ひと昔前のクルマ好きは「必ず」と言ってよいほど、(純正から)自分好みのホイールへと交換していた。なかには、納車された足でショップへ向かい、タイヤホイールを交換するという人もいた。
なぜ我々はホイールを交換したくなるのだろうか、ホイールを交換することの最大の効力は!? そしていいホイールとは何なのか!??
ホイールの最大の効力は…「かっこよさ」…?? なぜ交換したくなるのか? いいホイールの見分け方は??
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_Artinun
写真:ベストカー編集部、HONDA、Adobe Stock
やはり「見栄え」が最大の理由
純正のロードホイールを交換したくなる一番の理由は、やはり「見栄え」だろう。鉄チンホイールからアルミホイールへと変えるだけでも、足元がぐっと引き締まる(ように感じる)。昨今は、自動車メーカーがメーカーオプション等でホイールの選択肢を用意しているため、最初から、好みのデザインのアルミホイールを選べる車種もあるが、量産廉価なクルマだとひとつのデザインとなりがちで、他人と被ってしまう。車高を落としたり、ステッカーを張ったりすることと同じ、自分オリジナルにカスタムしたいという意欲が、我々にホイール交換をさせるのだろう。
もちろん、バネ下の軽量化のためにBBS製ホイールのような軽量ホイールに交換する、という理論派もいるだろう。だが正直なところ、バネ下重量のわずかな差を体感できるか否かは、個人の感度による。また、「軽量化が絶対的に正しい」ということは間違いで、バネ下の振動を考えた場合、ホイール軽量はバネ下運動の固有値を上げることになるため、デコボコした道でブルブルと振動するようになったり、ロードノイズが悪化したりとデメリットもある。
標準装着されているロードホイールを変えたくなるのは、自分オリジナルにカスタムしたいという意欲が原動力となっているのだろう(PHOTO:Adobe Stock_Darya)
鍛造ホイールのほうが軽くて強度が高いが、価格も高め
アルミホイールの形状は大きく分けて、オーソドックスな形状の「スポークタイプ」と、スポーク部分が細くなっている「フィンタイプ」、スポーク部分が網目のようになった「メッシュタイプ」、中心部がお皿のように平らな「ディッシュタイプ」の4つに分けられる。ただ、デザインは多種多様で、アルミホイール表面に塗装して仕上げる代わりに、表面を削ってアルミ材の輝きを活かした「切削光輝」という加工技術もある。
製造方法は、溶かしたアルミを型に入れて固める鋳造ホイールと、大きな圧力を掛けながらホイールを成形する鍛造ホイールの2種類がある。後者のほうが、ホイール強度(変形しにくい)が高めで軽量だが、作業工程が多く、そのぶんコストは高い。
また、ホイールのリム部とディスク部とを別でつくって組み合わせる製法も人気がある。2ピース構造、3ピース構造とあり、ピースが増えるほどより複雑なデザインが出せる反面、コストは上がる傾向だ。軽量ホイールで有名なBBSホイールは、メッシュタイプの2ピースホイールが人気だった。デザインと軽さ、そしてコストをどの塩梅で考えるか、クルマ好きを悩ませる難しい問題だ。
新型シビックタイプRに採用されている19インチ鍛造アルミホイール。専用スピニング製法により一体成形で制作しており、先代のFK8タイプRの鋳造ホイールに対して、約3kgの軽量化がなされている
やはり一番いいホイールは純正…なの…か…?
ホイールを交換したくなるのは、純正タイヤ&ホイールの性能に不満があるわけではなく、単に、「純正ホイールはダサい」といったマイナスのモチベーションが理由というのが大半だろう。筆者も昔はマイカーに好きなホイールを履かせて楽しんでいたが、サーキットやジムカーナといった本格スポーツ走行は想定しておらず、あくまで見栄えが優先。「ちょっと軽くして、走りを向上させたかった」と一応言ってはいたが、カッコつけていただけかもしれない。
ただ、元自動車メーカーの運動性能エンジニアとして、一応言っておくと、純正ホイールとタイヤの組み合わせは、エンジニアが乗り心地やロードノイズ、空力性能などを考え、それこそ50グラム単位で設計しているものだ。デザインも、デザイナーがそのクルマにもっとも合うように熟慮した成果であり、そのクルマに一番ふさわしいのは、やはり純正ホイールだ。
そうはいっても、クルマ好きはホイールを交換したくなるもの。20インチ、21インチの大径ホイールもいいし、コンケイブの効いた深リムホイール、憧れのレーサーと同じデザインのホイールも捨てがたい。さあお気に入りを探しに行こう!!
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