■自動車史に残る「和製スーパーカー」
ホンダ、そして日本の誇るスーパーカーといえば、「NSX」です。
かつて1989年にプロトタイプが初公開された際、その先鋭的なデザインとカッコよさに多くの人が衝撃を受けました。
世界のスーパーカーの作り方にまで影響を与えた歴史的な一台であるNSXとは、一体どのようなモデルだったのでしょうか。
【画像】「えっ…!」これがホンダ最高峰の「NSX」です!(30枚)
ホンダは1980年代のはじめから、同社が主流としてきたFFレイアウト(フロントエンジン・フロントドライブ)とは異なる、エンジンをクルマの中央部に配置したMR(アンダーフロアー・ミッドシップエンジン・リアドライブ)の開発に取り組んでいました。
本研究自体は惜しくも途中で中止されてしまいますが、この際の技術が社内で高く評価され、その後再びコンパクトスポーツカー「CR-X」をベースに研究が継続。
1980年代半ばに「この駆動方式を用いたスポーツカーの開発ができないか」という案が浮上し、開発がスタートしたのが初代NSXでした。
開発プロジェクトのテーマは「快適F1」。既存のスポーツカーを超え、最高峰の自動車レースであるF1の領域に限りなく近い高性能を持ち、なおかつ快適性まで備えた新時代のスポーツカー、という高い目標を目指し開発が進められたのです。
そんな新時代のスポーツカーNSXは、その開発において様々な新しいチャレンジが行われました。
NSXの大きな特徴のひとつが、オールアルミ製のモノコックボディです。
当初は一般的なクルマ同様に鋼板を用いた製造も検討されていましたが、高い走行性能を引き出すためには車重を軽くする必要があり、またトラクション・コントロールなど各装備を充実させるためにも軽量化は必要不可欠。
そのため検討が進められ、オールアルミ製のボディを採用することが決定しました。
しかし、当時はオールアルミを実現した量産車は世界に存在せず、アルミのモノコックボディを製造する専用の工場から作る必要があるなど、課題だらけ。
最終的に専用工場を栃木に建設したほか、材料メーカーの奮闘もあり、5種類のアルミ合金材を用いたボディが完成します。
こうして作り上げたアルミ製ボディは鋼板製より200kgも軽くなり、当初想定した通りの車体の軽量化を達成しました。
またボディの軽さのみならず、NSXは「走る」「曲がる」「止まる」といった走りに必要な3つの要素を、可能な限り高めることにも挑戦します。
駆動方式には、先述のように1980年代はじめから研究を重ねていたMRを採用。パワーとハンドリング性能のバランスにとことんこだわり、既存のスポーツカーに無かった高次元のハンドリングドライバビリティを実現しました。
■果たして後継モデルは作られるのか?
このようにして当時の革新的な技術を詰め込み誕生したNSXは、1989年に試作車が作られ商品化に向けた開発も最終局面に。
鈴鹿サーキットやニュルブルクリンクでテスト走行を繰り返しブラッシュアップが行われ、また鈴鹿サーキットで走行した際はF1マシンのテストで来日していた故「アイルトン・セナ」が試作車のハンドルを握ったのも有名な話です。
1989年2月には、米国のシカゴ・オートショーに開発コード「NS-X」として実車が登場し、真っ赤なボディカラーの新時代のスポーツカーは多くの人の注目を集めました。
同年6月からは、アメリカやヨーロッパでの試乗会が行なわれ、国内のみならず海外のモータージャーナリストからも称賛を得ます。
そうして発売前にもかかわらず国内外で高い評価を得たNSXは、1990年9月13日に市販モデルの正式発表会が行われ、翌14日に発売がスタート。
こうして量産車としては世界初となるオールアルミモノコックボディのスポーツカーが自動車市場にデビューしたのです。
NSXの当初のグレード展開は、5速MTと4速ATの2つのみ。どちらも3.0リッターのV型6気筒エンジンを横置きで搭載しており、MT車は最高出力280馬力、AT車は265馬力となっていました。
またMT車の価格は800万3000円で、AT車は860万3000円となり、これは当時は国産車としての史上最高価格でもあります。
1992年11月には、走行性能をより高く磨き上げた「タイプR」が追加。
約120kgの軽量化やクランクシャフトの回転バランス精度の向上など、走りの質感と速さを追究したモデルへと仕上げられ、価格も970万円とさらに高額でした。
1997年のマイナーチェンジでは、MT車のエンジンにおいて排気量を3.2リッターに拡大したC32B型が採用され、さらにトランスミッションも6速へと変更。くわえて「タイプS」や「タイプS-Zero」といったスポーツグレードの追加も行われます。
その後も2005年に生産を終了するまで、マイナーチェンジを繰り返しながらNSXは進化を続けます。
例えば2001年のマイナーチェンジでは、ヘッドライトが開閉するリトラクタブル式から固定式になるなど外観を大きく変更。
2002年には空力性能を高めた「NSX-R」が登場し、2005年にはNSX-Rの特別仕様車「NSX-R GT」が5台限定で発売されました。
そうして歴史を重ねつつも2006年に生産終了となったNSXは、しばらくの間は後継車となるモデルが存在しませんでいたが、2016年についに2代目NSXが登場。
この2代目は、初代と同じくミッドシップレイアウトを採用し、パワーユニットには3.5リッターのV型6気筒エンジンとハイブリッドシステムの組み合わせ、最大581馬力の高出力を生み出しました。
また同車のプライスは、再び当時の日本車での最高価格となる2370万円とされました。
2代目のモデルライフは短く、2022年をもって生産を終了しますが、国内外で高く評価された最終モデルの「タイプS」は世界限定350台ということもあり瞬時に完売。
日本への割り当て台数は30台と限られていたため、現在では倍以上の値段で中古車が取引されるプレミアカーとなっています。
※ ※ ※
ホンダらしい新時代のスポーツカーを目指して開発されたNSXは、日本だけでなく海外からも高く評価される伝説のクルマと言えるでしょう。
先述のように2代目も生産終了していることから、次世代モデルの登場が期待されていますが、果たして後継モデルは作られるのか、要注目です。
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