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【ヒットの法則384】メルセデス・ベンツC63AMGは何より走って楽しいが快適性も抜群に高い

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【ヒットの法則384】メルセデス・ベンツC63AMGは何より走って楽しいが快適性も抜群に高い

2007年の注目モデルはなんといっても3代目W204型Cクラスだった。3月のジュネーブオートサロンでフルモデルチェンジを果たすと、秋にはステーションワゴン、そしてハイパフォーマンスモデル「C63AMG」がデビューした。まさに「Cクラス」の1年だったが、ここでは2007年秋、ドイツ・マインツで行われたC63AMGの国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

過去のどのCクラスAMGと較べても迫力で上回る
2007年の日本におけるドイツ車の動向で、最も注目を集めたことのひとつに新型Cクラスの導入があるが、このニュースにはまだ続きがある。言うまでもなくCクラスはメルセデス・ベンツの中核車種。よって現在導入中のセダンをベースに開発された様々なバリエーションが登場するはずなのだ。

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間近と思われるのは、先のフランクフルトショーでデビューを飾ったC63AMGと、ステーションワゴンのCクラス ステーションワゴンの2車。いずれも現在開催中の東京モーターショーにも現車が展示されているが、この中からC63AMGをひと足先にドイツで試乗することができたので報告したい。

ちなみに、C63AMGはセダンと、ステーションワゴンが同時発表されたが、今回試乗に用意されていたのはセダンのみ。ワゴンは展示車は用意されていたものの試乗は叶わなかった。標準モデルもショーデビュー直後のため、AMG版は現在鋭意熟成中というわけなのだろう。

さて、会場となったマインツのホテルの裏庭に勢揃いしたC63AMGに対面してまず印象的だったのが、歴代のCクラスAMGの中でも最も派手に感じたエクステリアだ。

ベースとなったのがより精悍な面持ちのアバンギャルド、つまりスリーポインテッドスターをグリル内に刻み込んだあの顔だからということもあるのだろうが、吊り目がちのヘッドライトとF1のノーズコーンを連想させるアンダースポイラーの組み合わせは、190Eから4世代に渡る過去のどのCクラスのAMGと較べても迫力で上回る。

ボディサイズは全長4726mm×全幅1795mm×全高1439mm。日本に導入済みのC300アバンギャルドと微妙な違いがあるのは、海外の計測/表記の違いもあるが、約100mm長い全長は前後バンパーのデザイン変更に伴うものと考えて良い。

注目すべきは全幅で、これは明らかに25mmの拡幅が図られている。C63AMGはフロントアクスルを新開発しており、これに伴ってフロントのトレッドが+35mm拡幅されているのだ。当然、これを覆うフェンダーもワイド化が図られており、あの迫力ある面持ちに拍車をかけているという次第。ちなみにリアのトレッドも+12mmの拡大が図られ、キャンバーを増すことでコーナリングパフォーマンスを高めている。

ただし、C63AMGのサスペンションシステムには、標準モデルにあるアジリティコントロールのような電子デバイス物は使われていない。100%の剛性アップを果たした新開発のフロントアクスルと、前記した新しいジオメトリー、そしてより堅固なセッティングとなったスプリングとダンパーで向上したパフォーマンスに対処しているのだ。AMGにアジリティは言わずもがな、というわけなのだろう。

このほか、足まわり系でAMG独自のポイントは、ギアレシオが13.5:1(標準モデルは14.5:1)、ロック・トゥ・ロックで2.5回転ほどに速められた速度感応式のAMGステアリングシステム。日本導入済みのC300アバンギャルドSも同じギア比を持つが、C63AMGではコラム系の強化と相まってさらにダイレクトなステアフィールを実現しているという。

さらに、向上したパワーに合わせてブレーキもフロント:360mm+6ピストン、リア:330mm+4ピストンのベンチレーテッドディスクに強化されている。肝心カナメのエンジンは、すでに多くのAMGモデルが順次搭載して来ている大排気量/高回転をコンセプトとするM156E63。ビッグボア/ショートストロークのこの6.2L V8は搭載車によって微妙に出力を変えて来るのが常で、C63に関しては457ps、600Nmというスペックが与えられることとなった。

457psはCLKの481psよりさらに低められたシリーズの中では最も「大人しい」チューンということになるが、パワーウエイトレシオは3.78kg/psとM3をも上回る。これを物足りないと思う人はまずいないだろう。そんなスペックを反芻しつつ、やや緊張気味にコクピットに納まる。しかしそこは、あの見慣れたCクラスのキャビンそのものだった。

子細に観察すれば、フロアコンソールやドアトリムにはアルミパネルが用いられ、より精悍な雰囲気に仕上げられているし、イグニッションオンでマルチインフォメーションの中央にAMGの文字が浮き上がるスピードメーターは320km/hスケール、タコメーターも7200rpmから上がレッドゾーンとされ、高性能の片鱗が伺える。

けれどもその表現はあくまでも控えめだ。唯一、標準モデルと大きく異なるのがシート。ヘッドレストにAMGのロゴの入った深いバケット形状のフロントシートは、まるでドライバーを包み込むかのようなフィット感。それでいて必要以上なタイトさは感じさせず、当然ながら腕の動きにも干渉などは一切ない。さらに、3本スポークのステアリングは底面がフラットになった小径タイプ。握りの太さはかなりのものだが、左右スポーク周辺のホームポジションは抉りが入っており、指の収まりは良好だった。

電子式のキーをステアリングコラムに挿してエンジンを始動する。Cクラスは一部でプッシュ式スタートの採用も始まっているが、今回試乗したAMGは既存のシステムのままだった。

始動直後は野太い排気音が湧き上がるが、アイドリング時は極めて静か。このあたりはさすがCクラスのトップモデル。昨今の高性能車はコンフォート面も決して蔑ろにはできないのだ。

Dレンジに入れてアクセルを踏むと、これまでに試した他の63AMG同様、極めて軽快な走り出しを見せた。いや、僕がこれまでに経験した6.2LはMLとCLKだが、その2車よりも確実にクルマが軽い感じといった方が正解だろう。重量級のMLはともかくとして、その軽快さに感動したCLKよりもさらに軽やな味わいが実現されていることに少し驚いた。

ただし、それは怒濤のトルクがクルマを無理やり押し出しているような感覚とは違う。排気量が大きいため、もちろん下から十分にトルクフルだが、回転の上昇とともに自然に力が湧き上がって来るリニアな出力特性のため、瞬発力よりも伸びの良さを楽しむ、といった趣なのだ。これは大排気量/高回転をコンセプトに作られたM156E63型に共通する味だが、中でもC63AMGの軽やかさは群を抜いている。

原因を考えながら走ったが、どうやらそれはエンジンの出力特性だけに起因するのではなく、このクルマが類いまれなる快適性を併せ持っていることが関係しているようだ。何かと言えば乗り心地が抜群に良いのである。

路面の荒れているアウトバーンで舗装が剥離したようなギャップを通過しても、C63AMGは視線がブレるような過剰な硬さとはまったく無縁。4輪がキレイに路面を舐めるしなやかさがある。タイヤは18インチのピレリPゼロと、19インチのヨコハマアドバンスポーツの2種があったが、19インチのアドバンの方が、ギャップを通過した後の収まりが良く、好印象だったことも付け加えておく。

シャシやエンジン、制御機能も走る楽しさを最優先に開発
それにしても先に登場したBMWのM3も、その乗り心地の良さに感心したが、直接のライバルとなるC63AMGもまた、乗り心地をこれほどのレベルに高めているのには驚いた。やはり快適性はこのジャンルでも非常に重要になって来ているのだ。

アウトバーンからカントリーロードに下りて、今度はワインディングを楽しむ。C63AMGには当然AMGスピードシフトと7Gトロニックが備わっており、C/S/Mの順でシフトモードの切り替えが可能。Cに対してSモードでは、パドルシフトの反応が30%、Mでは50%シャープになるというロジックが組み込まれているが、これにC63AMGでは新たにエンジンのブリッピング機能が加わっている。シフトダウン時に空吹かしをして回転を合わせるのだ。

その動作はさほど派手ではない、ブンという排気音と共にタコメーターの針がピクンと上がる程度だが、これによりコーナーのアプローチで予想外に強いエンジンブレーキにつんのめることがなく、スムーズな進入が可能だ。

さらに、3ステージESPの採用も大きなニュース。これはセンターコンソールのESPスイッチを押してモードを切り替えることでESPの介入を切り替えるシステムだ。キーとなるのはESPスポーツモード。アンダー/オーバーのブレーキ介入制御を遅らせ、エンジントルクを絞る機能も通常のオン状態より穏やかになる。さらにESPオフモードでは一連の制御が行われなくなるが、これはサーキット走行などで使うことが推奨されている。

今回は一般公道での試乗だったため、試すのはスポーツモードまでに留めたが、あり余るパワーのためアクセルを踏み過ぎると即座にESPが作動してトルクを絞る通常モードに対し、スポーツモードではアクセルにより姿勢を変える領域まで持って行ける。

と、このようにエンジン、シャシから様々な制御機能に至るまで、すべてにおいて走る楽しみを優先して作られたというのが、今回C63AMGに乗って得た僕の素直な感想だ。乗り心地の良質化などコンフォート面に一層の配慮を行いながら、同時にエンターテイメント性も高めるのが、これからのAMGの目指す方向性なのだろう。

こうした道筋の核となっているのは、Cクラスのシャシの持つ潜在能力に他ならない。フロントサスペンションを専用新開発としているとは言え、このコンパクトなボディに457ps、600NmのV8エンジンを積み、ノーズの重さを感じることのない素直なハンドリングを実現しているのが何よりの証拠。先代のC55AMGでは、路面状況によってクルマが跳ねるような挙動も見受けられたが、新しいシャシを得たC63AMGはそんな粗さとはまったく無縁の存在なのである。

生産は2008年早々に立ち上がり、日本にも間を置かず導入されると思われるC63AMG。排気量が大きい分、パフォーマンスでライバルをリードし、走りの楽しみも濃密となったこのクルマは、数あるAMGモデルの中でも特に魅力的な一台となりそうだ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年12月号より)



メルセデス・ベンツ C63 AMG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4726×1795×1439mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1730kg(EU)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:457ps/6800rpm
●最大トルク:600Nm/5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速MT
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速:4.5秒
※欧州仕様

[ アルバム : メルセデス・ベンツ C63 AMG はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • 伝統的な大排気量、大出力のAMGエンジンはこれが最後かも。

    買うなら良質なタマが残っている今しかないかも。
  • こういう車にはロマンがあるよね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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