ホンダのドル箱5ナンバーサイズミニバン、フリードが2024年夏にもいよいよフルモデルチェンジを受ける。果たして新型フリードは期待できるのかどうか、元ホンダ社員であり先代N-BOXに乗る小沢コージが語る!
文/小沢コージ、写真/ベストカー編集部、ホンダ
次期型もバカ売れ必至? 今やホンダ唯一の希望の星「新型フリード」への元ホンダ社員の期待&心配とは?
■日産&スズキのライバル不在でバカ売れ必至のコンパクトミニバン
モデル末期の現在でも堅調な販売を続けている現行型2代目フリード。いよいよフルモデルチェンジの時が近づいてきたが……
ここ1~2年話題沸騰! 出る前から成功が約束され、逆に失敗したら「ホンダさん、マジでヤバいっしょ?」と言われかねないのが2024年夏に出るはずの新型3代目ホンダフリードだ。
現行フリードが8年目でフルモデルチェンジ間近なのはもちろん、この全長4mチョイの5ナンバー3列コンパクトミニバンはホンダとトヨタしか作れておらず、日産やスズキらのライバルも不在。
それでいて難敵のシエンタは国内販売ベスト3常連の鉄板状態で、当の現行フリードですらモデル末期の今も販売ベスト10に入る人気っぷり。このジャンルにはほかにない利便性があり、普通に作れば当たり前に月販1万台はいく可能性を持っている。
そもそもここまで引っ張ったのも2023年も平気で月6000~8000台売れていたから。本来とっくにモデルチェンジしていいはずの長すぎるロングセラーなのである。
フリードを除くと、現在のホンダの売れ筋モデルはステップワゴンとフィット、軽のN-BOXとなる
というか今のホンダの国内売れ筋はご存じ軽のN-BOXとコンパクトのフィット、ミニバンのステップワゴンとフリードの4車種しかない。それどころか現行世代ではステップワゴンはもちろん王者フィットまで低迷中。
万が一、ここでフリードが失敗したらホンダはマジでヤバい。正真正銘の「N-BOX一本打法」となってしまうだろう。それこそ一部クルマ好きが本気で危惧する最悪のパターンだったりする。
そこで今回、小沢が新型フリードに期待する点であり、「ここ絶対ハズしちゃダメ」なポイントをご教授しよう。
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■第一のキモは全長4265mmを死守できるか?
現行型フリードの全長は4265mm。果たしてホンダ開発陣は次期型でここに手を付けてくるのか?
最大のキモはボディサイズだ。全幅1695mmの5ナンバーサイズはもちろん、全高1.7m前後もイジってはいけない。しかし、ここは普通に守れるので一番のキモは4265mmの全長。ここが最も判断が難しい部分で、当然ここを伸ばせば「狭い」と言われる3列目を広くできるし、いいことづくめ。
事実、2列シートのフリード+は30mm伸ばして全長4295mm(4WD車は4265mm)だし、アニキ分のステップワゴンは4800mmもあり、ノア/ヴォクシー標準ですら4695mmとまだ先はある。新型フリードは「4.3m(4300mm)超えでもいいっしょ?」と思いがち。
だが、あの最大の難敵、3代目シエンタは2年前のフルモデルチェンジで全長にビタ一文も手をつけなかった。2代目の4260mmを頑なに守り、それも「現行フリードより3列目のヒザ前空間は狭いのに」手を付けなかった。
フリードの競合モデルである現行型トヨタシエンタは先代モデルからの全長4260mmを死守してフルモデルチェンジ
小沢は開発の鈴木啓友エンジニアに「2~3cmくらい伸ばしてもよかったのでは?」と何度も聞いた。しかし、彼は「変えるつもりはまったくありませんでした」と言い切った。「視界、取り回し、小回り、小さなクルマだからこその価値。そういうものが一番大切ですから」というのだ。
これは重い。実際問題、国内3列シートミニバンはかつてホンダストリームやトヨタウィッシュなどハンパなものは消え去っているのだ。
■ライバルのシエンタにない武器を死守せよ!
ベストカー編集部製作の新型フリード予想CG。新型もフリードならでの武器でシエンタにたいこうしてくるだろう
同時に大切なのはフリードならではの武器。具体的には人気のキャプテンシートが現行シエンタでは未採用なフリード最大の武器だし、3列目シートの跳ね上げ収納による低いラゲッジ床も同様。
また、上質なウッド調パネルやホンダ自慢の上質合皮、プライムスムーズも贅沢に使いたい。現行シエンタも内装はよくなったが、まだまだチープ。「インテリア質感のフリード」の看板は絶対守るべきだ。
現行型フィットが搭載している2モーターハイブリッドの1.5Le:HEVを新型フリードも搭載予定だ
当然ながらホンダ自慢でフリード未搭載の2モーターハイブリッド、1.5Lのe:HEVはフィットより進化させたい。直4エンジンの静粛性を磨きつつ、フィットの123ps&253Nmを超えるモーターパワーとWLTC燃費もリッター25kmくらいは行きたい。
トヨタ流1.5LTHSIIのシエンタによるリッター28km台には敵わないまでも、滑らかさと静粛性と低燃費のバランスで一矢報いたい。
■エクステリアデザインに一抹の不安が……
新型フリードクロスターの予想CG。フィットやステップワゴンでのエクステリアの失敗をどう開発陣は考えるか?
かたや小沢が危惧しているのはエクステリアデザインだ。可愛い「たれぱんだ路線」に行っちゃったフィットはもちろん、ホンダ理想主義というか「下品なイバり顔はイヤ」とクリーン&シンプル路線に突き進んだステップワゴン。あの失敗をフリード開発陣はどう考えているのだろうか?
現行N-BOXも標準ボディはいいけど、やはりシンプルすぎてインパクトが薄いN-BOXカスタムは若干心配。コイツは総合力が高すぎてすぐさま販売低下には結び付かないだろうが、これはホンダの客の顔を見ない、ヤリ過ぎな開発者理想主義の発露という気がする。
現行型N-BOX。標準仕様はもとより、先代よりもシンプルな印象のエクステリアデザインになったカスタム
小沢は万が一の新型フリードの独善的シンプル&クリーン路線導入によるデザイン的失敗を危惧する。もちろん、コンパクトミニバンはシエンタを見ればわかるが“ワル顔トレンド”じゃないので、失敗しようにもできないかもしれない。
さらにあれば怖いスズキや日産による競合コンパクトミニバンも存在しない。やはり新型フリードは失敗しようにも失敗できない、成功が約束されたモデルなのかも?
だったらいいのだが……とはいえ最近のホンダは開発者の思い込みが強すぎるデザインや商品戦略がやっぱり気になる。杞憂だったらいいが、マジでヤリ過ぎると文字通りのN-BOX一本打法になっちゃいますよ~ってね。
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みんなのコメント
ホンダ:フリード、ヴェゼル、フィット、ステップワゴン
日産:ノート、セレナ
スズキ:ソリオ
ヴェゼルやフィットの場合は、ノート/セレナ/ソリオと違ってグローバルモデルだから国内販売がすべてではないし。