ホンダ ザッツをギャラリーでチェック!!!

こんな記事も読まれています

九州産交バスが「くまモン」デザインのラッピングバス運行開始
九州産交バスが「くまモン」デザインのラッピングバス運行開始
レスポンス
NSXの次の「タイプR」はホンダじゃなくてマツダ「ランティス」だった! 2リッターV6まで搭載するも1代で消えた残念な名車
NSXの次の「タイプR」はホンダじゃなくてマツダ「ランティス」だった! 2リッターV6まで搭載するも1代で消えた残念な名車
WEB CARTOP
新車購入時に迷ったらコレだけは付けておけ! ガチで使える「オプション装備」5選
新車購入時に迷ったらコレだけは付けておけ! ガチで使える「オプション装備」5選
WEB CARTOP
【フォーミュラE】モナコ4位のベルニュ、もし自分がチームメイトの前だったら……「ジャガー勢に好き放題させなかったのに」
【フォーミュラE】モナコ4位のベルニュ、もし自分がチームメイトの前だったら……「ジャガー勢に好き放題させなかったのに」
motorsport.com 日本版
四角いクルマによく似合う!無骨なデザインがカッコいい「大容量ルーフキャリア」に荷物はどれくらい積める?
四角いクルマによく似合う!無骨なデザインがカッコいい「大容量ルーフキャリア」に荷物はどれくらい積める?
VAGUE
15年ぶりに全面刷新! トヨタ新型「ランクル250」発売、520万円から!  従来プラドから何が変わった?
15年ぶりに全面刷新! トヨタ新型「ランクル250」発売、520万円から! 従来プラドから何が変わった?
くるまのニュース
日産 キックス 新型のスタイルは「堅牢」と「軽やかさ」を両立
日産 キックス 新型のスタイルは「堅牢」と「軽やかさ」を両立
レスポンス
北京モーターショーでホンダ中国のBEVブランド「e:Nシリーズ」第2弾となる「e:NP2」「e:NS2」を発表
北京モーターショーでホンダ中国のBEVブランド「e:Nシリーズ」第2弾となる「e:NP2」「e:NS2」を発表
Webモーターマガジン
世界3大映画祭制覇! いま世界で最も注目される映画監督・濱口竜介の最新作『悪は存在しない』
世界3大映画祭制覇! いま世界で最も注目される映画監督・濱口竜介の最新作『悪は存在しない』
バイクのニュース
スーパーGTのタイム合算予選方式が第1戦を踏まえ一部改定。基準タイムやグリッドの扱いが変更に
スーパーGTのタイム合算予選方式が第1戦を踏まえ一部改定。基準タイムやグリッドの扱いが変更に
AUTOSPORT web
三菱『RVR』次期型はEVで登場か!? 15年ぶりフルモデルチェンジはこうなる!
三菱『RVR』次期型はEVで登場か!? 15年ぶりフルモデルチェンジはこうなる!
レスポンス
【北京モーターショー2024】トヨタ 中国向け最新EV『bZ3C』と『bZ3X』を公開
【北京モーターショー2024】トヨタ 中国向け最新EV『bZ3C』と『bZ3X』を公開
Auto Prove
【MotoGP】マルティン、スペインGPスプリント勝利は棚ぼただった? マルケス転倒までは「2位を守ろうとしてた」
【MotoGP】マルティン、スペインGPスプリント勝利は棚ぼただった? マルケス転倒までは「2位を守ろうとしてた」
motorsport.com 日本版
「高速降りずに泊まれる」のサイコー! 温泉&プール備わる豪華ホテルどこにある? 「ハイウェイホテル」と違う施設とは
「高速降りずに泊まれる」のサイコー! 温泉&プール備わる豪華ホテルどこにある? 「ハイウェイホテル」と違う施設とは
くるまのニュース
34GT-Rが7700万円!? 日本のネオクラシックが海外へと流出する恐怖の「25年ルール」とは
34GT-Rが7700万円!? 日本のネオクラシックが海外へと流出する恐怖の「25年ルール」とは
ベストカーWeb
マセラティのBEVシリーズ第3弾はカテゴリー最速のオープンモデル! 「稲妻」の名が与えられたグランカブリオ・フォルゴレ誕生
マセラティのBEVシリーズ第3弾はカテゴリー最速のオープンモデル! 「稲妻」の名が与えられたグランカブリオ・フォルゴレ誕生
THE EV TIMES
[弁護士に聞いてみた] 他人のナンバープレートをSNSにアップしたら、法律上問題があるのか?
[弁護士に聞いてみた] 他人のナンバープレートをSNSにアップしたら、法律上問題があるのか?
WEBヤングマシン
考えナシのオーバーテイクが横行している! バニャイヤ、MotoGPスプリントレースで多発する接触に喝
考えナシのオーバーテイクが横行している! バニャイヤ、MotoGPスプリントレースで多発する接触に喝
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

15件
  • ライフから乗り替えしました。
    あの安さで広い室内。使い勝手が良くてバンバン乗り回しました。

    NAでもスコーンと抜けるサウンドが心地良かったんですが、反面、記事中にもある通り3ATでは快適とはいかなかったですね。

    総合的には気に入っていて、買い替えの時にザッツほどコスパの良い車が無くて困りました。
  • コンテみたいで角ツルりんこしてて良かったと思うデザイン<(_ _*)>つるん。。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村