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ヤマハ セロー225 「セルが付いたら、売れた」第2世代、車名にWが付いた第3世代、その特徴を解説(1989~1997年)

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ヤマハ セロー225 「セルが付いたら、売れた」第2世代、車名にWが付いた第3世代、その特徴を解説(1989~1997年)

ヤマハ セロー225【第2世代】(1989~1993)「セル装備でフレンドリーさを向上」

オンロードのみならず、オフロードモデルの分野にも高性能化の波が押し寄せていた1980年代。ぼどよい性能と軽量コンパクトな車格で、トコトコと進めるオフトレールモデルとして市場に投入されたヤマハ セロー225。

【画像11点】ヤマハ セロー225「セル付きになった第2世代」「リヤディスクブレーキになった第3世代」を写真で解説

今日の知名度からすると意外かもしれないが、1985年の初代発売後しばらく、セローは決して人気モデルと言えなかった。
だが、セルスターターを装備するなど実用性を高めていった第2世代以降(1989年~)、多くライダーから支持されるようになっていく。キャッチフレーズにもなった「マウンテントレール」(山道でのトレッキングが楽しいモデルに由来)のみならず、コミューターとしてもツーリングの相棒としても人気を得ていったのだ。

セローの歴史の中で最初の大変革が行われたのが、1989年8月発売の3RW1だった。先代では軽量化のためにセルを省いていたのだが、ここで初めてセルスターターを装備。
だれもがより気軽に扱えるモデルとして進化を遂げたのである。懸案だった重量の増加は乾燥で4kg増に抑えられており、セローらしい軽さは維持できていると言えよう。

セルの有用性は多岐にわたった。キックが苦手な人でも楽に始動できることはもちろん、ガレ場や泥濘(でいねい)地でエンストした際の復帰、長時間の山中走行で疲労した体への負担軽減、それに、山奥で気軽にエンジンを止め静けさに耳を澄ますといった「余裕」まで生んだのだ。

セルの新装備は、セローならではの楽しみ方の幅を広げるのに大いに役立った。また、ハンドル幅を20mm詰めるなど隘路での走破性を増しながら、シートクッション厚のアップという快適性重視の変更もなされており、セローはより多くのユーザーへの訴求力を得たのである。

■エンジン
新装備のセルはクランクケース前方に配置。同時にエンジン外観は従来の黒からシルバー仕上げとされた。エキパイはステンレス製となり耐久性がアップ。諸元上の性能は変わらないが、BST34キャブのセッティングも小変更されている(メインジェットの番手が#120から#122.5に)。

■実用装備
フューエルタンク容量は7.6Lから8.8Lへと1.2L増量。これはツーリング時の航続距離をより確保するためで、初代以上に多様な使い方に対応するモデルに仕上がったと言える。またセル装備に伴うバッテリー容量の増加(3Ah→6Ah)にもかかわらず、部品配置の適正化により車体幅の増加は抑えられた。

■メーター
シンプルなメーターまわりのレイアウトはほぼ先代を踏襲しているが、速度警告灯は廃止されている。従来キャブレター横にあったチョークノブは、操作性に優れる手元式に変更。キャブまでつながるワイヤを介し作動させる。

ヤマハ セロー225(1989年)主要諸元

■エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒2バルブ ボア・ストローク70.0×58.0mm 総排気量223cc 圧縮比9.5  燃料供給装置BST34キャブレター 点火方式CDI 始動方式セル

■性能 最高出力20ps/8000rpm 最大トルク1.9kgm/7000rpm 燃費60km/L(50km/h)

■変速機 6段リターン 変速比 1速3.090 2速2.000  3速1.428  4速1.125  5速0.925  6速0.793 一次減速比3.318 二次減速比3.000

■寸法・重量 全長2070 全幅800 全高1160 軸距1350 最低地上高285 シート高810(各mm) キャスター26°30′ トレール102mm タイヤサイズF2.75-21 R120/80-18 乾燥重量106kg

■容量 燃料タンク8.8L オイル1.3L

■車体色 赤、緑、青

■発売当時価格 33万9000円

ヤマハ セロー225W【第3世代】(1993~1997)「リヤディスクブレーキ新採用で完成の域に」

1993年6月発売の「セロー225W」(型式4JG1)は、シリーズ初のリヤディスクブレーキを装備したモデルだ。しばらくはドラム仕様の「3RW5」も2万円安で併売されたが、中身のみ熟成したと言える仕様で、販売期間は1993年6月から1年あまりだった。
第3世代から車名に「W」が加わったセロー225W。その理由は、Wilderness(森林地帯)、Woods ridingといったコンセプトワードに由来するとの説もあるが、この世代に入るのはマイナーチェンジを含め6モデルに上る。

その特徴としては、リヤブレーキの改良だけでなく、同時に別体サブタンク付きリヤサスペンションが採用され、ヘッドライトの光量アップのほか、ステアリングステムのアンダーブラケットが黒塗りのスチール製からバフがけ仕上げのアルミ製に変更されている。
こうした仕様変更は操作性、安全性、商品性を総合して高めるもので、特にセロー専用に調整されたリヤディスクブレーキは市場の評価も高かった。従来のドラムブレーキは構造が簡単でコスト的にも有利だったが、低ミュー路ではロックしやすいとの指摘もあり、そうした難点がリヤディスク仕様では見事に払拭されていた。

また、リザーバータンク別体型のリヤサスペンションはより高い作動性を実現し、コントローラブルなリヤディスクと相まって、不整地でも舗装路でも、トレッキングでもツーリングでもさらに使い勝手が向上した。
これら変更により価格こそ若干上がってしまったが、コンパクトで軽い車体と足つき性のよさ、つまり「セローらしさ」はまったく失われていなかったのである。

■リヤディスクブレーキ
セローとして初めて装備したリヤディスクブレーキは、ロード用の単純な転用ではなかった。ディスクローターは175mm径と小径で、絶対的な制動力よりもソフトなタッチを重視したセッティングであり、山道などの低ミュー路で、そっと踏んで速度調整をする際に絶大な威力を発揮した。

ほかにこの世代では、フロントの足まわりも熟成が図られ、フォークスライドメタル変更による作動性向上、ブレーキパッド材質の見直しによるタッチ向上、上部ステムベアリングのアンギュラタイプへの変更による操作性向上などが行われている。

■実用装備
安全性をより高める装備として、ヘッドライト光量を従来の30W/30Wから大型車並みの60W/55W仕様に変更。明るさの大幅な向上を果たした。しかし、こうしたユーザーフレンドリーな仕様変更が重ねられつつも、初代から受け継ぐステム下部のハンドルスタンディングが廃止されることはなかった。

ヤマハ セロー225W(1993年)主要諸元

■エンジン 空冷4サイクルOHC単気筒2バルブ ボア・ストローク70.0×58.0mm 排気量223c  圧縮比9.5 燃料供給装置BST34キャブレター  点火方式CDI 始動方式セル

■性能 最高出力20ps/8000rpm 最大トルク1.9kgm/7000rpm 最小回転半径1.9m 燃料消費率54km/L(60km/h)

■変速機 6段リターン 変速比 1速3.090 2速2.000 3速1.428 4速1.125 5速0.925 6速0.793 一次減速比3.318 二次減速比3.00

■寸法・重量 全長2070 全幅800 全高1160 軸距1350 最低地上高285 シート高810(各mm) キャスター26°30′ トレール102mm タイヤサイズF2.75-21 R120/80-18 乾燥重量106kg

■容量 燃料タンク8.8L オイル1.3L

■車体色 紫、緑、ピンク

■発売当時価格36万9000円

レポート●神山雅道 写真●八重洲出版/ヤマハ 編集●阪本一史

*当記事は『別冊モーターサイクリスト2010年8月号』の特集「ヤマハ・セローの持続可能性」の一部を編集・再構成したものです。

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みんなのコメント

4件
  • hab********
    当時はオフ車は軽さを追求するためにキックスタートが当たり前だったが、難所でのエンストからの再始動にセルはとっても便利。バッテリーの軽量化などもあって、今ではオフロード競技車両でもセル装備が当たり前になった。
    そういう意味では、セローへのセルスタート導入は「偉大な一歩」と言える。
  • ***abc***
    特に女性人気ですね。オフ車のなかでも脚付き性が良きコンパクトな車体と相まって。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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