今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「クライスラー ボイジャー」だ。
クライスラー ボイジャー(2001年)
1983年のデビュー以来、世界中で900万台以上販売されたミニバンのカテゴリー クリエーターが、クライスラー ボイジャーだ。アメリカではダッジ ブランドのキャラバンとして販売されているが、ヨーロッパやアジアではクライスラー ブランドのボイジャーとなる。日本では3代目にあたる従来型が1997年から導入されて7000台以上が販売されたが、昨年(編集部註・2000年)に本国で発表された新型がいよいよ日本に導入された。ちなみに日本仕様はオーストリアで生産されている。
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新型ボイジャーは、まず顔つきが大きく変わった。従来型はダッジ ブランドのグリルに小さめのヘッドライトで、ちょっと「ワル」っぽい顔はけっこうインパクトがあった。新型はクライスラー ブランドのグリルにヘッドライトも大きく、優しく洗練されたフロントマスクになったが、そのぶん少し個性が薄れたようにも思える。スタイルはミニバンの定番的なそれだが、空力を重視してか前後左右ともウインドーは寝かせ気味なのが少し気になった。
インパネまわりの質感はかなり向上した。右ハンドル化の違和感はだいぶ減ったが、それでもまだペダルの位置が近い割りにステアリングが遠い。テレスコピックが備われば文句ないのだが。シートの座り心地はヨーロッパ車的で、けっこう良い。乗車定員は2-2-3の7人乗りだが、サードシートは高さ、フットスペースとも不足気味で、おとなが3人で乗るのは少しつらいだろう。
おとな2人乗車での試乗では、エンジンは静かで滑らか、しかも1.9トン近い車重をものともせずに走り、パワー不足を感じない。3.3LのV6エンジンは6500rpmのレッドゾーンまでスムーズに回り、OHVとはいえ必要十分なトルクとパワーを得ている。エンジンはスペックだけでは語れないことを証明している。またエンジンノイズだけでなくロードノイズや風切り音も抑えられ、高速走行中でも運転手とサードシートのパッセンジャーが普通に会話できるのも評価したい。
乗り味は総じてヨーロッパ車的だ。ステアリングはけっこう保舵力を必要とするタイプで、かつてのアメリカ車のようなやたらと軽いものではない。ブレーキの効きも良かった。今回、ショートホイールベースのLXとロングホイールベース(150mm長い)のグランドボイジャー リミテッドの両方に乗ったが、初期ロットの個体差もあるかもしれないがLXの方がしっかりした乗り味で印象は良かった。
ビッグサイズゆえの取り回しが気になるところだが、今回の試乗では市街地はほとんど走らなかったので何ともいえない。アイポイントは高いので視野は広いが、太くて寝ているAピラーが少々気になった。
本革シートに電動スライドドアを装備したLXプレミアム(390万円)や、さらにロングホイールベースにパワーリアゲートも備えたグランドボイジャー リミテッド(422万円)の装備は魅力だが、ベーシックなLXでも安っぽさはないし十分だろう。アメリカンなライフスタイルに憧れているファミリーには、オススメできる1台だ。
■クライスラー ボイジャーLX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4830×1995×1755mm
●ホイールベース:2880mm
●車両重量:1890kg
●エンジン形式:V6・OHV・横置きFF
●排気量:3301cc
●最高出力:128kW(174ps)/5100rpm
●最大トルク:278Nm(28.3kgm)/4000rpm
●トランスミッション:電子制御4速AT(コラムシフト)
●タイヤ:215/65R16
●車両価格(当時):356万円
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