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危険地域では隊員の盾に! モーターファンフェスタ2022にも登場した「軽装甲機動車」【自衛隊新戦力図鑑|海上自衛隊】

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危険地域では隊員の盾に! モーターファンフェスタ2022にも登場した「軽装甲機動車」【自衛隊新戦力図鑑|海上自衛隊】

ミドルクラスSUVと同等サイズながら、車重は4トン超え!

軽装甲機動車はその名称どおり、銃弾や砲弾の破片などを防ぐ程度の装甲を施し、防御力をもたせた車両。英表記では「Light Armoured Vehicle」となり、頭文字から「LAV」と表記される。部隊内では「ラブ」と呼ばれることが多いようだ。
製造メーカーは小松製作所。迫力ある外観は、諸外国軍の同様な軽装甲車両と比べても遜色のない仕上がりだと筆者は感じる。

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車体サイズは、全長:4400mm × 全幅:2040mm × 全高:1850mmで、ボリューム感としてはトヨタ・ランドクルーザーなどのミドルクラス4WD・SUVと同様だ(参考までにランクルのサイズは4985mm×1980mm×1925mm)。車重は空車状態で約4.5トン。装甲車ゆえに重く、約2.5トンのランクル以上の重量級。

モーターファンフェスタ2022に展示された軽装甲機動車(写真左)。軽装甲機動車の左側面(写真左側が車首)。小銃弾などを防ぐ装甲ドアだが、跳ね上げ式の窓(防弾ガラス)は小型だ。タイヤはブリヂストン製「L302」(コンバットタイヤ)、サイズは275/70 R22.5。車両生産時期や季節、通常交換等により装着するタイヤは異なる。エンジンはいすゞ自動車製の4サイクル直列4気筒水冷ディーゼル・ターボを搭載。排気量は4800cc、最高出力は160ps。最高速度は舗装路で100km/hが可能。四輪駆動でハイ/ローの切り替えとデフロックを装備。トルコン付きのATで、スペック上で登坂能力は約40度となっている。
脚周りは前輪がダブルウィッシュボーン、後輪はセミトレーリングアーム。コイルスプリングは長く、ストロークも大きい。全体に大きく柔らかく動く仕様で路面追従性の良いサスペンションが搭載されている印象だ。

走破性は、クロスカントリー走行を得意とする一般的な4WDと同様だろうと思われる。路面の深い亀裂や地隙、凹凸のある舗装路や未舗装路全般、冠水路などなら大径タイヤと合わせて無難に走破する。極端な泥濘地などは苦手だという声は多いが、それはそうだろうと思う。そもそもクロカン競技車両ではないし、泥濘地や砂地はたとえ競技車であっても要注意路面のはずだ。

そのサイズから、輸送機からの空中投下も可能

軽装甲機動車は普通科部隊などに配備されている。隊員の盾となって前進する装甲車だ。先頭を進む本車の後ろに続くのは陸自の対馬警備隊。写真/陸上自衛隊対馬警備隊戦略機動性も盛り込まれ、航空自衛隊の輸送機などで運ぶことも、輸送ヘリが機外に吊り下げて運ぶこともできる。
また、輸送機から空中投下することも可能だ。空中投下とは、たとえば輸送機が着陸できない場所へ物資などを直接投入する手法で、軽装甲機動車をパレットに載せて固定し、パラシュートを接続して輸送機に積み込む。そして輸送機からパレットごと放出する。パラシュートが開き、軽装甲機動車はゆっくりと目標付近へ降下・着地する。地上で待ち受けた乗員はパレットを開梱して乗り込み、走り出すというものだ。

着地したときに転覆してしまう場合もあるという。そうした状況では軽装甲機動車の重量約4.5トンがネックとなり人力のみでの立て直しは難儀すると思う。他部隊から重機などを手配してリカバリーする必要があるかもしれないし、走行系などに損傷があれば応急補修なども必要だろう。そうした損耗もあらかじめ想定しておいたり、その場にあるものと人員でなんとか復帰させることも含むのが物資を降下させる緊急展開の手法なのかもしれない。

軽装甲機動車に固定化された武装はないが、屋根にはハッチがあり、ここを開けて車内から射撃することができる。隊員が持つ自動小銃や機関銃、対戦車誘導弾など普通科部隊が装備する各種火器を射撃するわけだ。

陸上自衛隊の軽装甲機動車。陸自普通科(歩兵)は本車を「動く防弾板」としても使う。微速走行でドアを開き、助手席と後席の隊員が降車。各々の隊員はドアに身を隠して歩きながら89式小銃を撃つ。車上ハッチでは01式軽対戦車誘導弾を構えている。01式軽対戦車誘導弾の射撃。軽装甲機動車に固定武装はないが、車上ハッチから各種の火器を射撃することができる。いくつかのバリエーションも造られた。最多は指揮官車などの用途で複数の無線機を搭載するタイプ。次に、偵察部隊などが使用する「発煙弾発射器搭載車両」、そして普通科の小銃小隊などが使う「機関銃搭載車両」。「01式軽対戦車誘導弾搭載車両」は、車体上面の荷物用ラックを撤去し、誘導弾を放つための空間と視界を確保しているもの。「国際活動仕様車」は、車体上部ハッチの全周装甲板追加やワイヤーカッター、強化防弾ガラス、車両後部にスペアタイヤを装着、ラジエーターを強化して砂塵防護力の向上処置などを図ったものだ。

自衛隊のイラク派遣以降、ジブチやスーダンなどへの派遣でも軽装甲機動車は使われ、現地に合わせた現場改修なども行なわれたという。航空自衛隊では基地警備用に各基地で使っている。空自の車体色は陸自の迷彩色ではなく、OD(オリーブドラブ、濃緑色)単色塗装だ。

導入から約20年、後継車両は?

東日本大震災で宮城県石巻市に災害派遣出動した軽装甲機動車。各トラックや高機動車と比べ、乗車定員の少なさや積載性の面で災害時には劣ったかもしれないが、瓦礫が堆積し道路も復旧できていない被災直後の石巻沿岸部へ、その走破性を発揮して進入、行方不明者救助などにあたった。逞しい軽装甲機動車が傷ついた街を走ることで人々の気持ちを励ます効果もあったように思う。冠水地の泥濘で車体は汚れたままだが、飲料水も不足した当時は洗車を止めていた。緊急時は当然こうなる。運転時の悩ましい点としては、防弾ガラスのフロントウインドウは左右二分割されていて、その分割された中央部分がかなりの面積で前方視界を塞ぐ形となっており、視界が狭くなって運転しにくいという声がある。加えて各ドアの防弾ガラスも小型なので全般的に視界は良いとはいえない状況だ。

また、車重が影響して燃費は良くないという。日常的な訓練や移動、災害派遣の行動時などでは燃料残量を気にしていることが多いそうだ。航続距離は約500kmと公表されているが、この値に含まれる条件や要素などが不明。つねに満タンで行動開始するわけでもないのだろうし、燃費の悪いクルマで残量を心配しながら運転する気持ちは我々にも想像しやすい。

後席のようす。座席のクッションは薄いので、長距離の移動はキツいだろうと想像ができる。車内も狭く、4人分の個人装備などを置くスペースも限られているようだ(写真左)。運転席の光景。助手席との間隔は広い。フロントウインドウが分割される影響から、当然ながら視界は悪い。そして、陸自装甲車両として初めて「クーラー」を標準装備したのが軽装甲機動車だという。しかしこのクーラー、動かすと燃費の悪化が著しいようで、使わないことも多いらしい。代わりに小さな防弾ガラスを開けて走行風を取り入れて走っているそうだ。

軽装甲機動車が出展されたモーターファンフェスタ2022はあいにくの強雨だったが、そういえば当日やってきた本車は往路復路とも防弾ガラスを開けて走っていた。天候によりガラスの曇りは発生しないのか、有事・緊急時にも防弾ガラスを開けて換気することになるのか。そうであるなら車内空調は改善点だと思う。

導入から約20年、後継車両が求められており、海外メーカー製装甲車を選定、輸入することを計画しているという。
候補車には、トルコ・ヌノルマキナ社製「NMS 4×4」、米オシュコシュ社製「JLTV」、オーストラリア軍が使用するタレス社製「ハウケイ」などが挙がっているそうだが、96式装輪装甲車の後継車を外国製車両を軸に選定する作業を先行・重視している影響か、軽装甲機動車の後継車の話はなかなか聞こえてこない。

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みんなのコメント

5件
  • 後継車両は、スイスのモワクのイーグルか、オーストラリアのタレスオーストラリアのハウケイの実質的な争いらしい。

    モワクは、米陸軍のストライカー装甲車のベースになったピラーニャⅢや米海兵隊のLAV-25のベースになったピラーニャⅠを開発したメーカー。

    タレス・オーストラリアは陸上自衛隊が、輸送防護車として、採用したブッシュマスターを開発したメーカー。
  • 自動車メディアなら、コマツが初めて量産した乗用車だという事にも触れないと…。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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