■2020年秋 日本導入予定の2代目新型「Q3」の最上位モデル
アウディ「Q3」は、アウディのSUV「Qシリーズ」のなかのもっとも小さいコンパクトSUVだ。2011年に初代が登場して以来、CセグメントのプレミアムコンパクトSUVとして、日本だけでなく世界中で人気を博している。
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2代目となる新型Q3は、2018年に欧州で発表された。そしてその後同モデルのクーペ版であるQ3スポーツバックが2019年に登場している。
しかし、この新型Q3は日本には未導入で、2020年の後半に上陸が予定されている。
そんな新型Q3シリーズが日本に上陸する前に、アウディは最強モデルを追加した。それが今回試乗した「RSQ3」「RSQ3スポーツバック」というモデルだ。
しかも今回は、このRSQ3を欧州のウインターテストの本場、スウェーデンのアルヴィッツヤウルで試す機会を得た。
ここは、ストックホルムから飛行機でおよそ1時間北上した、北極圏の手前に位置する場所。世界中の自動車メーカーやサプライヤーがウインターテストをおこなう場所でもある。
大小さまざまな湖が点在し、冬は気温がマイナス20度に達する場所であるため、湖のすべてが凍りつき、その上に広大なテストコースを作ることができる。それだけに冬の季節は多くの自動車関係者がここでテストをおこなうわけだ。そんな場所でRSQ3は我々を待ち構えていたのだった。
初日は午後にアルヴィッツヤウルに到着し、そこから一般道を約200km試乗した。この日の相棒はRSQ3。通常ボディのモデルだ。
RSQ3の成り立ちは、フォルクスワーゲングループの最量販アーキテクチャであるMQBを用いたもの。
ライバル的に、真横で比較できるモデルは存在していない。
メルセデス・ベンツでいえば「GLA」と「GLC」の間くらいの車格であり、BMWでいえば「X1」と「X3」の間に位置するという。とはいえこのRSQ3の場合は、メルセデスAMG「GLA45」あたりと比べるのが良さそうなスペックといえるだろう。
ボディはノーマルのQ3よりも10mm拡大されており、車高が10mm低められているのは専用のサスペンションを備えるためである。
アウディのRSモデルには、ホットなパワーユニットが搭載されるのがお決まりだが、このRSQ3にはお馴染みの2.5リッター直列5気筒直噴ターボが与えられる。
2リッターから2.5リッター部門で、9年連続インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを獲得しているこの名機は、長い歴史と高い実績を持つが、年を追うごとに改良されて常に最新の成り立ちとスペックを手にしている。今回も軽量化が図られると同時に高出力化がなされており、最高出力は400馬力、最大トルクは480Nmを発生する。
これを7速のSトロニックと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションを介して、アウディ独自のAWDシステムであるクワトロによってパワーとトルクを路面に伝える。クワトロは前輪駆動をベースにするオンデマンドタイプだ。
前後ともに4リンクの形式となるサスペンションは電子制御可変ダンピングシステムを備えており、ドライブセレクトによってキャラクターを変えることができる。このRSQ3では、オート/コンフォート/ダイナミック/インディビィジュアルの4つのモードを備えており、さらにステアリングスポークの右側にあるRSボタンでも、即座にダイナミックな走りのキャラクターに変更が可能だ。
そしてタイヤ&ホイールは、20インチサイズを履き、オプションで21インチが用意される。今回試乗車は20インチのミシュランX-ICE NORTH4というウインタータイヤを履いていた。
■ドライブセレクト切り替えで日常遣いにもスポーティにも
試乗車を受け取って走り出した瞬間、肩透かしを食ったような感覚だった。
なぜならもっともホットなQ3なのに乗り心地も悪くないし、エンジンも思いのほか息を潜めており、室内は想像以上の静寂が保たれていたからだ。
もっとも路面も雪道が多い上に、タイヤもウインタータイプのため剛性もサマータイヤよりは柔らかめなのだろう。そうした要素が効果して思いのほか快適な走りの世界が広がっていたのだ。
2.5リッターのエンジンは、ドライブセレクトがオートの時には本当に穏やかで、アクセルペダルに乗せた足を少し動かす程度で、豊かなトルクがクルマをスッと押してくれる頼もしさがある。またサスペンションもスポーツモデルの割にしなやかさを見せるもので、心地よいドライブを味わうことができるのだ。
アルヴィッツヤウルの試乗コースは、ほとんど対向車がこない緩やかな雪のワインディングで、気がつけば100km/hを超えるペースで走っていくような環境。
そして時々、同じくらいの速度で走ってくる対向車とすれ違うわけだが、そうした過酷な環境でもじつに頼もしい走りを見せてくれた。オートモードゆえフィーリングこそ刺激的ではないが、このゆとりは、間違いなく高いパフォーマンスを備えているからこそにじみ出てくるものである。
ドライブセレクトをダイナミックに切り替えて試した。
スイッチを押した瞬間にエグゾースト音が明らかに変わる。マフラーのフラップが開いたのだろう、野太さが加わってくる。
そしてここからアクセルペダルを踏み込むと、直列5気筒直噴ターボは独特のビートを届けてくれる。
1-2-4-5-3という点火順によるこの不揃いなビートには、どこか気持ちを昂らせる要素があるのだろう。そのビートは回転が高まるにつれて粒が揃ってくるような感覚を伝えてくる。
同時に強烈な加速感も生み出し、0-100km/h加速タイムでは4.5秒という俊足ぶりを誇る。最高速は通常は250km/hだが、オプションを付ければ280km/hを可能にするという。
それにしてもこのエンジンのフィーリングは素晴らしい。直噴ターボにも関わらず、回転がどこまでも伸びていく気持ち良さがある珍しいエンジンだ。
ダイナミックモードではサスペンションのダンピングも締め上げられて路面からの突き上げを伝えるようになる。しかしながら本来の性能を試すにはトラックが必要といえるだろう。そしてこれは翌日の、湖の上でのテストトラックで試すことができたのだった。
翌朝は凍った湖上の広大なテストコースにセットされた、2種類のサーキットでの試乗がおこなわれた。
試乗車はスパイクタイヤを装着しており、ESC(横滑り防止装置)は最初から解除されている状態。ここで思う存分RSQ3を振り回せ、ということだろう。
最初はドライブセレクトを「オート」のままで試した。RSQ3が印象的なのは、前輪駆動ベースのオンデマンドタイプのクワトロながらも、まるで後輪駆動ベースのAWDモデルのように積極的な姿勢を維持できること。
リアのアクスルに備わる電子制御の多板クラッチがきめ細やかにコントロールされることで、前後の駆動力配分はじつに絶妙な変化をして、結果、意のままのハンドリングを生み出すことに大きく貢献する。
さらにドライブセレクトを「ダイナミック」にすると、より積極的にリアを流しながらも、いい塩梅でフロントに駆動力を供給するため、リアがかなりスライドしながらもそれを維持しつつ、しっかりと前へと進む力に変えている。それがゆえにドライバーは存分にハンドリングの良さを味わうことができるというわけだ。
今回は、一般道/テストコースともに雪上と氷上という特殊な環境下での試乗となったが、それでもRSQ3の仕上がりの良さは存分に感じられた。
いやむしろ、このような過酷な状況でかなり本格的なスノードライブが味わえたことは、ドライ路面でのサマータイヤでの走りも相当に期待できることの証だろう。
毎日の足として便利で快適なSUVの側面はしっかりと手に入れながらも、走りは穏やかさから痛快さまでをカバーしており、さらにスポーツバックではスタイリッシュな面も手に入れている。RSQ3/RSQ3スポーツバックは最強モデルながら、相当にマルチな性能を有した欲張りな一台だった。
AUDI RSQ3
・全長:4506mm
・全幅:1590mm
・全高:1583mm
・ホイールベース:2681mm
・トレッド前/後:1590mm/1583mm
・車両重量:1715kg
・エンジン形式:直列5気筒ターボ
・排気量:2480cc
・駆動方式:4WD(クワトロ)
・変速機:7速Sトロニック(DCT)
・最高出力:400馬力/5850-7000rpm
・最大トルク:480Nm/1950-5850rpm
・サスペンション前/後:ストラット/4リンク
・タイヤ:255/40R20
・0-100km/h加速:4.5秒
・最高速度:250km/h(リミッター)
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みんなのコメント
Q2は存在しないことにされている…
本国ではRSまで出てるというのに…