前回、「i7 M70 xDrive」をドライブした小川フミオ氏は、改めてこのクルマのデザインを観察する。BMWの最高峰モデルにはどんな工夫が加えられているのだろうか。
特別なクルマに与えられる、特別な仕立て
BMWは電気自動車「i7 M70 xDrive」でライバルに挑戦状を叩きつける
新しい7シリーズは、大きくいって2つに分かれる。ひとつはガソリンとディーゼルのICE(内燃機関)、もうひとつはピュアEVの「i7」シリーズだ。
ここで紹介している「i7 M70 xDrive」は、2023年にi7のラインナップに加わった、現時点でもっともパワフルなMパフォーマンスモデル。
といっても、基本デザインは同じだ。全長5,390ミリ、全幅1,950ミリ、全高1,545ミリのディメンションをもち、ルーフの前後長は長く見える。
とりわけ個性的なのはフロントマスクの造型。上下幅が薄くて左右に広いヘッドランプと、その下に大きなエアダム。
キドニーグリルは大きいが、クロームを使っているのは輪郭線だけで、これまで縦バーも目立っていたが、今回はブラックアウトされている。その周囲もブラックの部分が多い。
フロントマスクの比較:M70と60ではブラックアウトした面積の違いでイメージもだいぶ異なる
ポルトガルのリスボンで試乗車に対面したとき、押出しの強さに圧倒された。従来の「eDrive50」と「xDrive60」は、グリル周囲が車体同色の処理で、かつグリル内の縦バーもしっかり見えるデザインだったのと、かなり差異化されている。
「このクルマは、特別な存在感をもって、周囲の車両とは明らかにちがうと目だたせたいと考えていました」
BMWの乗用車のエクステリアデザインを統括するクリストファー・ワイル氏は、試乗会のときに、そう説明してくれた。
「なので、フロントマスクのデザインはとても重要です。BMWのトップクラスに属する車両には、それにふさわしいフロントマスクが必要と、ダブルレイヤーのヘッドランプまわりのデザインなどを与えました」
ヘリティッジを活かし、あたらしい世代を創造
もうひとつ、デザイナーとして印象ぶかかったのは、キャビンの造型だったとワイル氏は言う。
「後席乗員の存在がことのほか大事なのです。そこで、まず考えなくてはならなかったのは、後席における乗り降りの容易性です。そこでキャビンは比較的に立ちぎみにして、動線を確保しました」
M70をはじめとする7シリーズは、たんに他のクルマと違っていればいい、というわけではなかったそうだ。後席を重視したことがわかるキャビンの造型をはじめ、ある種のステータス性を感じさせるデザインを追求したという。
「そのためディテールにも凝りました。一例は、後席用ドアのリアクォーターウィンドウをチェックしてみてください。ガラスにパターンを入れることで、後席乗員が誰なのか、外から容易にわからないようにしています。乗員のプライバシーを考慮したデザインなのです」
もちろん、後席用ドアのウインドウフレームは、BMWが伝統的に大事にしている「ホフマイスターキンク」デザインが適用されている。
ホフマイスターは、1955年から70年までBMWデザインスタジオのシェフ(統括)だったウィルヘルム・ホフマイスターのことで、後席用ウインドウが弧を描いている独特のデザイン処理は、彼の指揮下で61年に初採用されたものだ。
ホフマイスターキンクは、4ライト(リアクォーターパネルにウインドウをもたないデザイン)か、クーペでないと、活きてこないデザインだ。
7シリーズは後席をここまで重視して開発したなら、リアクォーターパネルにウインドウを開けた6ライトデザインを採用する可能性だってあったのではないだろうか。
「初期のデザインプロセスでは、その可能性も考えました。でも結論は、私たちがデザインしているのはBMWなのだから、BMWの特徴を取り除いて成立しない、というものでした」
ワイル氏はそう説明するのだった。
ダッシュボードには、大きなカーブドディスプレイが採用されている。車両のドライブモード選択をはじめ、ナビゲーションも空調も音楽も、つまりインフォテイメント全般が操作可能だ。
デジタライゼーションに早くから注目していたBMWならではの装備だ。ここでも、BMW独自の、コクピット全体がドライバーのほうに向いているセントラルテーマが採用されている。
ヘリティッジを活かしながら、あたらしい世代を創造していく。それがBMWのデザイナーであることの醍醐味だと、ワイル氏は言う。そのとおりの世界観が実現されていると私も感じた。
Vol.3に続く
BMW i7 M70 xDrive
全長:5,390mm 全幅:1,950mm 全高:1,545mm ホイールベース:3,215mm 車両重量:2,760kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:212Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:570km(WLTCモード) フロントモーター最高出力:190kW(258ps)/8,000rpm フロントモーター最大トルク:365Nm(37.2kgm)/0-5,000rpm リヤモーター最高出力:360kW(489ps)/13,000rpm リヤモーター最大トルク:650Nm(66.3kgm)/0-5,000rpm システムトータル最高出力:485kW(659ps) システムトータル最大トルク:1,015Nm(103.5kgm) バッテリー総電力量:105.7kWh モーター数:前1基、後1基 駆動方式:AWD(全輪駆動) フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン式エアスプリング リアサスペンション:マルチリンク式エアスプリング フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前255/40R21、後285/35R21 最小回転半径:5.8m 荷室容量:500L 車両本体価格:2,198万円
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