この記事をまとめると
■全日本ラリー第7戦「ラリー北海道」が2023年9月8日(金)~10日(日)まで開催
「レーサー」は天才! 「ラリースト」は神! レーシングドライバーが語る「ドッチが速い」論争の結論とは
■WRC18勝を誇るラトバラが圧倒的な速さで優勝
■あるSSではランクル・プラドに負けるという現象が起こった
ラトバラ+GRヤリスの最強コンビを苦しめたマディなSS
全日本ラリー選手権の第7戦として9月8日~10日、北海道帯広市を拠点に開催された「ラリー北海道」では既報のとおり、トヨタGAZOOレーシングWRTのチーム代表、ヤリ-マティ・ラトバラが駆る「GRヤリスJP4-Rally2」が圧勝。後続に1kmあたり1秒以上の差をつけて勝利を飾ったのだが、じつはすべてのSSでベストタイムを刻んだわけではない。
なんと10日のレグ2のSS10「SSS IKEDA 1」でラトバラは5番手タイムに失速。このWRCで18勝を挙げている世界のトップランナーを抑えて同ステージでベストタイムをマークしたのが、トヨタ・ランドクルーザー・プラドを駆る川畑真人だった。
ご存じのとおり、川畑はドリフトで活躍してきたドライバーで、近年はクロスカントリーラリーでも活躍。今大会でもプラドでXC-2クラスに参戦していたのだが、前述のとおり、SS10でラトバラを抑えてSSウインを獲得した。
まさに世界が驚くサプライズとなったが、この“珍事”を生み出したのが、ステージ特性とコンディションにほかならない。
まず、「SSS IKEDA」はその名のとおり、ギャラリー観戦のために設けられたスーパーSSで、野球場にパイロンやタイヤを使ってコースを設定。SS距離はわずか500mで、アップダウンもなく、ブラインドコーナーもないことから、目視走行が可能で、ペースノート走行に不慣れなドライバーでも攻略が容易な特性となっていることが、川畑に有利に働いていた。
加えてコンディションの変化も川畑に味方した。前日の夕方から降り続いた雨の影響により、「SSS IKEDA」の路面コンディションはヘビーウエットとなり、マディなコンディション。部分的には“田んぼ”のような泥濘ができており、競技前にトヨタ・ヤリスWRCでデモ走行を行ったユハ・カンクネンも「サファリのような路面」と評していた。
スタート直前にコースをチェックしたラトバラも「グリップしないし、トラクションもかからないと思うから丁寧に走らないといけないね」と苦笑い。その言葉を実践するように、パーシャルなアクセルワークでリズミカルな走りを披露し、ベストタイムをマークしていたのだが、ラトバラに不運だったのは、この日の天候だった。
後半になればなるほど路面コンディションが好転!
10日のレグ2は好天に恵まれ、暑い日差しが路面を乾かした。当然、出走順が遅くなるほど、路面コンディションはドライ方向へ変化し、ついに、ダストが上がるようになったころに、ラトバラのタイムを更新するドライバーが現れるようになっていった。
最初にラトバラのタイムを破ったのが、スズキ・スイフトを武器にJN4クラスに参戦していた鈴木正人で、最終的に4番手タイムをマークした。次にブレークスルーを果たしたのが、トヨタ・ヤリスでJN5クラスに参戦していた本名修也で2番手タイムをマーク。そして、3番目に“ラトバラ超え”を果たしたのが、川畑であり、そのタイムでSSウインを獲得したのである。トヨタ・ハイラックスでXC2クラスに参戦していた橘礼太もラトバラのタイムを更新し、3番手でフィニッシュ。
このようにいくつかの条件が重なり、“ラトバラ超え”というトピックスが誕生したが、彼らラトバラ超えを果たしたメンバーはただ単に運に恵まれたわけではなく、抜群のコントロールをみせていたことは言うまでもない。
とくに川畑は巨大なプラドで豪快な走りを披露。その卓越したコントロールは迫力満点で、SSS IKEDAに訪れたギャラリーたちもその健闘を讃えるように惜しみない拍手を贈っていた。
ちなみに、同じ舞台で数時間後に行われたリピートステージのSS11「SSS IKEDA 2」は路面が安定したこともあって、ラトバラがベストタイム、シュコダ・ファビアR5のヘイッキ・コバライネンが2番手タイム、トヨタGRヤリスRally2を駆る勝田範彦が3番手タイムをマークするなど、いわば順当な顔ぶれが上位に並んだ。
この前代未聞の“下剋上”は、わずか1回の出来事だったが、ラトバラの圧勝とともに2023年のラリー北海道のトピックスとして、記録にも記憶にも残り続けるに違いない。
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みんなのコメント
天気は快晴で気温も高く走れば走るほど表面の泥が掃けて乾いて路面が良くなって早めに走ったラトバラより後半のクロカンクラスのほうがタイム良かっただけだろ。何が珍事だ。バカか?