■クルマ好きでさえも思い出せないような超マイナーなクルマを振り返る
毎年、各自動車メーカーから、数多くの新型車が発売されますが、その一方でひっそりと生産を終了するクルマもあります。
また、月に2万台も販売されるヒット作があれば、月間販売台数の目標を大きく下まわるような不人気車も存在します。
さらに、クルマに詳しくない人でもトヨタ「カローラ」や「クラウン」、日産「スカイライン」など車名を聞いたことがある、もしくは車名からカタチが想像できるようなメジャーなクルマがあるなか、クルマ好きでも車名を聞いてどんなクルマだったか思い出せないようなモデルもあります。
後者を振り返って画像を見ると「そういえばあったね!」というような、懐かしさがこみ上げてくるのではないでしょうか。
そこで、かつて存在した超マイナーなクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「エメロード」
現在、三菱の国内ラインナップには4ドアセダンが存在していませんが、1990年代にはセダンを主力車種としており、豊富なラインナップが展開されていました。
そのなかの1台が1992年に発売された「エメロード」です。
エメロードは同年に先行して発売された7代目「ギャラン」のプラットフォームをベースに開発されたモデルで、スタイリッシュなハードトップボディのスペシャリティカーというコンセプトを採用。
ちなみにエメロードという車名はフランス語で「エメラルド」を意味し、「ダイヤモンド」を意味する「ディアマンテ」と同様に、宝石にちなんで命名されました。
外観は曲面を多用した滑らかで伸びやかなフォルムで、ギャランやディアマンテが力強さを表現していたのに対し、洗練された柔らかな印象となっており、空力性能も考慮されCd値0.29を達成。
また、ラウンドした形状のヘッドライトを採用したフロントフェイスと、ガーニッシュと一体となった長円状のテールランプが配置されたリアまわりが、斬新な造形でした。
内装では、ソフトな最上級ベロアをシート生地に採用し、コンソールまわりに天然石の紋様を配した「オニックストーンパネル」を配して、ラグジュアリー感を演出。
エンジンは1.8リッター直列4気筒に1.8リッターV型6気筒、2タイプの2リッターV型6気筒と4種類が設定され、トップグレードには最高出力170馬力を発揮する2リッターV型6気筒自然吸気を搭載。ツインターボエンジンを設定していたギャランと異なり、ジェントルな走りが重視されました。
しかし、当時はエメロードと同じく4ドアハードトップセダンのモデルが多く、競合がひしめくなか販売は伸び悩み、1996年に一代限りで生産を終了。ギャランに統合されるかたちで消滅しました。
●ホンダ「インテグラSJ」
米国ホンダは2022年3月10日に、アキュラブランドから登場する新型「インテグラ」の先行予約を開始。5ドアハッチバックボディを採用して6速MTを設定するなど、スポーティかつプレミアムなモデルとして発売は今春と、すでに秒読み段階に入っています。
一方、日本におけるインテグラといえば、「タイプR」に代表される3ドアハッチバックのFFスポーツカーというイメージが定着していますが、このインテグラの名前を冠したホンダのなかでも希代の珍車といえるモデルが、1996年に発売された「インテグラSJ」です。
当時、インテグラにも4ドアセダン(4ドアハードトップ)が設定されていましたが、インテグラSJはまったく異なる車種で、「シビックフェリオ」と「ドマーニ」の販売チャネル違いの兄弟車として開発されました。
主要なコンポーネンツとボディパネルの多くが3車共通とされ、インテグラSJのフロントマスクはステーションワゴンの「オルティア」から流用するなど、ボディの仕立て方が非常にユニークでした。
車名の「SJ」は「セダン・ジョイフル」に由来しており、ジョイフルは「楽しい」や「うれしい」を意味し、コンセプトが「フォーマルなセダン」でしたが、それらの言葉とは裏腹に、大きな特徴も無いベーシックなセダンとなっていました。
エンジンも2種類の1.5リッターSOHCでとくに高性能ではなく、インテグラをイメージさせる要素はありませんでした。
内装はとくに高級感もなくシビック フェリオと共通の意匠で、存在感も希薄だったため販売は低迷し、2001年に生産を終了。現在、インテグラSJは中古車市場でも滅多にお目にかかれない激レア車です。
●日産「バサラ」
現在、ファミリーカーの定番車種となっているミニバンは、1990年代の中頃から爆発的に普及しました。そのため、当時は各メーカーから次々と新型ミニバンが登場。
そうした背景から日産は1999年に、前年に発売されたミニバン「プレサージュ」と主要なコンポーネンツを共有する兄弟車の「バサラ」を発売しました。
ちなみに、バサラ(BASSARA)という車名は日本語の「ばさら(婆娑羅)」に由来し、語源には「ダイヤモンド」という意味があり、バサラの持つダイナミックで輝くような存在感を表現したといいます。
バサラとプレサージュの相違点はフロントグリルとテールランプまわりくらいですが、スモークメッキ調の縦桟フロントグリルと、同じく縦桟基調のリヤコンビネーションランプを採用し、よりシックな印象でした。
内装もプレサージュと基本的なデザインは同じでしたが、ハイコントラストなツートーンカラーで上質さを演出すると共に、メーター、パワーウインドウスイッチまわり、シフトレバーなどをカーボン調とすることで、スポーティさが強調されていました。
トップグレードには最高出力220馬力を発揮する3リッターV型6気筒DOHCエンジンを搭載し、ほかにも2.4リッター直列4気筒(後期型は2.5リッター)、2.5リッター直列4気筒直噴ディーゼルターボを設定するなど、さまざまなニーズに対応。
内外装のデザインや車格的にもラグジュアリー路線をコンセプトにしたバサラでしたが、当時の日産はプレサージュをはじめ「セレナ」「エルグランド」「リバティ」などミニバンラインナップが過剰でした。
そのため徐々に車種整理が進み、2003年にはバサラはプレサージュと統合するかたちで販売終了となり、そのプレサージュも2009年にエルグランドと統合されたことで、ラインナップから消滅しました。
※ ※ ※
かつて各国産メーカーとも複数の販売チャネルを展開していたことから、ラインナップも今よりもっと豊富でした。
しかし、近年は販売チャネルをひとつにすることによって一店舗ですべての車種が販売できるようになり、いわゆる「姉妹車」や「兄弟車」が統合され、ラインナップは少なくなりました。
一方、往年の姉妹車/兄弟車と同じく外観のデザインが少し異なるモデルは健在で、2タイプのシリーズが展開される例が多く見られるなど、ユーザーのニーズに対応しています。
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みんなのコメント
女の子にもてない車を、野郎が買うはずもなく、エメロード姫も人知れず消えゆく運命にあったのでした。合掌w
だからメーカー側も、後には珍車と呼ばれるようなニッチ市場向けの車も作れたんだよなあ。