毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ エアウェイブ(2005-2010)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/HONDA
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■カローラフィールダー ウイングロードに対抗し登場したホンダのSワゴン
2000年代前半、トヨタ カローラフィールダーや日産 ウイングロードに相当するサイズのステーションワゴンを持っていなかったホンダが、それらに対抗すべく初代フィットのプラットフォームを使って作り上げた5ナンバーサイズのステーションワゴン。
さまざまな美点はあったものの、折からのステーションワゴンブーム終焉の影響を受けて販売は低迷し、1代限りで終了に。
だがその基本コンセプトは車名を変えた後継に受け継がれ、後継となったモデルは、今なお地味に売れ続けている。
それが、今回ご紹介する「ホンダ エアウェイブ」です。
ホンダ エアウェイブは2005年4月、初代ホンダ フィットの車台をベースとする小型ステーションワゴンとして発売されました。
ホンダ エアウェイブ。2002年まで販売されたオルティアの実質的後継車として送り出された。その名前には、空気の流れ(風)が感じられる洗練されたスタイルで、明るく、広く、開放感あふれる室内空間を持ち、自然との一体感を創造する爽快感あふれるクルマ、という意味が込められた
燃料タンクを車体中央に配置する「センタータンクレイアウト」により低床設計を実現した初代フィットのホイールベースを100mm延長し、ボディサイズは全長4350mm×全幅1695mm×全高1515mmに。
これはライバルだった当時のカローラ フィールダーとほぼ同等の寸法ですが、エアウェイブはウェッジシェイプ(くさび形)のボディと、センタータンクレイアウトによる広い室内空間が大きな特徴でした。
ホンダによるセンタータンクレイアウトの説明図。広大で快適な居住空間と大容量・473Lの低床ラゲッジスペースを実現している
室内長は1930mmと長く、室内高も1250mmと十分以上。そこに座り心地の良い大ぶりなシートを合わせ、さらには「スカイルーフ」という大面積のガラスルーフを設定しました。
天井全面に広がったスカイルーフ
スカイルーフはプライバシーガラスと高熱線吸収UVカットガラスを組み合わせた超大型ガラスサンルーフで、3分割構造の電動シェードと合わせて多彩なアレンジが可能でした。
ホンダ エアウェイブは荷室が非常に広いことも特徴です。
ダイブダウン機構が組み込まれた6:4分割の後席を、ヘッドレストを外さないまま前に倒せば、荷室長1810mmの低床でフラットな空間が生まれたのです。
フロントシートとリアシートのヒップポイントの間の距離は試行錯誤の末、985mmに設定されている
搭載エンジンは最高出力110psの1.5L直4SOHCで、トランスミッションはCVT。
こう書くと「凡庸なスペック」に聞こえるかもしれませんが、実際のエアウェイブの走りはなかなかパワフルで、フットワーク的にもまずまず優秀な一台でした。
そんなホンダ エアウェイブはほぼ1年に1回の頻度で一部改良を行い、2008年にはマイナーチェンジも行いましたが、販売成績としては「低空飛行」が続きました。
そのためホンダは2010年8月にエアウェイブの生産と販売を終了。
そして、時をおいて翌2011年6月に登場したフィット シャトル(その後のシャトル)が、エアウェイブの事実上の後継モデルになりました。
■「5ナンバーステーションワゴンとしては」十二分すぎるほどの実力だったが
ある意味「偉大な5ナンバーステーションワゴン」ではあったはずのホンダ エアウェイブが、鳴かず飛ばずの1代限りで終わってしまった理由。
それは、直接的にはステーションワゴンブームの終焉=ミニバンの台頭というのがまずはあったでしょう。
同じようなお金を出して自家用車を買うのであれば、微妙なサイズ感のステーションワゴンだったエアウェイブではなく、ミニバンであるホンダ フリードか、または他社の5ナンバーミニバンにしたい――と考える人が多かったのが、エアウェイブが特に失速した2000年代後半の時代感でした。
もしくは「もっと小さくて安い、しかし新型になった2代目のフィットで十分だ」と思ったユーザーも多かったかもしれません。
リアビュー。本文で後述されるように多少ずんぐり感のあるフィルムながら、テールゲートガーニッシュとリアコンビランプの上部レンズが一直線に見えるデザインを採用しワイド感を強調するなど、スポーティな外観を目指している
またエアウェイブは「価格」も、少し高かった可能性はあります。
もっともベーシックな「G」は車両価格150万円ほどで買えましたが、せっかくこの車を買うなら「スカイルーフ」は付けたいところです。
で、スカイルーフ付きの上級グレードである「L スカイルーフ」は車両価格約175万円。
そこにカーナビやらアルミホイールやらを足していくと、普通に210万円を超えるプライスになりました。
このあたりも、当時の5ナンバーサイズ車としては販売面で苦しくなる要因のひとつだったでしょう。
しかし、そんなこんなでエアウェイブは消滅したわけですが、その志は消滅していません。
エアウェイブの志とは――これは筆者の勝手な推測ですが――多少ずんぐりとしたフォルムになってでも、広い車内と荷室であることを重視し、同時に、気持ちの良い走行フィールを持つ車であることも重視することで、「人々の暮らしのための車」として貢献することです。
その志は――車名は変わりましたし、スカイルーフもなくなりましたが、そして爆発的に売れているわけでは決してないのですが、今なお地味に売れ続けている「ホンダ シャトル」に、確実に引き継がれているように思えます。
ホンダ シャトル。2011年6月登場のフィットシャトルから、2015年5月のフルモデルチェンジの際に車名を変え現行型(2021年6月現在)となった
■ホンダ エアウェイブ主要諸元
・全長×全幅×全高:4350mm×1695mm×1515mm
・ホイールベース:2550mm
・車重:1190kg
・エンジン:直列4気筒SOHC、1496cc
・最高出力:110ps/5800rpm
・最大トルク:14.6kgm/400rpm
・燃費:18.0km/L(10・15モード)
・価格:175万3500円(2005年式 L スカイルーフ FF)
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ライトバンのパートナーはこの代をもって廃止されたが・・・。