現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ホンダの意地と技術を証明したモデル! 90年代に誕生したホンダの高級セダン「ビガー」とは

ここから本文です

ホンダの意地と技術を証明したモデル! 90年代に誕生したホンダの高級セダン「ビガー」とは

掲載 25
ホンダの意地と技術を証明したモデル! 90年代に誕生したホンダの高級セダン「ビガー」とは

人に愛される車づくりとは

 ホンダは古くから「マンマキシマム・メカミニマム思想」を社是のようにして、人に愛されるくるまを作り続けてきました。

【画像】「えっ…!」これがバブル期に誕生したスタイリッシュセダン ホンダ「ビガー」です(10枚)

”人間の空間は広く、機械は小さく”

 ホンダのクルマは比較的コンパクトでありながら、居住空間がことさら広く感じるのは、この思想が貫かれていたからでしょう。

 そのため、駆動方式はFF(フロントエンジン+フロントドライブ)にこだわり続けてきました。クルマの中で最大の重量物であるエンジンを前方の隅に配置することは、室内空間を確保するのに都合がいいからです。

 エンジンが発する出力を後輪に導くには、プロペラシャフトを通すためにフロアトンネルを持ち上げる必要がありますが、FF駆動であれば床の盛り上がりは、マフラーや配線系を通すだけですから最小限に抑えられます。それにより、後席の足元に余裕が生まれるのです。

 NSXやS2000のようなスポーツカーは例外ですが、コンパクトモデルから高級セダンまで、FF駆動方式が基本とされてきたのはそれが理由です。現代の4WDモデルもFF駆動方式の派生系になります。

 ただし、FF駆動にはデメリットもあります。高級な走り味を生み出しづらいのです。

 けして軽くないエンジンを前方の隅に追いやった結果、前後重量配分が悪化します。操縦性の悪化を招きます。

 エンジンを横置きにするということは、エンジンの長さを制限することにもなります。直列6気筒やV型8気筒のような高級車に相応しいエンジンを積むのに、横置きではスペースが不足します。ボディの横幅を越えるわけにはいかないからです。

 結果的に、直列エンジンであれば、4気筒以下の幅の狭いエンジに限られます。V型6気筒エンジンがまだポピュラーではない時代でした。コントパクトモデルならば割り切れるとはいえ、上質なドライビングフィールが期待される高級車にとっては、やや致命的なシステムでもあるのです。

 そのストレスから解放するために、ホンダは特殊なシステムを開発しました。ホンダ最大の高級セダン「ビガー」のために、直列5気筒エンジンを開発したのです。そしてその直列5気筒エンジンを縦に積んだのです。

 となればFR駆動とするのが常識ですが、ビガーはFFのままです。

常識を覆したホンダの技術陣

 ホンダ技術陣は知恵を絞ります。直列5気筒エンジンを縦積みにするのではあれば、動力をそのままプロペラシャフトで後輪に導くのが自然ですが、マンマキシマム・メカミニマム思想を貫くためには、FF駆動方式にこだわりたい。

 ただそれでは、フロントタイヤを前輪に導くドライブシャフトがエンジンと干渉してしまう。奇策に挑みました。エンジンのフロアパンに穴を開けてドライブシャフトを貫通させたのです。それであれば、エンジンを低く搭載したままFF駆動が成立するというわけです。

 いやはや、驚くほど突飛なアイデアであり、感心するほど高度な技術力がなければ成立させることはできなかったでしょう。1992年のことです。

 それでも残念ながら、ビガーは商業的には成功しませんでした。ライバルであるトヨタ・マークII三兄弟や日産スカイライン/ローレルなどの牙城を崩せなかったのです。それをマンマキシマム・メカミニマム思想へのこだわりが邪魔をしたとするのは酷ですが、もっとシンブルにFR駆動にしていれば、あるいは成功していたかもしれません。

 現在ホンダは高級車をラインナップしていないのは、ビガーの不成功が亡霊のように立ちふさがっているように思えてなりません。

 ともあれ、直列5気筒エンジンを縦積みしてシャフトを貫通させたことで、ホンダの熱い開発魂と技術力を誇示することには成功したと思います。

 直列5気筒ビガーの誕生は1992年です。バブル経済があったから誕生した、まさに泡のように消えた幻の高級車とも言えそうですね。

 ホンダの意地と技術を証明するモデルとして歴史に刻まれています。

◾️ホンダ「VIGOR 25S」

<エンジン>形式:G25A種類:水冷直列5気筒縦置使用燃料:無鉛プレミアムガソリン総排気量(cc):2451圧縮比:8.3最高出力(ps/rpm):190/6500最大トルク(kgm/rpm):24.2/3800燃料供給装置:電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI)燃料タンク容量(リットル):65<寸法・定員>全長(mm):4830全幅(mm):1775全高(mm):1375ホイールベース(mm):2805乗車定員(名):5

こんな記事も読まれています

今の時代だからこそ心穏やかにトコトコと走りたい! レトロな雰囲気に包まれた日産「FIGARO(フィガロ)」とは
今の時代だからこそ心穏やかにトコトコと走りたい! レトロな雰囲気に包まれた日産「FIGARO(フィガロ)」とは
バイクのニュース
トラッカーカスタムの神バイク!! ホンダ「FTR250」は本物志向のドリフトバイクだった
トラッカーカスタムの神バイク!! ホンダ「FTR250」は本物志向のドリフトバイクだった
バイクのニュース
3代目[プレリュード]人気爆発に納得!! 何故か3代目がハンパなく良かった国産車たち
3代目[プレリュード]人気爆発に納得!! 何故か3代目がハンパなく良かった国産車たち
ベストカーWeb
実は知らない?バイクの基本構造のおさらい
実は知らない?バイクの基本構造のおさらい
バイクのニュース
スズキの兄弟車「GSX-8S」と「GSX-8R」 デビュー間もないけど、すでに永久保存版な予感
スズキの兄弟車「GSX-8S」と「GSX-8R」 デビュー間もないけど、すでに永久保存版な予感
バイクのニュース
ホンダ・ステップワゴンってどんなクルマ? 詳しく解説!
ホンダ・ステップワゴンってどんなクルマ? 詳しく解説!
WEB CARTOP
そんなクルマあったっけ……なインテグラのご先祖! 1代で姿を消した不人気5ドアハッチ「クイント」とは
そんなクルマあったっけ……なインテグラのご先祖! 1代で姿を消した不人気5ドアハッチ「クイント」とは
WEB CARTOP
イジりすぎてもはや原型がわからん! [フルモデルチェンジ]が凶と出た!! やらかしカー4選
イジりすぎてもはや原型がわからん! [フルモデルチェンジ]が凶と出た!! やらかしカー4選
ベストカーWeb
ホンダNR[名車バイクレビュー] 時代を切り拓いた革新のエポックマシン【楕円ピストン&500万円超】
ホンダNR[名車バイクレビュー] 時代を切り拓いた革新のエポックマシン【楕円ピストン&500万円超】
WEBヤングマシン
マツダの「2シータースポーツカー」何が魅力? めちゃ楽しいMT搭載&軽量オープンがスゴい! 登場35年も変わらない「楽しさ」とは
マツダの「2シータースポーツカー」何が魅力? めちゃ楽しいMT搭載&軽量オープンがスゴい! 登場35年も変わらない「楽しさ」とは
くるまのニュース
不遇のイメージが色濃いR33スカイラインだが乗っていて楽しかったゾ! 所有していたからこそわかった[走り]の真実
不遇のイメージが色濃いR33スカイラインだが乗っていて楽しかったゾ! 所有していたからこそわかった[走り]の真実
ベストカーWeb
【GT500技術レビュー/ホンダ編】シビックだから採用できた“非対称”なチャレンジ精神
【GT500技術レビュー/ホンダ編】シビックだから採用できた“非対称”なチャレンジ精神
AUTOSPORT web
オヤジは知っている!! トラックだけじゃないんだよ!! [いすゞ]って実は名車の宝箱だった!
オヤジは知っている!! トラックだけじゃないんだよ!! [いすゞ]って実は名車の宝箱だった!
ベストカーWeb
ホンダの上級セダン「インスパイア」復活!? 全長5m級&縦型グリルで迫力スゴイ! アコードと違う印象は? 中国で試乗
ホンダの上級セダン「インスパイア」復活!? 全長5m級&縦型グリルで迫力スゴイ! アコードと違う印象は? 中国で試乗
くるまのニュース
伝説の「和製スーパーSUV」まさかの市販化!? 斬新“未来すぎ”「2ドアモデル」! まさかのいすゞ“オシャマシン”「ビークロス」とは
伝説の「和製スーパーSUV」まさかの市販化!? 斬新“未来すぎ”「2ドアモデル」! まさかのいすゞ“オシャマシン”「ビークロス」とは
くるまのニュース
ホンダ「次期型オデッセイ」どうなる!? “大胆”刷新で近未来デザインに? 「高級ミニバン」次なる進化とは
ホンダ「次期型オデッセイ」どうなる!? “大胆”刷新で近未来デザインに? 「高級ミニバン」次なる進化とは
くるまのニュース
1990年代の珍技術3選
1990年代の珍技術3選
GQ JAPAN
“縦目のベンツ” 初代コンパクトシリーズのメルセデス・ベンツW114/115(1968~1976年)
“縦目のベンツ” 初代コンパクトシリーズのメルセデス・ベンツW114/115(1968~1976年)
AutoBild Japan

みんなのコメント

25件
  • kak********
    5気筒2Lのビガーは、1989年に出てましたよね。
    1992年は2.5Lが出た年です。
    ビガーはそこそこでしたが、姉妹車のアコードインスパイアは、かなり売れたと思います。
  • ayu********
    >ビガーは商業的には成功しませんでした。

    本文の説明よりも、インスパイアの影に隠れた感があったからな。アコードに対するトルネオみたいな印象だったけど。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村