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ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 前編

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ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 前編

ドラッグレースでフェラーリ348tに勝利

アメリカのトラックメーカー、GMCが1991年に打ったピックアップトラックの広告には、こんなキャッチコピーが載っていた。「本当にモノを運べる、ポルシェ911だと考えて」と。

【画像】ゼロヨンはフェラーリ348t超え サイクロンとタイフーン 同時期のC4コルベット 最新の高性能ピックアップも 全118枚

間違いなく、カタチはスーパーやホームセンターでの買い物に活躍するであろう、シングルキャブのピックアップトラック。だが、大径ホイールに薄いタイヤを履き、車高は低く、オフロードが得意なクルマには見えなかった。

サイクロンと名付けられた、このクルマの0-97km/h加速は4.6秒。当時のポルシェ911 カレラ4は、5.2秒を必要としていた。それでいて、ドイツ生まれのスポーツクーペより9倍広い荷室を備えていた。過大な表現だとはいい切れない、動力性能を秘めていた。

1991年9月の自動車雑誌、カー・アンド・ドライバー誌を振り返ると、興味深い比較試乗が掲載されている。北米価格2万5970ドルだったサイクロンが、当時12万2180ドルだったフェラーリ348tとドラッグレースに挑み、勝利を収めたのだ。

0-400m加速のタイムは、サイクロンが14.1秒だったのに対し、348tは14.5秒。110km/hからの加速力でも、ミドシップのフェラーリより鋭かった。

サイクロンの話題性へ後押しされるように、荷室をリアシートへ置き換えたSUVスタイルのタイフーンも1992年に追加されている。今回は「世界最速のトラック」とも呼ばれた、この2台をご紹介したい。

現在の高性能モデルのパイオニア

1980年代後半、ゼネラルモーターズ(GM)が擁するGMC(ゼネラルモーターズ・カンパニー)は、アメリカのトラック市場でプレミアムなポジションへ据えられていた。レジャー目的のSUVが、徐々に支持を高める時代にあった。

その頃に開発が進められたのが、圧倒的な加速力を与えられた、このピックアップトラック。フォードF-150 ライトニングや、ダッジから分派したラムSRT-10といったモデルの、パイオニアになった。現在の高性能SUVという市場も、切り開いたといえる。

ただし、ベースのアイデアを生み出したのはGMCではない。同じGM傘下にあったビュイックだった。

1987年、高性能クーペのビュイック・グランドナショナルの生産が終了。3.8L V6ターボエンジンの行き場がなくなっていた。そこで選ばれたのが、小型ピックアップトラックのシボレーS-10。試作車の車高は落とされ、ワイドなアルミホイールを履いていた。

シボレーの上級トラックとしてGMの経営陣へ提案されると、可能性を見出したのがGMCだった。4.3LのV6エンジンへ改良を加え、S-10の兄弟モデルに当たるS-15のボンネットへ押し込み、サイクロンの原型を生み出した。

そのコンセプトカーが発表されたのは、1989年のデトロイト・モーターショー。GMCジミーというSUVがベースになった、4ドアモデルと一緒に展示されるものの、当初は明確な生産計画は立てられていなかったようだ。

モデル名もなく、コンセプト・トラックとだけ呼ばれていた。ジミーから派生したクルマには、カラハリと名付けられていた。

開発・製造を外注し大幅なコスト削減

モーターショーへ発表された時点では、後のサイクロンにはビュイックの提案通り、3.8L V6ターボエンジンが積まれていた。だが、後にタイフーンとなるカラハリには、4.3L V6エンジン、ヴォルテック・ユニットが搭載されていた。

7か月後、ニューヨーク・モーターショーにもこの2台は出展。「量産予定はまだ決まっていません」という説明へ変わり、市販へ1歩近づいたことを匂わせた。

その後、GMCはチューニングを施したS-15を最高速記録のメッカ、ユタ州ボンネビルへ持ち込み、カテゴリーEという量産車部門の記録へ挑戦。時速194.77マイル(313.4km/h)を叩き出し、市場の期待を大きく膨らませた。

GMCは、フェラーリやポルシェに動力性能で並ぶモデルを提供できる可能性を手にしていた。しかし、大きな問題となったのが開発コスト。当時で2億ドルが見積もられ、ショールームへ並ぶまでに7年間が必要だと算定された。

だが、当初からこのプロジェクトを牽引していたマーケティング部門のキム・ニールセン氏には、秘策があった。既存のピックアップトラック、S-15をベースにしつつ、開発から製造までを外注することで、コストの大幅な削減ができると考えていた。

このコンセプト・トラックの量産に向けて協力を名乗り出たのは、アメリカン・スペシャリティ・カーズ(ASC)と、プロダクション・オートモーティブ・サービシーズ(PAS)いう2社。それぞれ、独自のパワートレインが提案された。

284psの4.3L V6ターボに四輪駆動

両社とも、4.3L V6ターボエンジンの最高出力は284ps、最大トルクは48.3kg-mへ向上させていた。しかし、大きく異なっていたのが駆動方式。

ASCが、S-15純正のトランスミッションに後輪駆動というレイアウトを継投したのに対し、PASはビスカス式センターデフを備えた四輪駆動システムを採用。シボレーのミニバン、アストロの部品が流用されていた。

コンセプト・トラックのリアアクスルへ掛かる車重割合は約37%と小さく、284psを後輪駆動では受け止めきれないことは明らかだった。派手なバーンアウトは得意だったかもしれないが。

最終的に開発を請け負うことになったのは、ミシガン州トロイに拠点を置くPAS。1400万ドルという予算が託され、GMCのニールセンと協力しながら望む性能を発揮させるべく、18か月という短期間で作業は進められた。

4.3LのV6ヴォルテック・ユニットから、追加の116psと15.8kg-mを引き出すべく、採用されたのは三菱のD06-17Cターボチャージャー。ブースト圧を最大14psiまで高め、ギャレット社製の水対空インタークーラーと組み合わされた。

ピストンは低圧縮比の専用品となり、スロットルボディはコルベット用。吸排気のマニフォールドは専用設計で、マルチポイント燃料インジェクションがガソリンを供給した。

トランスミッションと四輪駆動システムは、当初の提案通りアストロから流用。駆動力の65%が、リミテッドスリップ・デフが組まれたリアへ送られ、残りはフロントへ導かれた。ターボが生み出すパワーを、確実に路面へ展開できた。

セパレート・シャシーにアグレッシブなボディ

シャシーは、S-15と同様にボディと別体。フロントサスペンションは、トーションバー式の独立懸架式。リアはリジッドアクスルにリーフスプリングという構成ではあったが、車高は落とされていた。

ブレーキには、先進的なアンチロックシステムがいち早く導入された。ドラッグレースでの出番は少ないとしても。ちなみに、マーキュリーが「Cyclone」という商標権を保有しており、モデル名のサイクロンには「Syclone」というスペルが選ばれている。

高性能ピックアップトラックらしく、見た目もアグレッシブさを強めていた。スポイラーがフレアしたフロントバンパーには、フォグランプを内蔵。ブラックのグリルにレッドのGMCロゴが飾られ、サイドとリアにはサイクロンのステッカーが貼られた。

245/50のワイドなファイアストーン・ファイアホーク・タイヤが、16インチ・アルミホイールを包んだ。ボディの塗装は、ブラックのみという設定だった。

インテリアでは、当時のポンティアック・サンバード・ターボ用となるターボブースト計付きメーターパネルを獲得。ファブリック仕立てのバケットシートは新デザインで、シフトレバーはコルベット用が選ばれた。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

3件
  • 昔タイフーンの方に乗ったことがあるが直線は踏んだ瞬間にバカトルク発生でびっくりするくらい速かった
    今は300キロオーバーのSUVなんて輸入車ならゴロゴロあるけど当時はバカっ速のSUV(RV)なんてなかったから驚いた テスタロッサキラーってよばれてなかったっけ?
  • アメリカの中古車サイトで検索しましたがプレミアがつき始めて3~4万ドル近い値がつけられています。
    日本にも当時並行で入って来ていましたが今でも持ってる方はお宝ですね。
    手放せばすぐに買い手がついて本国に流出しそうです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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