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シートベルトは乗員を守る命綱! 「メルセデス・ベンツ」は1950年代から乗員の安全を追究

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シートベルトは乗員を守る命綱! 「メルセデス・ベンツ」は1950年代から乗員の安全を追究

世界一の安全性を求めて最も重視した安全装備

 クルマの事故が起きた際、乗員の安全を如何に守るか。セーフティファーストであり、乗員を守る命綱「シートベルト」が大切なのは周知の通りです。その歴史を遡ると、1951年にメルセデス・ベンツ(写真内MB)は、「衝撃吸収式前後構造」と「頑丈なパッセンジャーセル構造」の特許を取得。特に乗員の身体をしっかりとシートに固定し、室内の他の箇所に乗員がぶつからなくする「シートベルト」が、最も重視する安全装備のひとつと考えました。

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 そこで、事故時の乗員保護能力をさらに高めるメルセデス・ベンツ独自のシートベルトの革新技術を説明しましょう。

ショルダーベルトの重要性

 1957年、すでにメルセデス・ベンツは「ラップタイプの2点式シートベルト」をオプション設定していました。これは航空機のものを応用した腰だけで支える構造で、事故の際、乗員が車外へ投げ出されるのを防ぐことが目的。この為、事故の衝撃の反動で頭部や胸部をステアリングやダッシュボードに打ちつける危険性がありました。

 しかし、1959年に始まった本格的な衝突実験の結果より、特にドライバーは上体が前方にのめらないようにすること、すなわち肩を拘束する「ショルダーベルト」が非常に重要な機能を発揮することを発見。ドライバーの頭部や胸部をステアリングやダッシュボードに打ちつけるのを防ぎ、その衝撃を軽減する事でした。 そして、1968年にメルセデス・ベンツはこの事実を踏まえ、ラップタイプの2点式シートベルトを改良。ショルダーベルトを加えた「3点式シートベルト」をオプション設定したのです。

3点式シートベルトへの工夫

 そして1979年、メルセデス・ベンツは全モデルの全席に「3点式シートベルト」を標準装備化。この3点式シートベルトはその後も独自に研究開発を進めるうちに、新たに深刻な問題点が浮かび上がってきます。

 それは激しい衝突事故で3点式シートベルトをしていても、ドライバーは頭部や胸部をステアリングやダッシュボードに打ちつけてしまうというもの。ドライバーは一度後ろに引きつけられ、次の瞬間その反動で再び前方に投げ出されていたのです。これは、ベルト・ストラップの「緩み」が原因。この問題に対して、メルセデス・ベンツのエンジニア達が出した答えは明快でした。

 それは一種の「引っ張り装置」を使い、前面衝突時にシートベルトを巻き上げ、乗員を後ろに引きつけたままの状態にするというもの。1981年に、メルセデス・ベンツはわずか数千分の1秒のうちに最大18cmのベルト・ストラップを巻き上げる「シートベルト・テンショナー」の開発に成功。テンショナーのカートリッジ内部には、小さなロケットが装着されており、電子センサーが前方から衝撃を感知すると、点火装置が作動。小さなロケットが発射すると、その力でベルトを巻き上げるというシステムです。

 1981年に、メルセデス・ベンツはこの「シートベルト・テンショナー付3点式シートベルト」を運転席と助手席の「SRSエアバッグ」と共に、世界で初めて2代目Sクラス(W126)にオプション設定。作動システムは、SRSエアバッグのコントロールユニットで制御されていました。

ベルトフォースリミッター付きの誕生

 1995年に、メルセデス・ベンツは新たなシステムを取り入れた「ベルトフォースリミッター」を初めて2代目のEクラス(W210)の運転席・助手席に採用。ベルトフォースリミッターは、衝突時の衝撃で乗員の身体が前方に移動して、乗員の荷重がシートベルトにかかると、一定量のベルトを緩めて乗員の胸部にかかるベルトの力を低減し、乗員の肩や胸部が強く圧迫されるのを軽減するという構造です。

 衝突時にベルトを瞬時に巻き上げ、乗員をシートに引き寄せる「シートベルト・テンショナー」と、乗員を引き寄せた後にベルトを瞬時にゆるめ、乗員への拘束力を軽減するのが「ベルトフォースリミッター」。この2つの機能を合わせたものを呼称として、「ベルトフォースリミッター付シートベルト・テンショナー」と呼んでいます(前席・後席左右)。

 しかも、シートベルトのバックル(受け側)はシートにしっかりと固定されており、シート位置を調節してもそのポイントは、ずれることなく乗員に対して安全なシートベルトポジションを与えており、このバックルによってもシートベルトの安全性の効果が高められているのです。

着用しやすいシートベルトの追求

 メルセデス・ベンツはシートベルトを着用し易くすることも極めて重要であると考えています。すでに、1971年に公開された「安全実験車・ESF 05」では、乗員が車室に座り込むと自動的にシートベルトが手の届きやすいところに降りてくる「Seatbelt Reach Device(シートベルト・リーチ・デバイス)」が試されました。

 量産車ではSクラス(W126)のクーペからは、前席の乗員のそばにシートベルトが来るアームが採用されました。

 また、1973年には引き出したベルトを「自動的に巻き戻すシステム」を全車に標準装備(前席)。1979年にはショルダーベルトアンカー部の「高さを調節できるシステム」をSクラス/W126の前席に採用しました。乗員の体型の大小にかかわらず、この高さ調節によって、最適で安全なシートベルト位置にセットすることができたのです。

 さらにオープンボディのSLクラス(R107)は、1971年にショルダーベルトのアンカーポイントを「シートフレーム」に組み込んだ構造を、そして1989年にシートベルトを一体化した「エレクトリック・インテグラルシート」を採用。センターピラーのないCLクラス(C216)にも同様の「エレクトリック・インテグラルシート」を装備したのです。

 そして、SLクラス(R230)やCLクラス(C216)では、この「インテグラルシート」の呼称を「メモリー付きインテグラルシート」に変更。つまり、シート位置などをメモリーできるシステムと一体化させたのです。ちなみに、インテグラルシートの意味は「シートベルト内蔵のシート」のことです。

 また、センターピラーのない4シーターのEクラスクーペやカブリオレ(C207)では、前席のシートベルトを着用しやすくするため、ショルダーベルトを自動的に送り出す「シートベルト・フィーダー」を標準装備化。フィーダーは機械用語で、供給装置・送り装置のことで、名の通り着用のしやすさを向上させたわけです。

さらなる安全性の向上へ

 例えば、先代のEクラス(W212)は、運転席・助手席に装備された「リバーシブルベルトテンショナー」の働きで、シートベルトの装着後、自動的に最適な位置まで巻き上げる機能を追加。シートベルトの「たるみ」を防ぎ、万一の事故の際にベルトの機能が最大限に発揮するように調整し、安全性をより一層向上させています。

 さらに、Sクラス(W221)やEクラス(W212)には「後席乗員」の体型に合わせて、ベルトフォースリミッターの作動を2段階に調整。「アダプティブベルト・フォースリミッター」を後席に追加装備しました。利点は衝突の際、乗員の体型に応じて適切な力でベルトを保持し、シートベルトの働きをより効果的なものにしたのです。

ベルトとの併用で初めて活きるエアバッグ

 シートベルトは、乗員保護補助装置である「SRSエアバッグ」とも深い関係があります。事故の際、乗員を守る絶対的な安全装置ではなく、「命綱であるシートベルト装着」を条件にその効果を発揮するのです。仕組みは、まずシートベルトの装着によって、乗員を衝撃から移動しないように拘束し、エアバッグは、シートベルトで締めた乗員を衝撃から保護するのが役割。つまり、シートベルトとエアバッグの両装置が一体となった働きにより、衝突時の乗員の安全性を最大限に高めるようになっているのです。

 事故調査を重ねていくうちに、シートベルトの「乗員保護性能」を助ける為のさらなる安全装置として、1967年に「SRSエアバッグ」の開発をスタート。エアバッグの歴史も意外に古く、実験と検証に続けた結果、13年後の1980年にメルセデス・ベンツは「世界初のSRSエアバッグ」をSクラス(W126)に採用しました。

 このように、エアバッグとの関係が非常に重要であることは理解できるでしょう。シートベルトの進化、特に「シートベルト・テンショナー」の開発によって、万一の衝突時に乗員が受けるダメージを大幅に軽減することが可能となったのです。

 進化ぶりが見えにくいシートベルトですが、メルセデス・ベンツをはじめとした自動車メーカーは、乗員保護性能を高める為に、あらゆる角度からシートベルトによる高い安全性を追求しているのです。

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みんなのコメント

3件
  • なんかメルセデスがシートベルトの全てを開発したような記事だけど、3点式を含め安全装備のジャンルの草分けはボルボだからね。
    くれぐれもお忘れなく。
  • 会社に居るDQ◯上がりがバカみたいに武勇伝として言ってたけど、メルセデスのクルマはマジでキャビンだけ潰れにくいそうだ。

    地震が起こした1◯0km/hでの自損事故でフロント・リアが原型留めてなかったのに、キャビンだけはキッチリ形を留めて居たんだとか。

    やはりアウトバーン走る車は頑丈に作られてるんだろうね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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