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「ギブリ ハイブリッド」が示すマセラティの電動化戦略と革新性

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「ギブリ ハイブリッド」が示すマセラティの電動化戦略と革新性

「あまりグリーン、グリーン、グリーンはプッシュしなくていいよ。マセラティの電動化はこれまでのラグジュアリー グランツーリスモの定義を変えるものではないのだから」

 ちょうど、来日していた同社のアジアパシフィックの代表からかけられた一言だ。2019年9月、今後登場する全モデルの電動化を発表したマセラティ。105年に渡るマセラティのドライビング体験を電動化技術とともにスポーツカーとしてのDNAは確かに継承しパフォーマンスを両立するという。

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 その第1弾となるミドルサイズの4ドアモデル「ギブリ」が日本の道路を走り始めた。各ブランドが取り組むクルマの電動化は地球温暖化やエネルギー問題などによる各国の規制も進む“100年に一度の自動車の大変革期”にあって避けて通ることはできない状況だ。

 生産/販売規模の大きなところから積極的に進んでいることは身の回りのクルマからも感じられるだろう。粛々と電動化が進むマセラティではハイブリッドのみならずピュアEVの登場も控えている。

洗練されたパフォーマンス

 試乗会はクローズドコースで行なわれた。2020年にマセラティの生産拠点の一つであるトリノで生産が始まった「ギブリ ハイブリッド」。本来なら世界各国からメディアを集めた国際試乗会が華やかに開催されるのだが、このコロナ禍ではクルマが各国をまわり試乗機会をつくるという策に出たのだった。

 そこでこの情報は日本仕様になりきれてはいないものの、デザイン、そして肝心のパフォーマンスについては、何ら違いはない。冒頭でご紹介した「グリーン、グリーン・・・」すなわち、「あまり環境のことばかり言わなくていいよ」という意味は乗ればわかる。

 燃費の効率化を図っているのは言うまでもなく、それでいてパフォーマンス向上に向いていたのだ。「ギブリ ハイブリッド」には、2ℓ 4気筒ターボエンジン(330ps/450Nm)+48Vバッテリーを併用する2種類の電動アシストデバイスを8ATで走らせるシステムが採用されている。

2種類のデバイスとは、1つがBSG(ベルト ドリブン・スターター・ジェネレーター)というスターターや低速や加速時の出力を電動アシストするもの。そしてもう1つが「eブースター」と呼ぶターボのように空気を圧縮する装置でターボが利き始める手前の隙間の出力を補うシステムだ。

 おかげで、全領域で途切れることのない動力をフル活用でき、ドライバーはマセラティのより洗練されたパフォーマンスを楽しむことができるのだ。低速や加速時、それにターボラグをもどかしく思いついアクセルを多めに踏み込んでしまうようなシーンは、とりわけシュッ、シュッとガソリンを噴いているわけで、燃費向上とパフォーマンス向上の両立が図れるのは間違いない。

走り出した瞬間からイメージよりも背中を軽く押されるくらいの、スマートで軽いフットワークにニヤリ。どちらかと言えば、やや重ためのステアリングを右コーナーに向かって切り込みそれを戻しながらアクセルを踏み足すとスッとトルクを路面に伝えるのがわかる。これなら街中で交差点をの右左折時でもこのシステムの隙のないアシストを体感できるだろう。

この2種類のほんの少し(だろう)のアシストが埋めるドライバーとメカニズムの隙間、絶大だ。これほどドライビングループ(走る/曲る/止まる=減速)を滑らかにもアグレッシブにも繋いでくれるとは。このリニアなレスポンスにより、減速→コーナーリング→再加速のリズムも掴みやすく、万人に走りやすさという扱いやすさを与えてくれるはずだ。最終コーナーを立ち上がり、アクセルペダルを床まで踏み込んで滑らかな足もとを野太い加速で疾走に近い実走感も特筆しておきたい。

また、「ギブリ ハイブリッド」は、ボディー剛性の高さとサスペンションの適材適所ならぬ、適“可変可動”適所ぶりも十分。運転席でドライビングポジションを取っている時に感じた室内の広さ感というボディーサイズへの大きさもペースアップするほどに忘れた。

FRモデルの「ギブリ ハイブリッド」は、ほどよくしなやかで目指したラインのトレース性にも優れる。ペースを上げて走ると、重量配分にもこだわった「ギブリ ハイブリッド」は、コーナーの侵入で素直に鼻先が内側に向き、出口に向かってステアリングを戻しながら再加速。そのアクセルをここぞというタイミングでより強めに踏み込むと、ハンドル操作と後輪駆動らしい押し出し、トルク、そしてお尻までは一体となったコーナリングが理想的で楽しい。

ちなみにドライブモードをスポーツに切り替えるとよりアクセルレスポンスやシフト、ステアリングフィールもアグレッシブなドライビング方向に向いていく。電動化されても独特のエンジン音は建材だった。

先進性とラグジュアリーが融合

 デザインに大きな変更はないが、Cピラーにつくマセラティのエンブレムの一部とブレーキキャリパー、そして、ボディーサイドのエアベントがブルー色となる。インテリアは色気とモダンとスポーツの融合がマセラティならではと言いたい。スポーティーなレザーシートは、背もたれに編み込みが施されるデザイン性にラグジュアリーさとイタリアのブランドらしさをたっぷり堪能させてくれる。

また、このモデルを含む2021年モデルから大きく進化するのがユーザーインターフェイス関連。新世代マルチメディアシステムが搭載され、高解像度のマルチタッチスクリーンを使ったユーザーエクスペリエンスが期待できそうだ。さらに、マセラティ・コネクトを通じて常にネットワークに繋がり、車両のコンディションの管理やサポート、緊急事態への対応などより安心感も高まるだろう。Amazon Alexaを活用したバーチャルアシスタント体験も加わり、空調やナビゲーション機能も管理できるというから楽しみだ。

グリーン、グリーン。マセラティの電動化モデルは2021年の日本でも“グリーン”シグナルで見事なクラッチ・ミートをしてみせてくれそうだ。

◆関連情報
https://www.maserati.com/jp/ja/news-event/new_Ghibli_Hybrid_unvail

文/飯田裕子(モータージャーナリスト)

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