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海外ライターF1コラム:F1と中国の20年にわたるラブストーリー。政略結婚から真実の愛が生まれた2024年

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海外ライターF1コラム:F1と中国の20年にわたるラブストーリー。政略結婚から真実の愛が生まれた2024年

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、5年ぶりの中国GP復活に焦点を当てた。

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海外ライターF1コラム:24戦の理不尽なカレンダーが招く問題。人材不足が深刻化、“根無し草感”で疲弊するドライバー

 4年間のブランクを経て、F1が中国に戻ってきた。新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため、2020年から2023年まで上海インターナショナル・サーキットではグランプリが開催されなかったが、2024年、ようやくF1は15億人近い人口を抱える中国での開催を果たすことができた。中国初のF1フルタイムドライバー、周冠宇が初めて母国の観客の前で走る今年のグランプリに対して、中国の人々は大きな関心を寄せた。中国ではテクノロジーと自動車に強い関心を持つ中産階級が急増、彼らがF1ファンになったことで、今年の中国GPのチケットは早くに完売した。

 F1が中国で成功を収めるのに20年かかった。2004年に上海インターナショナル・サーキットで初めてグランプリが開催された時には、中国とF1の結びつきは、“政略結婚”のように見えた。F1に参戦する自動車メーカーとスポンサーは、潜在的な巨大市場への参入を望んでいた。一方、中国では上海と北京が常に激しく争っており、上海は、2008年北京オリンピックに対抗できるイベントを必要としていた。

 市政府からの大きな支援のもと、上海インターナショナル・サーキットは、わずか18カ月で建設された。7000人の建設作業員が24時間体制で働き、巨大な施設を支えるために海綿状の地盤に長さ40~80メートルのコンクリートの杭を40000本打ち込んだ。パドックは巨大な湖に浮かぶ小さな島々に設置され、各チームのオフィスやホスピタリティ用の建物が建てられた島が小さな橋でつながれた。

 非常に美しい施設ができあがったが、レースは成功しなかった。中国とF1は、単純にお互いを理解していなかったのだ。中国にはモータースポーツの伝統がなく、応援する中国のチームも存在せず、中国人F1ドライバーが登場する可能性は長年見えてこなかった。F1関係者は中国の官僚主義に不満を抱いた。ビザの取得には長い時間がかかり、税関とのやり取りもスムーズにはいかなかったのだ。

 見た目に活気を与えるために客席がカラフルに彩られ、独創的なカメラアングルが使用されたにもかかわらず、巨大なスタンドに空席が多いことは、世界中のテレビ視聴者にすぐに伝わった。2004年当時、メディア陣にとっても中国は新しいテリトリーであり、思わぬ経験をすることになった。たとえばカメラマンは、機材用のロッカーを使用する際に、「鶏やその他家畜をボックスに入れない」と約束しなければならなかった……。

 2005年の中国GPでは、満員のスタンドがテレビ映像に映し出された。しかし実際に会場を埋めたのはF1ファンではなく、数百台のバスでサーキットに連れてこられた地元の学童や近くの兵舎の兵士たちだった。それでも多くの観客席が空いていたために、そこには巨大な看板が飾られた。このころの中国とF1は、利便的な結婚をしたにすぎず、どちらも相手を愛してはいないことは、恥ずかしいほどに明らかだった。

 新ミレニアムの初めに、F1はインド、韓国、トルコといった、重要なマーケットになり得る国々でレースを開催することを試みた。この3つの国では、当時、中国と同様に大きな関心が寄せられず、その上、長期的に継続するための上層部の強い意志や資金力がなかった。

 しかし中国には、開催への強い意志と資金力はあった。さらに新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こるまでの数年間に中産階級が急増。5年ぶりの中国GPでは、彼らが観客席を埋めた。最初に売り出された10万枚のチケットは、わずか45分足らずで売り切れたといわれる。

 最初は政略結婚だった中国とF1だが、その後、お互いを受け入れ始めた。そして中国人F1ドライバー周冠宇が誕生したことで、互いの関係がついに真の愛情に基づくものへと変わったのだ。

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