現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【従来のデフとは大きく異なる】アウディRS3のトルクスプリッターとは? 仕組みを解説

ここから本文です

【従来のデフとは大きく異なる】アウディRS3のトルクスプリッターとは? 仕組みを解説

掲載 更新 11
【従来のデフとは大きく異なる】アウディRS3のトルクスプリッターとは? 仕組みを解説

2つの湿式多板クラッチで制御

text:Jesse Crosse(ジェシ・クロス)

【画像】5気筒ターボのスポーツハッチ【新型アウディRS3を先代モデルと比較】 全60枚

translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

8月に欧州で発売予定の新型アウディRS3には、リアディファレンシャルギアを廃止し、2つの湿式多板クラッチに置き換えた新しいトルクベクタリングシステム、トルクスプリッターが搭載されている。後輪のトルクを可変配分し、ドリフトを可能にするものだ。

従来のディファレンシャルの欠点は、トラクションを失ったときに片方の車輪が空転してしまうところで、パワフルなモデルでは特に問題となっている。そこで、左右の車輪の回転速度差を制限して、片方がスピンし始めたときに対応するリミテッド・スリップ・ディファレンシャル(LSD)を採用している。LSDには、機械的に制御するものと、電子的に制御するものがある。

アウディの新しいトルクスプリッターは、従来のシステムとは全く異なり、リアアクスルにディファレンシャルギアを一切搭載していない。その代わりに、一対のベベルギアが駆動を伝達し、その両脇には2つの電子制御クラッチが配置されている。

2つのクラッチは独自にコントロールされており、モジュラー・ビークル・ダイナミクス・コントローラ(MVDC)が統括する。MVDCは、シャシーシステム全体を制御するオーケストラの指揮者のようなものだ。

RS3の場合、MVDCは2つのトルクスプリッター・コントロールユニットだけでなく、アダプティブダンパーとホイールへの個別トルク制御も同期させている。縦・横方向の加速度、操舵角、スロットル開度、ヨー角を計測する各センサーから情報を集めるが、特にヨー角はトルクベクタリングに不可欠なものだ。

これらのセンサーの多くは、エンジンやスタビリティ・コントロールシステム用にすでに存在しており、あらゆるデータがトルクスプリッターの制御に使用される。

バランスと機動力を高める

お気づきかもしれないが、このマグナ社のトルクスプリッターは、GKN社のツインスター(最新のフォード・フォーカスRSなどに採用)によく似ている。2つのクラッチの基本的な配置と、ディファレンシャル用の「スパイダー」ギアがないという点では共通しているが、決定的な違いがある。

まず、フォードに採用されているシステムでは、リアアクスルのファイナルドライブレシオがわずかに高くなっており、ドリフト時にフロントよりもリアに大きなトルクを送るために必要な「オーバースピード」を生み出している。その必要がないときは、2つのクラッチを滑らせてリアへのトルクを減らす。

しかし、アウディはそれとは異なるアプローチをとっている。何もない素の状態では、フロントとリアのトルク配分は50:50で、ドリフトのためにリアのトルクが必要なときは、フロントのトルクを小さくするというものだ。

ドリフト時に使用する「RSトルク・リア」モードでは、フロントのトルクを常に変化させてクルマのバランスを保ち、一瞬ではあるが外側の後輪に100%のトルクを送ることができる。一方、「コンフォート/エフィシェンシー」モードでは、リアのクラッチを滑らせてフロントを優先させる。

他の走行モードでは、コーナリング時に外側の車輪にかかるトルクを増やすことで、アンダーステアを軽減し、俊敏性を高める。また、内輪へのトルク配分を増やすことで、オーバーステアを軽減することもできる。

関連タグ

こんな記事も読まれています

あまり重いと走行不可能! 重い積み荷の巨大トラックは「何トン」まで公道を普通に走ってOK?
あまり重いと走行不可能! 重い積み荷の巨大トラックは「何トン」まで公道を普通に走ってOK?
WEB CARTOP
ホンダが認証不正で会見 対象車種の累計販売は325万台 「遵法性の意識に大きな問題」
ホンダが認証不正で会見 対象車種の累計販売は325万台 「遵法性の意識に大きな問題」
日刊自動車新聞
“カツカレー”のようなクルマの進化──新型BMW X6 xDrive 35d M Sport試乗記
“カツカレー”のようなクルマの進化──新型BMW X6 xDrive 35d M Sport試乗記
GQ JAPAN
新デザインになった「ゆるキャン△ピングカー」イベント展示とオフィシャルグッズ販売が決定!
新デザインになった「ゆるキャン△ピングカー」イベント展示とオフィシャルグッズ販売が決定!
乗りものニュース
エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
motorsport.com 日本版
ルノー「カングー」でこだわりの趣味を満喫!最長1年間貸与のモニターキャンペーン第3弾
ルノー「カングー」でこだわりの趣味を満喫!最長1年間貸与のモニターキャンペーン第3弾
グーネット
シボレー「コルベット E-RAY」発表 史上初の電動化&AWD車 加速性能は歴代最速に
シボレー「コルベット E-RAY」発表 史上初の電動化&AWD車 加速性能は歴代最速に
グーネット
ホンダ、新エアロにより最高速は向上も残る課題。新エンジン投入はサマーブレイク後の見込み/第7戦イタリアGP
ホンダ、新エアロにより最高速は向上も残る課題。新エンジン投入はサマーブレイク後の見込み/第7戦イタリアGP
AUTOSPORT web
ザ・ニッポンの高級車の進化──新型トヨタ・クラウン・クロスオーバー試乗記
ザ・ニッポンの高級車の進化──新型トヨタ・クラウン・クロスオーバー試乗記
GQ JAPAN
トヨタの豊田章男会長、不正発覚で陳謝 「間違いをした時は一度立ち止まる」 認証プロセス管理の仕組みは年内に構築
トヨタの豊田章男会長、不正発覚で陳謝 「間違いをした時は一度立ち止まる」 認証プロセス管理の仕組みは年内に構築
日刊自動車新聞
ボルボの最新BEV「EX30」の全身に息づく"ほどよきこと"の魅力
ボルボの最新BEV「EX30」の全身に息づく"ほどよきこと"の魅力
@DIME
トヨタが発表した不正行為と対象車種の一覧
トヨタが発表した不正行為と対象車種の一覧
日刊自動車新聞
「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか
「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか
乗りものニュース
『フェルスタッペン×アロンソ』“最強タッグ”の可能性はあったのか? レッドブル重鎮マルコ「チームを良い方向に進めるのは難しかっただろう」
『フェルスタッペン×アロンソ』“最強タッグ”の可能性はあったのか? レッドブル重鎮マルコ「チームを良い方向に進めるのは難しかっただろう」
motorsport.com 日本版
[サウンド制御術・実践講座]「タイムアライメント」を使いこなせると、演奏を立体的に再現可能!
[サウンド制御術・実践講座]「タイムアライメント」を使いこなせると、演奏を立体的に再現可能!
レスポンス
【途中経過】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝1時間半時点
【途中経過】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝1時間半時点
AUTOSPORT web
そろそろ“フルモデルチェンジ”!? 17年モノ「ミニバン」に10年モノ「セダン」も!? ロングライフな「国産車」それぞれが愛される理由とは
そろそろ“フルモデルチェンジ”!? 17年モノ「ミニバン」に10年モノ「セダン」も!? ロングライフな「国産車」それぞれが愛される理由とは
くるまのニュース
【SUPER GT Round3 SUZUKA GT 3 Hours RACE】37号車Deloitte TOM’S 笹原&アレジ組がGT500初優勝!GT300は777号車D'station Vantage GT3が完勝
【SUPER GT Round3 SUZUKA GT 3 Hours RACE】37号車Deloitte TOM’S 笹原&アレジ組がGT500初優勝!GT300は777号車D'station Vantage GT3が完勝
Webモーターマガジン

みんなのコメント

11件
  • 初期モデルめちゃくちゃトラブル出そう
  • アウディは技術あるな
    スキーのジャンプ台登って行くクワトロのCMまだ覚えてるw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

828.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

291.21019.9万円

中古車を検索
RS3 スポーツバックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

828.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

291.21019.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村