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マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(国内編 Part 3)」

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マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(国内編 Part 3)」

マツダのロータリー・ラインアップには、トラックやマイクロバスなど変わり種もあった

ロータリー・エンジン搭載車と言えば、忘れてならないのがスポーツカー。そう、マツダのRX-7シリーズだが、それは次回のお楽しみということで、今回は変わり種を3連発していこう。

マツダの飽くなき挑戦「ロータリー・エンジン搭載車ヒストリー(国内編 Part 1)」

北米仕様のロータリー・ピックアップ

先ずは1974年に登場したロータリー・ピックアップ(REPU)。これはその名の通りロータリー・エンジンを搭載したピックアップ、つまりトラックだ。もう少し詳しく出自を見て行くと、ベースとなったのは、マツダ初のピックアップとなったB1500の後継モデルとして65年に登場した初代プロシード。もっとも、「REPU」が販売された北米では、このプロシードもB1500を始祖とするMAZDA B Seriesの第2世代として知られている。

それはともかく、商用車としてライトトラックに分類される1t積のピックアップトラックに当時、マツダの乗用車用としては最大排気量となる654cc×2ローターの13Bを搭載したモデルがREPU。シャシーも強化され、4輪ドラムブレーキだったベースモデルに対してREPUではフロントにディスクブレーキが奢られ、当初は4速マニュアルしか用意されていなかったミッションも、後には5速MTや3速ATも選べるようになった。

また後期モデルではキャブが100mm、前後方向に引き伸ばされるなど、居住性に関しても改良。今から見ればSUV(新聞などではスポーツ多目的車と注釈がつく)だが、要は商用車だったトラックを乗用車にコンバートしたクルマ…の先駆けでもあった。ただし73年の第一次オイルショックの影響もあり、多くの台数を販売することはなく77年にプロシードがモデルチェンジを受けて次世代…プロシードとして2代目、Bシリーズとして3代目に移行したのを機に姿を消した。

【Mazda Rotary-Pickup Type REPU(1973-77)】

ロータリー関連の収蔵展示で評判のドイツはアルトゥルスハイムにあるオートヴィジョン博物館で出逢ったロータリー・ピックアップ(REPU)。フレアーした前後のオーバーフェンダーが、ただのピックアップトラックでないことを訴えている。テールゲートにある“ROTARY POWER”の文字は、展示に際しての演出ではなく、ラインオフした時からすでに装着(貼付)されている標準パーツ。ファミリア・ロータリークーペでも外観上の大きな特徴となった丸型4灯のテールライトも、このロータリー・ピックアップの出自を物語っているようだ。

【Mazda Rotary Pick-Up 2-door Pick-Up Truck Type SPA136(1974)】

こちらはドイツのアウグスブルクにあるマツダ・クラシックカー博物館フライで出逢ったREPU。リアの荷台部分が大きく改造され、車両けん引作業に特化した仕様となっている。自動車博物館にはふさわしい“働くクルマ”であると同時に、看板グルマとしてもアピール度は高いと思われるが、同館では館内に展示されていた。

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トルク20kg・mで車重3トンを牽引

3連発の二つ目は、REPUと同じく74年に登場したマイクロバス「パークウェイロータリー26」。こちらは、65年に登場したマツダ初のマイクロバスであるライトバスA型/C型の後継モデルとして72年に登場したパークウェイ26の派生モデル。ちなみに、ライトバスA型は、69年にTBS系でオンエアーされたドラマ『青春に飛び出せ!』で有名になったマイクロバスだ。これは前年にデビュー曲の『恋の季節』が大ヒットした5人組ピンキーとキラーズが主役の青春コメディ。彼らの足として日本全国を旅したキャンピングカーが、このライトバスA型だった。

それはさておきキャブオーバートラックのタイタンの初代モデルをベースに生まれたパークウェイ26は、ラダーフレームにリジッドアクスルをリーフスプリングで吊った前後サスペンションを組みつけたタフなシャシーを採用。タイタンと同様に2リットルのガソリン・エンジン/2.5リットルのディーゼル・エンジンを搭載していたが、『パークウェイロータリー26』は、その4気筒エンジンを654cc×2ローターの13Bに換装したもの。2代目ルーチェのモデル末期に追加投入された13Bは、パワーこそ135馬力と充分なものがあったが、そもそもは車重が1t~1.5tの乗用車用のエンジン。3t近くもあるマイクロバスに対しては、僅か20kg・mに過ぎないか細いトルクでは明らかに力不足だった。

その半面で乗用車用として開発がすすめられたロータリー・エンジンだけに、その頃から大いに注目されるようになった公害対策の面ではライバルを一蹴。当時の国内における排出ガス規制値を大幅に下回り、リアウィンドウやボディ各所に『RE公害対策車』のステッカーが誇らしげに貼られていた。【Mazda Parkway Rotary 26 Microbus Type AE(1975)】

同じく、マツダ・クラシックカー博物館フライに収蔵展示されていたパークウェイロータリー26。マツダの本家本元である本社併設のマツダ・ミュージアムでもパークウェイロータリー26は館内展示ではなく、屋外に展示(駐車?)されているだけのようだが、もともとは工場だったり倉庫だったりした建屋を改造して博物館の展示ホールとしたケースでは、このように大型の車両も展示することができる。ちなみに、ここマツダ・クラシックカー博物館フライの展示ホールは、もともとトラムの車庫だった建屋を改造して生まれた、というから広さは充分だ。

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高級車市場に投入された悲運のプレステージカー

変わり種3連発の最後はマツダ『ロードペーサー』。当時のマツダのラインアップで最大サイズの乗用車は、2代目ルーチェ(LA2系。全長=4240mm×全幅=1660mm)だったが、このロードペーサーは全長=4850mm×全幅=1885mmと、当時では超ド級サイズ。オーストラリアの自動車メーカーでGM傘下にあったホールデンのHJ系プレミアーのボディをマツダが輸入し、国内で654cc×2ローターの13Bエンジンに乗せ換えて販売したものだった。

フルサイズのモデルを持っていなかったマツダは、当時は海外メーカーとの提携もなく独自で開発する必要があったが、この手法を採ることによって開発コストを抑えることが可能になり、また貿易摩擦の解消に一役買うといった、思わぬメリットもあったという。ただし、ロータリー・エンジンのウィークポイントであった、低回転域でのトルクの細さと燃費の悪さが災いした。スポーツカーやハイパフォーマンスがセールスポイントのクルマなら、高回転まで一気に吹き上がるロータリー・エンジンのアドバンテージを享受できるのだが、いわゆるビッグサイズセダンでは低回転域からトルクフルなエンジンを利してゆったりと走るのが基本。こうした運転パターンは、センチュリーやプレジデントのようなV8の大排気量レシプロ・エンジンが得意とするところで、ロータリー・エンジンでは太刀打ちできなかった。また、発売当初は2年前に発売されたプレジデント(最上級グレードのDタイプで308万円)に比べてフロントがセパレートシートの5人乗りで371万円、ベンチシートの6人乗りでも368万円と2割以上も高い価格設定となっていたことも、販売台数が伸び悩む一因となった。さらに3代目に進化したルーチェが5ナンバーサイズながら、このクラスのユーザーにはより好意的に迎えられたことで、結局こちらがマツダのフラッグシップのポジションを確立。ロードペーサーはモデル消滅の運命を辿ることになった。

排気ガス浄化がポイントで官公庁の“受け”は良く、発売当初の計画では、目標販売台数を月間100台としていた。しかしモデルライフ自体も約4年間と短かく、初年度となる75年には400台近くが販売されているが、総販売台数は800台に満たなかった。Mazda Road Pacer AP Type RA13S(1975)

石川県は小松市にある日本自動車博物館に収蔵展示されているロードペーサー。ボディカラーがシックなブラックというのはセンチュリーやプレジデントをライバルとする狙いには相応しいボディカラーだろう。ただ、センチュリーやプレジデントと違い、こちらはショーファードリブンではなく、あくまでもドライバーズカーだった。

Mazda Roadpacer AP 4-door Limousine Type RA13S(1975)

一方、マツダ・クラシックカー博物館フライに収蔵展示されていたのは白いボディカラーのロードペーサーAP。自分で運転するパーソナルユースなら、ボディカラーは黒よりも白。これは昔からの定番で、トヨタがクラウンに2ドアハードトップを初めて導入、フリートユースだけでなくパーソナルユースも訴求していこうと、ナイスミドルと呼ぶに相応しい山村総さんをCMキャラクターに“白いクラウン”をアピールしていたことが思い出される。ちなみに、日本国内では単にロードペーサーと命名されていたが、ヨーロッパでは、公害対策(=排気ガス浄化)を徹底したモデル、ということをセールスポイントとし、ロードペーサーAPとなっていたようだ。

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