この記事をまとめると
■トラックドライバーの基本的な仕事は運転して荷物を運ぶこと
トラックドライバーの悲鳴と本音! 乗用車に「やめて欲しい行為」4つ
■しかしトラックドライバーの多くが貨物の積載や荷降ろしも行なっている
■この「荷役」と呼ばれる作業がドライバーの大きな負担になっている
トラックドライバーの長時間労働の原因に
トラックドライバーの仕事は、その名のとおりトラックを運転して荷物を運ぶこと。だが、多くの現場では、ドライバーの多くがその運転、輸送だけでなく積み荷の積載や荷降ろしといった作業も行なっている。この作業を「荷役」(トラッカーの間では「にえき」と呼ぶ)というが、これがドライバーたちの大きな負担となっている。
ウイング車または箱車と呼ばれる箱型の荷台を持つトラックの荷役は、パレットと呼ばれる台に積み上げられた荷物をフォークリフトで荷台に運び込む「パレット積み」という方法と、フォークリフトで荷台の入り口まで持ち上げられた荷物を手作業で積み込む「バラ積み」という方法がある。
パレット積みのほうがスピーディに、かつ手間もかからず積み込むことができるが、現状ではすべて手積み、もしくはパレット積みとバラ積みの併用で荷役が行なわれている現場が多い。これは、パレット積みだけでは荷室のなかに隙間が生じるから。荷主にとってはその隙間を生じさせず、より多くの積み荷を運ばせたい。そのため、ドライバーにバラ積みでの積み下ろしを行なわせるわけだ。
このバラ積みのなかには、30kgの米を400個以上、食品を4000箱以上、青果をダンボールで1000箱といった過酷な荷役を課せられている現場もある。当然、その荷役作業は長い時間を要することになり、国交省の統計では、その平均時間は荷待ち(現場に到着してから荷役作業が始まるまでの待ち時間。こちらについてはまた稿を改めてリポートしたい)が1時間34分、荷役が1時間29分と合わせて3時間が占められている。
しかし、実際にはさらにそれ以上の時間がかかることも多く、ドライバー自身で市場にある積み荷を探しに行かねければならないし、荷物が積み込み場所に届かずそれを待たなければならないなど、余計な手間と時間がかかり、積み込み開始から出発までに5~6時間かかってしまうというケースもある。
付帯作業を無償で行わせる業者も
この荷物の積み下ろしや荷の状態を確認する検品作業については、自分の仕事と割り切っているドライバーは多い。なかには手積み手降ろしの「バラ積み」こそトラック乗りの達成感であり、やり甲斐だと豪語するストイックなドライバーもいる。
しかし、彼らに仕事を発注する荷主のなかには、荷物の仕分けやラベル貼り、倉庫内の荷物の入れ替えや棚卸し、商品陳列など、本来荷主側で行なわなければいけない「付帯作業」まで指示する業者もいる。しかもこの作業は、多くのドライバーが無償でやらされているという。これが長時間・低賃金のトラック業界の構図となり、若いドライバーが入ってこない、育たないという人手不足の現状も生み出している。
2024年4月には働き方改革関連法の物流・運輸業界での本格適用が行なわれ、ドライバーの時間外労働が制限される。その一環として国土交通・経済産業・農林水産の3省は、今年5月に「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者が取り組むべき事項」の原案を提示。
このなかで「荷主事業者は、荷待ち、荷役作業等にかかる時間を原則として約2時間以内とする」ことを自発的なルールにして、順守を求めていくことを打ち出したほか、トラック予約受付システムの導入、パレットの活用、物流システムや資機材の標準化といった推奨事項も盛り込んでいる。また、物流事業者に対し、運送契約にない荷役作業などをさせないといったルールも提示されている。
これに先立ち、2019年6月には国土交通省によりトラックドライバーの荷役作業・附帯業務の記録義務付けが開始された。対象車両は車両総重量が8トン以上または最大積載量が5トン以上のトラック。契約書に実施した荷役作業のすべてが明記されている場合は、所要時間が1時間未満なら荷役作業についての記録は不要となっている。
このように車両運送だけでなく荷役などトラッカーの仕事をルール化することで、安全面、労務面でのコンプライアンス確保や、取引環境の適正化を促進していくという。
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