最近いわゆる“あおり運転”に関する記事が目に付くようになった。しかし、車間距離に関しては、“あおる意識”の有無にかかわらず、日常的な問題だ。たとえば、都内の街中や首都高を走っていると、土日は慣れていないドライバーが多く離けすぎで、平日の朝夕などは詰めすぎといった印象がある。
はたして車間距離に適正値はあるのか。さらに、“あおり運転”における車間距離の詰めすぎ(狭めすぎ)については、法律上で定められているのなら、どのような違反規定や罰則があるのか? 意外に無頓着になっている車間距離について、改めて探ってみた。
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文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部 Adobe Stock
追突事故のリスクを高める「車間距離不保持」
平日、都内を走っていると車間距離が詰めすぎじゃないかと思うほど、ピタッと後ろについてくるクルマが多い
まず、平成30(2018)年中の交通事故件数を事故類型別に見ていきたい。なんと、追突事故の構成比が最も高く全体の34.7%を占めている(警察庁「平成30年中の交通事故の発生状況」)。
こうした前方を走行中または停止中の車両に後方からぶつかる追突事故の要因のひとつとして考えられるのが「車間距離の不保持」ということになる。
道路交通法の第26条では、「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない」と定めている。
平成21(2009)年10月から、道路交通法の一部改正により、高速道路等での“車間距離保持義務違反”の法定刑が「5万円以下の罰金」から「3カ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」に引き上げられ、違反点数と罰則金も引き上げられた。
基礎点数は2点、普通車の場合は反則金9000円となり、それ以外の一般道など基礎点数が1点、反則金は同6000円(2019年5月現在)となる。
警察に適正な車間距離を訊いてみた
まずは警察関係に車間距離について、いくつか質問をぶつけてみることにした。概要は以下のとおり。
1/実際の路上で、車両速度域に応じた適正な車間距離はどのようなものか?
2/路上で走行中に車間距離を確認する方法で推奨される方法はあるのか?
3/いわゆる“あおり運転”について、取り締まりのうえでポイントとなる行為(車間距離や運転方法など)はどのようなものか?
2については、一般道では照明灯や電信柱、標識など、高速道路では距離標識(キロポスト)や確認する車間距離確認表示板はもちろん、路面のジョイント、センターライン(中央線)の白点線の数など、適当な目標物を決めて前方車両が目標物を越えてからの秒数を数えるといった方法がある。
高速道路の車線境界線は、8mの白線と12mの空白区間の計20mで構成されている。白線と空白区間が5セットで100mなので、白線を目安にすることで前の車との車間距離を測ることができる
高速道路には車線境界線のほかに適正な車間距離を測る手助けとなるツールとして、車間距離確認表示板が設置されている。表示板の間隔は、制限速度が時速80kmのところでは40m毎、時速100kmのところでは50m毎で、原則各IC間に1カ所ずつ設置されている
なかには車間距離の確認方法としてよく耳にする「車間距離は“2秒”が適正」という「2秒ルール」なるものがあるが、これらをどう捉えているのか訊いてみた。
編集部註: 2秒ルールとは?/例えば、前を走るクルマが「電柱」を通過したとして、その通過の瞬間を「0」とします。そして、自分のクルマが同じ「電柱」を通過するまでに「2秒以上」数えることができれば車間距離が2秒以上あることになります。 これが2秒ルールです。
3では、いわゆる“あおり運転”の取り締まりに関して、何らかの規定が存在するのか訊ねてみた。
まずは警視庁に問い合わせてみると、
「2秒ルール」については、担当者に電話口で「それって、いわゆる“都市伝説”的なものですか?」と逆に訊かれたのには思わず苦笑してしまったが、「車間距離の詳細については、まずは警察庁に問い合わせてみてください」と返答された。
ということで警察庁に訊いてみると、「雨天など走行状況がさまざまあるので、概論としては答えられない」とのこと。
あわせて、“あおり運転”については「警視庁と各道府県警察本部に向けて通達を出しているので参照されたい」とコメントされた。
出典/警察庁
警察庁の平成30(2018)年1月に発表された“あおり運転”に関する通達によれば、「悪質・危険な運転が関係する事案を認知した場合には、客観的な証拠資料の収集等を積極的に行い、道路交通法のみならず、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底を期すこと。
また、悪質・危険な運転を未然に防止するため、車間距離不保持、進路変更禁止違反、急ブレーキ禁止違反等の道路交通法違反について、積極的な交通指導取締りを推進すること」とある。
具体的な「悪質・危険な運転」と「違反の種別」については別表を参考にしてもらいたいが、この通達の道路交通法を含む法律の厳しい運用を求める文言を見れば、警察の取り締まりの件数が増えたこともうなずける。
出典/警察庁
0102「ゼロ、イチ、ゼロ、ニ」の「2秒ルール」とは?
日本交通心理学会が行った車間距離測定実験によると、プロドライバーが走行した車間距離を時間に換算して「車間時間」を算出したところ、安全を感じ始める距離が約1.5秒、近すぎるとも遠すぎるとも感じない走りやすい距離が1.8秒という結果だった
では、いわゆる「2秒ルール」を推奨している各道府県の警察(本部の交通課)はないのかと調べていたら、埼玉県警が「ゆとり運転0102運動」を推進していることがわかった。
同県警の車間距離に関する推奨運動そのものの歴史は長く、平成19(2007)年から「安全車間距離0102運動」、現在は「ゆとり車間距離0102運動」として、いわゆる「2秒ルール」を推奨している。
なお、大分県警や佐賀県警などでは「3秒ルール」が採用されているとのこと。これは教習所などでも使われており、中身については「2秒ルール」との差はほとんどなさそうだ。
このような「車間距離」の代わりに、走行中の前方車両がある地点を通過して後に自車がその地点を通過するまでの時間である「車間時間」については、“2秒”や“3秒”などと規準が分かれている。
欧米では高速道路などでの車間距離保持の目安として「3秒ルール」が用いられることもあるが、日本交通心理学会のデータ分析に基づいて推奨されているのが「2秒ルール」だ。
日本交通心理学会が行った車間距離測定実験によると、プロドライバーが走行した車間距離を時間に換算して「車間時間」を算出したところ、安全を感じ始める距離が約1.5秒、近すぎるとも遠すぎるとも感じない走りやすい距離が1.8秒という結果となった。
なお、統計的に車間時間2秒以内での事故は死亡事故等の重大な事故が多くなっているとしている。
このような実験結果と統計的事実から、前のクルマがある地点を通過してから2秒経た後に自分のクルマがそこを通過すれば、十分な車間時間をあけて走行していることになる。
(出典:一般財団法人全日本交通安全協会発行 セイフティ エクスプレス 平成20年6月号 千葉工業大学名誉教授山下昇著「車間距離より車間時間をとろう」)
一般的な感覚として、時間をカウントする時には短く数えてしまう傾向にあり、車間距離も短くなってしまうという。
そこで「0102」は「ゼロ」を「イチ」「ニ」の前に入れ込むことで「ゼロ、イチ、ゼロ、ニ」とゆっくり確認するようにして、2秒以上になるよう“カウント時間”を補正することになる。
データに基づいた成り立ちを説明すると、40/50/60km/hでの「車間距離」を「車間時間」に置き換えると、おおまかな間隔はそれぞれ約1.8秒(2秒間で車両が進む距離は40/50/60km/hに対して、それぞれ22/28/33m)となり、1.5秒だと危険に感じるとされている。
対して「車間時間が4秒以上」になると、割り込みに遭う可能性が高くなってしまい、元も子もなくなるから、話は微妙になってくる。
資料のデータを追うと、運転していて走りやすい車間距離は、50km/hでの車間距離は25mとのこと。この際の危険を感じて実際にブレーキをかけ始める前に進む距離である「空走距離」は14m、ブレーキをかけ始めてから停止するまでの「制動距離」は18mになる。60km/hでは28m(空走距離/制動距離:17m/27m)、80km/hでは43m(同:22m/54m)とのことだ
付け加えておくと、統計的に「車間時間」が2秒以内での事故は死亡事故を含む重大事故が多く、2秒以上離れていた際には大きな事故に至っていないという。これが「車間時間は2秒」というルールにつながっているようだ。
いっぽうで、“あおり運転”を含む「車間距離不保持」に関する実際の取り締まりは、そう単純にはいかない。
安全とされる具体的な車間距離は走行状況によって変化するから、法律の上で“車間距離不保持違反”を取り締まるうえでの“規定値”は存在しないからだ。
埼玉県警にあおり運転の取り締まりの対象となる具体例について訊くと「あくまでケース・バイ・ケースであり、状況による」が、「被害者からの被害連絡があれば対応できる」ということになる。
ルールとマナーを守ることは一体ともいえるが、自戒を込めていえば、車間距離に対する感覚はベテランドライバーほど余計な“慣れ”によって鈍くなってくるので、「2秒ルール」もあくまで目安でしかないことを忘れていけない。
ともかく車間距離については、たとえ腕に自信のあったとしても、クルマという重量物を走らせるうえでは、何人も“物理の法則”は超えられないことを、改めて心に留めておきたい。
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