かつてプログレや50シーマなど、イグニッションオンでモニターがズドン!! と出てくるクルマが2000年代には結構あった。なんか未来っぽいし、使わないときは収納したまんまでOKなど、何かとよかった気も。でも今やつねにモニターがドーン!! と鎮座しており、いわば全裸という感じ。何でなの!?
文:高山正寛/写真:ベストカーWeb編集部
出てくる感じがイイのよ!! なんで今のクルマはモニターが常に全裸!?
■やばい超未来!! しかも実用性もハンパなかった
イグニッションON!と同時に「ウィーン」という音とともに電動でモニターが目の前に現れる。そう、これが「電動インダッシュモニター(ナビと言う場合もある)」である。
普段(ナビを)使わない時(例えば近所への買い物や駅の送迎など)はモニターを格納することができるし、ディスプレイ部を保護できるというメリットもあった。
そしてこの電動インダッシュモニター、発売当時はカーナビの進化と共に最新技術の証として大人気だった。搭載モデルもメーカー純正で言えば、50系シーマ、トヨタで言えばプログレとかSAIなんてモデルにも設定があった。
これらは電動でカバーが開閉し、中に設置されているディスプレイ部が現れる、蓋と一体化したディスプレイ部がクルリと回転するなど車種によって様々。
一方市販カーナビの場合は1DINスペース部に格納されたディスプレイ部が電動で前にせり出し立ち上がるという構造だった。
いずれにせよ、新しいコンセプトを提案したい車種や商品を始め、基本は上級モデル等に採用、カーナビ自体も“ハイエンド級”として大人気となったのだ。
■起動画面を自分好みに!? メカ好きにはヨダレものだったのよ
当時で言えば「メカフェチ(好き)」今風で言うならば「デジタルカジェッター」に該当するだろうが、こういうのはこれらの人種には美味しい(たまらない)メカだ。
筆者もその1人で、とにかく前述した「ウィーン」がやりたくて何度もこの種のモデルを購入した。
さらにオタクネタと言われるかもしれないが、当時のインダッシュモニターの中には起動直後、画面上に表示される画面をカスタマイズすることができたのだ。
筆者は生粋のガンダムマニアなので「機動戦士ガンダムSEED」で使われた「ガンダムOS」の起動画面をカスタマイズして表示できるようにしていた。まさに起動後「ガンダム行きまーす」って気分はアゲアゲだった(当時何歳だよ、オマエは)。
■輸入車オーナーも飛びついた!! 超画期的ナビがヤバすぎた
コンパクトなボディにすべての機能織り込まれていたため大ヒットに!!
各メーカーはこのトレンドに乗って数多くの電動インダッシュモニターを搭載するモデルを発売していく。そしてその中でも衝撃的だったのが、富士通テン(現:デンソーテン)が2005年に発売した「AVN075HD」である。
電動インダッシュモニターを搭載する市販カーナビは構造上2DINが必要だ(1DIN×2の場合もあり)。
当時のカーナビは記憶媒体の主流がHDDだったので、ここにAV回路やナビの基本システムを実装するためには当然スペースが必要になる。
しかし「AVN075HD」は何と上記の機能を1DINスペースに収めた衝撃とも言える商品だった。
小型化高性能化は日本の十八番の技術(今はもう他の国に抜かれたけど)、電動インダッシュモニターに20GBのHDD(東芝製と記憶)。パワーアンプやFM/AM&テレビ(当時はアナログ)チューナー、さらにDVD/CDプレイヤーまで入っているのだがら当時は「日本メーカー、すげええっ」と感動したものだった。
この商品、市場での評価の高さはもちろんだが、実は輸入車ユーザーが飛びついた。当時、1DINしか取り付けスペースの無い輸入車があり、この場合、1DINスペースにはオーディオ、モニターはダッシュボード上にオンダッシュ、そしてカーナビの本体は助手席下などに設置する必要があった。
しかし輸入車に限らず「オンダッシュモニターはインテリアの美観を損ねるから嫌」というユーザーがいたのも現実。そこに登場した「AVN075HD」はこの悩みを解決するまさに“最適解”と言える商品だったわけだ。
後に、プジョー206シリーズや1007向けのインストールキットや一部のディーラーで販売したこともあり、このシリーズは長く販売されることとなった。まさに「名器」と呼べるカーナビだろう。
■大画面化に対応できず衰退へ
当時は6.5~7インチ程度であったために可能だったが、今や大画面時代。スペース的にも対応が難しいために衰退へ
理由は大きく2つ考えられる。ひとつは現在も続く「大画面化」の流れに対応できなかったことだ。
そもそも電動インダッシュモニター部は1DINスペースに格納される。当然ディスプレイの上限は基本7V型までだ。
純正カーナビ(インフォテインメントシステム)がインパネ専用に大画面ディスプレイを設定していく流れに対し、市販カーナビも当然大画面化に向かうのは至極当たり前のことだ。
まさに現代におけるインフォテインメントシステムは画面剥き出し“裸族”なのである。
一方、市販カーナビの大画面化はディスプレイ部をフローティング(浮かせる)構造としたことで市場の要望に応えることができた。
大画面カーナビと言えばストラーダのF1シリーズが有名だが、現在は10V型大画面までラインナップ、大ヒットしたのも十分頷ける。
■路面からのガタガタ……吸収できなかった
DIN規格を採用するモデルは少なくなりつつあり、画面も大型化。今やモニターはつねにむき出し状態に
もうひとつの理由はメカニズムが複雑すぎてモデルによっては故障が多かったことだ。“超”が付く精密機器なのに、カーナビの場合は振動や熱対策に常に悩まされる。
とくに当時の商品は路面からの入力によりディスプレイ部が「ブルブル」と震えることがあり(車種による)そもそも地図が見づらい、などの指摘もあった。
そして前述した精密構造ゆえに電動インダッシュ機構自体が故障してしまうケースも存在した。
実際、筆者も故障経験があり、電源オフでモニターが格納されなくなってしまった。「ウィーン」とモーターは回っているのにユニット自体は動かない、確実にスリップというか、機構がかみ合っていないわけで、これに関しては「電源オフ時にディスプレイを格納しない」といった設定があったので、これをオンにすることで当面は何とかなったのだ。
しかし、その逆、つまり起動時にディスプレイが動かなかった場合は最悪だ。何しろカーナビ自体が使えないのだからたまったもんじゃない。
そうそう壊れるモノではなかったが、それでも保証期間外だと修理には時間もお金もかかる。
それに比べると前述した市販のフローティングカーナビは電動機構を持たないことで故障自体は発生しないし、路面からの振動に対してもかなり対策が行われている。
大画面化はもちろん、エアコンやADASの設定までもディスプレイ上で行うのが当たり前になりつつある昨今。純正カーナビは単にカーナビだけではなく、統合型のシステムとして進化していく。
もはやディスプレイはさらに剥き出し、まさに“裸族”の道まっしぐらであることは間違いない(今後HUDが進化すれば話はまた別になるが)。
カーナビが登場して40年以上が経過するが、メカ好きをワクワクさせてくれた「電動インダッシュモニター」、これに変わる凄いメカが登場することを期待しているのは筆者だけではないだろう。
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