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FIA会長、F1の内部対立を語る モハメド・ビン・スライエム氏にインタビュー 自身の論争、透明性、リバティについて訊く

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FIA会長、F1の内部対立を語る モハメド・ビン・スライエム氏にインタビュー 自身の論争、透明性、リバティについて訊く

論争の中心に立つ人物

モハメド・ビン・スライエム氏が世界的なモータースポーツの統括団体FIAの会長に就任した最初の任期を特徴づける形容詞として、よく使われるのが「controversial(物議を醸す)」というものだ。

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それも無理はないだろう。2021年シーズンのアブダビGPの波乱とF1世界選手権の運命を変えたレースコントロールの決定の渦中、2021年12月に就任したのだから。彼の最初の仕事は、自身が作り出したものではない混乱を収拾するというものだった。

ビン・スライエム氏の任期において、F1の火種の中心にある本当の戦いは、F1の監督機関であるFIAとF1の商業権所有者であるリバティ・メディアの間に生じた、最も寛大に表現すれば「緊張」と呼べるものである。

両者はシリーズの利益のために協力し合わなければならないが、緊密に協力し合っているときでも不和の底流は常に存在し、発火点が与えられれば全面戦争に発展する可能性を秘めている。とはいえ、現在はまだそのような状況には至っておらず、「frenemies(友人でもあり敵でもある)」という表現がこの関係を特徴づけるのに最もふさわしいかもしれない。

その中心人物の1人であるビン・スライエム氏のキャラクターは、FIAのために戦う、という決意によく表れている。ベルギーGPの週末、FIAの新しいモーターホームで61歳の彼にインタビューしたところ、そのことがよくわかった。

誤解を恐れない強気の口調

フェラーリの元チーム代表ステファノ・ドメニカリ氏が率いるリバティ・メディアとの戦いを恐れているかと尋ねると、彼は「いいえ、決して」と首を振る。

「わたしはFIAの立場を理解しています。わたしは誰を代表しているのか? 所有者、つまり選手権のオーナーです」

「確かにリバティ・メディアにリースしましたが、彼らはいい仕事をしています。彼らとは良い関係を築けている。しかし、わたし達は自分の立場を理解しなければならない。この明確さが重要なんです」

「ルールや(2026年以降の)新パワーユニット、あるいは(新規参入を検討しているチームの)関心表明については、FIAが最初に発言権を持つべきです」

ビン・スライエム氏は説得力のある話し手で、英国人記者(インタビュアー)の耳には対立的と解釈されかねない力強い口調の持ち主だ。これは誤解を招きかねないが、彼が重要だと考える問題に対する姿勢の表れでもある。

彼は定期的に適正な手続きの話題に戻る。F1に関して言えば、FIAがルールを作り、管理していることを考えると、それが彼にとって最強のカードとなる。それ以外では、地盤が揺らぐこともある。例えば、商業的な問題への介入を非難する書簡の中で、F1の評価額を200億ドルと「誇張された」と公に発言したことで戒めを受けた。

これによって彼は後手に回った。しかし、規制当局が商業的な問題に干渉すべきではないという原則はどちらにも当てはまるものであり、彼は現在、リバティ・メディアはルール形成に関与すべきではないという原則に大きく傾いている。

F1への新規チーム参入に前向き

最大の論争は、F1グリッドへの新規チーム参入をめぐるものだ。ビン・スライエム氏が会長に就任して以来、アウディがザウバーチーム(現在はアルファ・ロメオとして参戦)を買収することでF1への参入を決めて大きな注目を集めたが、彼はグリッドの拡大を考えている。

FIAは2月、F1と既存チームが支持しない申請プロセスを開始した。彼らは、たとえ2億ドルの参入費用を払わなければならなくなったとしても、F1に「重要な価値」を与えるチームだけを加盟させるべきだと主張している。しかしビン・スライエム氏は、F1を商業的に縛るコンコルド協定が12チームを認めている以上、新規参入組を完全に締め出すことはできないと主張する。

彼は、1970年代のF1の伝説的人物マリオの息子であるマイケル・アンドレッティ氏が運営する、アンドレッティの参戦(ゼネラルモーターズと提携)を声高に支持している。

「わたし達のルールでは、真剣な(参加希望)チームがあれば、(プロセスを)オープンにしなければなりません。わたし達にはルールがあり、ただノーと言うわけにはいきません。一方、12チームとの契約があるので、そのプロセスに従う必要があります」

「正直なところ、わたしはリバティ・メディアを動揺させるためにここにいるわけではありません。ですが、もし彼らの気分を害していると言うのなら、わたしはFIAのことをいろいろ言っている人たちを列挙することができます」

「わたし達が潜在的なチームに対してノーと言っているところを想像してみてください。わたし達はモータースポーツを維持するためにここにいる。市場シェアには目を向けない、非営利団体なんです。ビッグチームと裁判沙汰になり、わたし達が間違った理由で妨害しているなどと言われるのは避けたい」

「わたし達は関心表明を受け付け、デューデリジェンスを行い、財務面、技術面、そして数年後の自分たちの姿も見据える。米国からチームが来るのはいいことです。『チームを買わなければダメだ』と強制することはできません」

この件に関する決定までのスケジュールは後ろに流れている。FIAとF1の両方が新チームにサインしなければならないのだから、なかなか大変な状況だ。ビン・スライエム氏の現在の選択肢は、新チーム設立希望者の申請を受け入れるか、あるいは手を引くかである。

これは両者間の緊張の表れであるが、あくまで一部に過ぎない。

「FIAはメンバーのために」

FIAは2026年のパワーユニット・ルールの策定を監督し、内燃エンジンと電気動力の比率を50:50に切り替えた。現在、レッドブルをはじめとする一部のチームは、V6に有利なウェイトに調整するよう働きかけている。ビン・スライエム氏はこれを受け入れるだろうが、正しいプロセスを経て追求される場合に限る。

同様に、2022年のコストキャップの結果に関する論争も控えており、一部のチームが経費を使いすぎているという噂が流れている。ドメニカリ氏は最近、このような事態が発生した場合の制裁を公に求めたが、それはもちろん規制当局の領域である。

そして、すでに交渉段階にある次のコンコルド協定の問題もある。ビン・スライエム氏は、強力な規制当局の必要性と、ドメニカリ氏とF1がその価値を認めている事実を強調する。

F1が望むサービス向上のためにFIAが求めているのは、より大きな財源であることは明らかだ。言うまでもないことだが、F1にとって追加資金の調達というのはあまり乗り気ではないし、その余地もないと考えている。

「わたし達にはFIAに対する敬意と認識、そして公正さが必要です。わたし達はそこに到達しつつある。ステファノとはこの件に関していいミーティングができたし、彼はFIAのニーズと一致しています」

「わたし達はクリアでなければなりません。スチュワーディングの改善、レースディレクターのパスウェイプログラムの改善、ROC(リモート・オペレーション・センター)の改善、機材の改善など、どこへ向かうのかを示さなければなりません」

「(次の)コンコルド協定は2年半先ですが、FIA、FOM(リバティ・メディアが所有するフォーミュラ1マネジメント)、そしてチームの3つの利害関係者がいます。全員にとって公平でなければなりません。わたし達は障害を作るためにここにいるのではありません。わたし達はともに前進するためにここにいますが、不公平であれば前進することはできません」

会長に就任してからのビン・スライエム氏の行動を目の当たりにし、そして今、彼と話してみると、前任者達とはまったく違うことは明らかだ。

かのアイルトン・セナを苦しめたジャン・マリー・バレストル氏が急成長するF1の商業的側面との戦いに敗れた時期、マックス・モズレー氏が旧友でFOMの独裁者であるバーニー・エクレストン氏とパートナーシップを築いた時期、そして知名度の低いジャン・トッド時代と続いてきた。

FIAの大義のために戦おうとするビン・スライエム氏の決意は称賛に値するものであり、彼のマニフェストである「FIA for members」に合致している。その成否は、2年後に行われる再選挙の行方を左右する。

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