以前は、多くのAT車に備わっていた「O/D OFF(オーバードライブ オフ)」スイッチ。だが、近年の新型車には搭載されておらず、「便利だったのにな…」と寂しく思っている人も少なくないのではないだろうか。令和の若者は知らない(と思われる)O/D OFFスイッチの機能と使い道を振り返りつつ、現代のクルマに備わるO/D OFFスイッチの「後任」機能をご紹介しよう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、HONDA、Adobe Stock
令和の若者は知らない…?? 「オーバードライブ」ボタンの機能と使い道
ATでありながら必要に応じてドライバーがシフトダウンを選択できた
O/D OFFスイッチは、ボタンを押す(オフにする)ことで、長い下り坂などで軽くエンジンブレーキをかけたいときや、高速道路などでブレーキペダルを踏まずに減速をしたいとき、または、高速道路の上り坂で追い越しのために加速をしたいときなどに使うスイッチだ。
「オーバードライブ」とは、変速比が1.000より小さい変速比のこと。エンジン回転とトランスミッションの出力軸の回転比が等しい状態が「変速比1.000」で、そのギアのことを「トップギア」、もしくは「直結ギア」とよぶが、このトップギアよりも変速比を下げたギア、つまりエンジンの回転数よりもトランスミッションの出力軸のほうが多く回るギアのことを「オーバードライブ(オーバートップ)ギア」という。
オーバードライブギアは、高速巡航でのエンジン回転数を下げることが目的で設定されていたもので、たとえば4速ATでO/D OFFスイッチを押すことで、オーバードライブギアをオフにする(使わない)ことになり、これによって4速オーバードライブギアから3速トップギアへシフトダウンさせ、アクセルオフで緩めの減速、アクセルオンで強めに加速をすることができた。
日産GT-Rの6速DCTは、1速4.056、2速2.301、3速1.595、4速1.248、5速1.001、6速0.796となっている。減速比1.000の5速がトップギア、6速がオーバートップギアだ
シフトチェンジによる減速は、他のかたちに置き換わっている
必要なタイミングでドライバー自身がシフトダウンをできることで、AT車の利便性に、MTのよさを付加してくれていたO/D OFFスイッチ。冒頭で触れたように、昨今の新型車には「O/D OFF」という名では搭載されていないものの、かたちや名前を変えて、同じような機能が備わっている。
たとえば、コンパクトカーの主流である無段階変速のCVTでは、B(「ブレーキ」のB)やS(「スポーツ」のS、)という呼び名で、ギア比を調整する機構が付いている。他にも、(現在は減っているが)一時期は、シフトレバーを横に倒して、マニュアル操作に切り替える「Mシフト」も流行っていたし、近年はステアリングホイールの後ろにある「パドルシフト」でシフトチェンジをするクルマも増えている。ドライバーが意図的にギア比を変更して減速をしたり、強めの加速に備えるという意味では、「O/D OFF」スイッチと目的は同じだ。
ホンダ初代「CR-V」の4速ATコラムシフト。コラムシフトの先端にO/D OFFスイッチが付いていた
ドライバーが減速度を調節すること自体が減っている
ただ昨今は、自動で車速を維持したり、前走車との車間を保持してくれる機能が多くの新型車に備わるようになってきていることで、ドライバー自らがギアを選んで減速度をコントロールすること自体が減ってきている。
シフトノブを握り、指先でポチポチと操作ができて便利だったO/D OFFスイッチ。「オーバードライブ(オフ)スイッチ」という名前も、響きがよくてかっこよかった。現在では、軽の商用バンなど、ごく一部に残る4速AT車でしか見ることはできない。O/D OFFスイッチは、技術進化によって、その役割をほかの機能へと譲り渡したのだ。
ホンダ「ヴェゼル」の現行モデルの減速セレクター。ドライバーが減速度をコントロールするためのスイッチという役割は、O/D OFFスイッチと同じ
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そりゃ知らんわなw