現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 「SAV」の本領発揮! BMW渾身のX5&X6 M コンペティションの凄まじいパフォーマンスを測る :前編

ここから本文です

「SAV」の本領発揮! BMW渾身のX5&X6 M コンペティションの凄まじいパフォーマンスを測る :前編

掲載 更新 2
「SAV」の本領発揮! BMW渾身のX5&X6 M コンペティションの凄まじいパフォーマンスを測る :前編

BMW X5 M Competiotion × BMW X6 M Competiotion

BMW X5 M コンペティション × X6 M コンペティション

「SAV」の本領発揮! BMW渾身のX5&X6 M コンペティションの凄まじいパフォーマンスを測る :前編

サーキット走行をもこなすスーパーSUV

SUVというジャンルを高級グランドツアラーとして再定義し、トレンドにまで開花させたパイオニア、BMW X5。その最高峰モデルとなる「M」モデルをさらにハイパフォーマンス化した「Competition」は、人間の果てない欲望を、そのまま形にしたかのような一台だった。

そもそもこのジャンルの始祖であるX5は、バランスのよいSUVだ。正直日本ではもてあますサイズであり、代替わりごとに微妙なサイズアップが図られているものの、それゆえに堂々たる風格と実用性が得られ、これがオーナーたちの購買意欲につながっているのは事実だろう。

かつこうしたサイズを持ちながらも、FRをベースとした4WD(xDrive)と、BMW仕込みのハンドリングによって、X5はそのすんぐりとしたボディからは想像もつかないほどピュアな走りを披露する。こうしたX5の素性を基に、BMWがいま持ちうる素材と技術をこれでもか! と詰め込んだのが、X5 M、そしてそのクーペ版となるX6 MのCompetitionである(以下X5 MC/X6 MC)。

最高出力625psを発揮する4.4リッターV8ツインターボを搭載

さてこの2台はボディ形状が違うだけで、基本的にそのコンポーネントには同じものが使われている。キャラクターの要となるエンジンは、M5を始めとした上級モデルに搭載される4.4リッターV型8気筒ツインターボ。その最高出力はMモデルに対して25psのアドバンテージを得た625ps/6000rpmとなっており、750Nmの最大トルク(Mモデルと同数値)をわずか1800rpmという低い回転域から発揮させ、これを5860rpmまで持続する。

その速さを示す一例としては、0-100m加速が3.8秒。リミッターを解除した際の最高速は、この巨大なボディにして290km/hをマークするという。そしてBMW自体はこの2台を、「サーキット走行を想定したSUV」と位置づけている。

これを支える足まわりは、フロントがダブルウィッシュボーンでリヤが5リンク式。ここに専用の可変ダンパーと強化スプリングを与え、やはりMモデル専用となるMxDriveで4輪を駆動させる。

角がなく万能感のあるX5 MCの走行フィール

最初にステアリングを握ったのはX5 MCだ。このSUVが何と言っても素晴らしいのは、重心高の高いオーソドックススタイルなボディを持ちながらも、呆れるほどのパワーをシャシー下へと見事に封じ込めているところだ。

もちろん走り出した瞬間から、その湧き上がるトルクには圧倒される。しかしサスペンションはこれを危なげなく受け止めた上で、角のない乗り味へと昇華してしまうのである。フロント21インチ、リヤ22インチのミシュラン PS4Sがショルダーブロックの硬さを伝えて来ない限りは、思わずエアサスか? と疑ってしまうほど、そのテイストは上質だ。

常用域を常に最大トルクで走る万能感。そこに応答遅れのない、しかもしなやかな足まわりが組み合わさると、自分が変わってしまいそうな気持ちになって、ちょっと怖くなる。

Mボタンの切り替えでさらなる領域へとシフト

そしてステアリング上の赤いMボタンを押すと、X5 MCとのさらに濃密な時間が始まる。にわかオーナーである筆者は左側のM1でエンジン/シャシー/ステアリング/ブレーキ/MxDriveの5項目を全て「スポーツ」とし、右側のM2は「Sport+」に統一(MxDriveは4WD SPORT)。まずはM1ボタンを二度押し確定させてその走りを味わったが、それはただでさえ万能感のあるX5 MCの走りを、さらにスポーティな領域へと押し上げた。

S63ユニットは、現代的なマナーを備えた上で、踏めばマニアの期待に応えるユニットだ。バーバリアンというよりは、アスリート。4000rpmあたりまでの所作は、まるで自然吸気のストレート6か? と思えるほどシルキーで、これが高回転領域に入り出すと、その本性をさらけ出してくる。野太いサウンドと共に吸気の鼓動と排気の脈動が盛り上がり、V8エンジンのキャラクターが鮮明になる。

それまでレブリミット手間でオートシフトしていたトランスミッションが、マニュアルモードだとレッドゾーンまで針を食い込ませ、これをきっちり回しきるのも見事だった。オープンロードでは極めて低いギヤでしかそれを確認できないうえに、すぐさまシフトアップを強いられる忙しさだったが、それでもこの大排気量エンジンに秘められた性能の一端を確認することができた。ここまでエンジンを使い切る走りなど、日常ではまずない。しかしこうした領域のツメを怠らないからこそBMWは、今日のステイタスを築いたのである。BMWはストレート6がアイデンティティであるというイメージを未だに筆者も持っているけれど、このV8エンジンはパワー、質感共にそれを上回る、大型SUVに相応しいユニットである。

極上のFRに乗っているかのようなトラクションのかけ方に惚れ惚れする

当日は雨が降りしきるワインディングまで走らせたが、X5 MCの盤石ぶりには舌を巻いた。モードを上げることで可変ダンパーは伸び側の減衰力を引き上げ、その姿勢変化を抑えに掛かる。ブレーキ制御の変化は体感できなかったが、足まわりとの協調度合いは完璧のひとこと。V8ユニットが作り出したスピードをきっちり殺した上で、その制動Gを美しい旋回姿勢へと変換してくれる。

剛で受け止めるのではなく、柔で受け流すような身のこなしには、かつてのE46 M3に乗っているような懐かしさを覚えた。その高い重心を余裕あるストロークで補ったことが結果的に、古き良きBMWセダンの自然なロール感を想起させたのだと思う。

X5 MCがこれだけ自然にシャシーをセットできるのは、FRベースの4WD「MxDrive」のおかげである。ターンインからターンアウトまで、前後の駆動をケンカさせることなくつなぐ制御の素晴らしさ。コーナー出口からアクセルを踏み込んでもスナップオーバーの雰囲気など微塵もなく、かといって前輪がグイグイと引っ張って行く強引な4WD感もない。あくまで極上のFRに乗っているかのようなトラクションのかけ方には、本当に惚れ惚れする。

BMWが目指す本来のハンドリングを実現するために、MxDriveは最高の武器

セダンであるM5が遂にこのシステムを採用したように、もはや600馬力オーバーの高出力を安全に受け止めるには4WDが最適解である。M2/M2コンペティションの足まわりの硬さを考えても──あれはあれでそのヤンチャっぷりが楽しいのだが──BMWが目指す本来のハンドリングを実現するために、MxDriveは最高の武器となるのだ。だからこそ、まだFRも踏襲されるとアナウンスされた新型M3/M4がどうなるのかは興味深い。ちなみにX5 Mでは、その駆動をFRに限定するモードはない。

試乗においてはM2ボタンも試したが、オープンロードにその領域はないと思えた。やたらに乗り心地が硬くなる、というような無粋な変化はしないけれど、さらに足まわりは伸び側制御が規制され、真っ平らな道でもない限り(つまりサーキットだろう)乗り心地は上下動が激しくなる。そしてエンジンは、アウトプットに鋭さを増し、そのギクシャク感を増長させる。

一般道のアンジュレーションや路面状況を考えればサスペンションは「SPORT」で十分。言い方を変えればそれ以外を「SPORT+」として楽しむ。ポルシェが持つスクランブルモードのように、瞬時に得られる戦闘モードを備えるのは、高級車のギミックとして素直に楽しいと感じた。その上でM1/M2ふたつの選択肢が作れるのは、確かに便利である。

前のめりなアグレッシブさがM6 MCにはある

となればより全高がX5 MC比で75mmも低くなるX6 MCは、よりスウィートな走りが得られるのか? と思いきや、そのキャラクターは全く正反対の味付けであった。端的に言えば、足まわりがやや硬い。海外試乗レポートを読むほどの硬さではないものの、ラグジュアリーさではX5 MCに文句なく軍配があがる。

使っている素材はX5 MCと同じというから、それだけ重心の低さが効いているということなのか。車重も僅かに30kgしか軽くなってはいないから、スプリングの負担が大きく減るということはないだろう。となると可変ダンパーのイニシャル減衰力が、X5 MCよりも若干高められているのかもしれない。

断然シャープな身のこなしはX5 MCとは好対照

それは確かに、スポーツクーペの走りだった。身のこなしは断然シャープなものとなり、フロントタイヤのグリップでノーズをねじ込んでいく、攻めの感覚が大きくなる。その安定感をしてS63ユニットの実力を余すところなく使い切りたくなる衝動。だからこそ“Competition”のMモードには、「ROAD」「SPORT」に加え「TRACK」モードが用意されるのだろう。

X5 MCではさして必要とは思わなかった変速スピードの調整機構や、アクティブMディファレンシャルの効き具合、そういったものを確かめたくなる前のめりなアグレッシブさがM6 MCにはある。幾分その調整機構の多さには頭が混乱する感も否めないが、それだけ長くつきあえる一台であることは間違いない。

後編ではこうした部分にもう少し触れながら、X5 MCとX6 MCの違いをより明らかにしていこう。

(後編に続く)

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO/森山良雄(Yoshio MORIYAMA)

【SPECIFICATIONS】

BMW X5 M コンペティション

ボディサイズ:全長4955 全幅2015 全高1770mm

ホイールベース:2970mm

車両重量:2400kg

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:4394cc

ボア×ストローク:89.0×88.3mm

最高出力:460kW(625ps)/6000rpm

最大トルク:750Nm/1800-5860rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:4WD

サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

タイヤサイズ:前295/35ZR21 後 315/30ZR22

車両本体価格(税込):1859万円

BMW X6 M コンペティション

ボディサイズ:全長4955 全幅2020 全高1695mm

ホイールベース:2970mm

車両重量:2370kg

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:4394cc

ボア×ストローク:89.0×88.3mm

最高出力:460kW(625ps)/6000rpm

最大トルク:750Nm/1800-5860rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:4WD

サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

タイヤサイズ:295/35ZR21 後 315/30ZR22

車両本体価格(税込):1899万円

【問い合わせ】

BMW カスタマー・インタラクション・センター

TEL 0120-269-437

関連タグ

こんな記事も読まれています

GTWCアジア:ANR with VSRがジャパンカップ開幕戦のSUGOにスポット参戦へ
GTWCアジア:ANR with VSRがジャパンカップ開幕戦のSUGOにスポット参戦へ
AUTOSPORT web
ええ、カワイイのにターボだけ!? アルトCってただのミラジーノ対抗じゃない感がスゴい!!!!!!!
ええ、カワイイのにターボだけ!? アルトCってただのミラジーノ対抗じゃない感がスゴい!!!!!!!
ベストカーWeb
「ジャパンモビリティショー2024」開催決定 新しい事業つくるビジネスイベントに
「ジャパンモビリティショー2024」開催決定 新しい事業つくるビジネスイベントに
グーネット
アウディ A4/A5シリーズに“傑作”うたう2つの特別仕様車 インテリアの質感アップ
アウディ A4/A5シリーズに“傑作”うたう2つの特別仕様車 インテリアの質感アップ
グーネット
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」2
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」2
グーネット
小さいことに価値があるGLAのベストバイがコレ!【メルセデス・ベンツ GLA】
小さいことに価値があるGLAのベストバイがコレ!【メルセデス・ベンツ GLA】
グーネット
昭和世代じゃなきゃ理解不可能!? マツダがこだわる[ロータリーエンジン]って何がそんなにスゴい?
昭和世代じゃなきゃ理解不可能!? マツダがこだわる[ロータリーエンジン]って何がそんなにスゴい?
ベストカーWeb
新型[コスモスポーツ]復活!! 特許庁に出願されたから市販化秒読み!? しかもリトラクタブルも続行
新型[コスモスポーツ]復活!! 特許庁に出願されたから市販化秒読み!? しかもリトラクタブルも続行
ベストカーWeb
彼女のマツダ「RX-7」は175台限定の「タイプRZ」でした! ドレスデザイナーがFD3Sを選んだ理由と愛車に巡り合ったストーリーとは
彼女のマツダ「RX-7」は175台限定の「タイプRZ」でした! ドレスデザイナーがFD3Sを選んだ理由と愛車に巡り合ったストーリーとは
Auto Messe Web
鉄人リードのル・マン連続出場途切れる。ドライバー変更のプロトン、マスタング3台目のカラーリングを公開
鉄人リードのル・マン連続出場途切れる。ドライバー変更のプロトン、マスタング3台目のカラーリングを公開
AUTOSPORT web
中国GP以降伸び悩むセルジオ・ペレス。契約更新の保留が大きなプレッシャーに
中国GP以降伸び悩むセルジオ・ペレス。契約更新の保留が大きなプレッシャーに
AUTOSPORT web
ハイブリッドでクラシックな「アメリカン」 ジープ・グランドチェロキー 4xeへ試乗 悪路性能は圧巻
ハイブリッドでクラシックな「アメリカン」 ジープ・グランドチェロキー 4xeへ試乗 悪路性能は圧巻
AUTOCAR JAPAN
人はなぜ「◯◯界のロールス・ロイス」を目指すのか? 最高であり文化の香り漂うのは「ベル・エポック」という豊かな時代に誕生したから!?
人はなぜ「◯◯界のロールス・ロイス」を目指すのか? 最高であり文化の香り漂うのは「ベル・エポック」という豊かな時代に誕生したから!?
Auto Messe Web
フォード・マスタング躍進。チャズ・モスタート&キャメロン・ウォーターズが今季初勝利/RSC第4戦
フォード・マスタング躍進。チャズ・モスタート&キャメロン・ウォーターズが今季初勝利/RSC第4戦
AUTOSPORT web
2024スーパーGT第3戦鈴鹿のGT300クラス公式予選Q1組分けが発表
2024スーパーGT第3戦鈴鹿のGT300クラス公式予選Q1組分けが発表
AUTOSPORT web
ふたつの心臓を持つ猛牛!ウルスにプラグインHVが登場【ランボルギーニ ウルスSE】
ふたつの心臓を持つ猛牛!ウルスにプラグインHVが登場【ランボルギーニ ウルスSE】
グーネット
5速MTのみ! オープントップの新型「スポーツモデル」発表! レトロデザインに「タテ型マフラー」採用した「小さな高級車」に反響あり
5速MTのみ! オープントップの新型「スポーツモデル」発表! レトロデザインに「タテ型マフラー」採用した「小さな高級車」に反響あり
くるまのニュース
フォード・マスタング 史上初「4ドア仕様」導入か 派生モデル展開を示唆、しかしEV化は否定
フォード・マスタング 史上初「4ドア仕様」導入か 派生モデル展開を示唆、しかしEV化は否定
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

2件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1972.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

320.01458.0万円

中古車を検索
X5Mの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1972.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

320.01458.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村