現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 2018年は目の前!どうするZEV規制 PHEVが続々と誕生する理由

ここから本文です

2018年は目の前!どうするZEV規制 PHEVが続々と誕生する理由

掲載 更新
2018年は目の前!どうするZEV規制 PHEVが続々と誕生する理由

これまでハイブリッド車は燃費性能に優れ、環境技術の決定版と位置付けられており、日本市場の中では大きな存在感を見せている。しかしヨーロッパではそれほどハイブリッド車が重視されず、ディーゼル・エンジン、PHEVが主流になっている。

その一方で、ニッサン、ルノーが主導する電気自動車(EV)の推進や、トヨタ、ホンダが市販化した燃料電池車(FCV)が究極のエコカーとする動きも出てきた。が、ここ1、2年でドイツ車メーカーから相次いでPHEV車が登場し、新たな潮流を作りつつある。

日本ではミツビシがいち早くアウトランダーPHEVを発売し、トヨタもプリウスPHVを販売するなど、PHEV車でも世界をリードしたと言える。しかし、ドイツ車メーカーは、単一の車種ではなく、次々に既存の車種にPHEVモデルを追加・拡大する戦略を採用している。日本車メーカーではミツビシ以外ではまだこのような次世代戦略が見えてこない。この温度差はどこに起因しているのだろうか。

■アメリカのZEV規制
アメリカのカリフォルニア州の大気資源局(CARB:California Air Resources Board)は1990年代からZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスを出さないクルマ)の構想を進めてきている。これは、カリフォルニア州は公共交通が乏しく究極のクルマ社会であり、クルマが多いことと地形的な特徴から大気が全米で最悪といわれている。大気汚染は深刻な大問題と考え、アメリカ政府よりはるかに厳しい排気ガス規制を模索する背景となっているのだ。

そうした状況の中、1990年9月にカリフォルニア州法により低公害車導入プログラムLEV(Low Emission Vehicle Regulations)を制定し、従来の規制値を強化するだけでなく、低公害車の販売を義務付けた。しかし、その後は排ガス・ゼロを目標に自動車メーカーへの義務付けを段階的に強化している。

当初はGMを筆頭に自動車メーカーは実現不可能と反対したが、GMの破産以後はそうした反対の機運は弱まり、ZEV規制は本格的に動き出した。ZEVの目標は2050年頃には、文字通りすべてのクルマが排ガス・ゼロの電気自動車か、あるいは燃料電池車にすることが目標とされている。

ZEV規制は、州内で決められたある台数以上の自動車を販売するメーカーは、その販売台数の一定比率をZEV規制に対応しなければならないとした。ただし、電気自動車や燃料電池車のみで規制をクリアすることは難しいため、プラグインハイブリッドカー、ハイブリッドカー、天然ガス車など、排ガスが極めてクリーンな車両を組み入れることも許容されている。

2012年時点では、カリフォルニア州で年間6万台以上販売するメーカー6社(GM、フォード、クライスラー、ホンダ、ニッサン、トヨタ)がZEV規制の対象であった。ところが2018年型以降、販売台数が中規模のメーカー(BMW、メルセデス・ベンツ、現代・起亜、マツダ、フォルクスワーゲン、スバル、ランドローバー、ボルボなど)にもZEV規制が適用されることになったのだ。

これが「ZEV 2018年問題」である。実は、カリフォルニア州が決めたZEV規制は、アリゾナ、コネチカット、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ニューヨーク、ロードアイランド、バーモントの各州にも適用され、この問題をクリアしない限りアメリカにおける自動車販売は危機的な状況を迎えることになる。

■ZEV規制をクリアするには
こうした中、各メーカーの総販売台数の一定数をZEV規制対応車とすることでクレジット(実績係数)が得られるという方策がある。仮に目標のクレジットが不足すると、CARBに罰金を支払うか、クレジットに余裕を持つ他メーカーから購入する必要があり、いずれにしてもZEV規制を達成できない自動車メーカーは大きな負担を強いられることになるのだ。

すでに、GM、ホンダを筆頭にEVメーカーのテスラ、ニッサンからクレジットを購入しているといわれ、テスラは2013年前半だけでクレジット売却利益は140億円を得たと公表している。

また2018年以前のZEV規制では、ハイブリッド車、天然ガス車、低燃費ガソリン車もZEV対応車と認められていたが、2018年以降はこれらを認めず、EV、FCV、PHEVに限定されることになったのだ。したがって、ZEV規制の対象となる自動車メーカーはEV、FCV、PHEVのいずれかを開発しなければならない。しかし、自動車メーカーとしては、こうしたZEV対応車を作っても、一定数の販売が見込めなければ本来の目的が達成できないのだ。つまり総販売台数に対する比率が上がらなければZEV対応したことにはならない。結果、売れなければ意味がないことになるのだ。

2018年は目の前。しかし、EV電気自動車やFCV燃料電池車がある程度の数の販売台数を稼ぐことは現実的ではないのは理解できる。ところが、EV、FCV、PHEVともに排ガス・ゼロの走行距離に基づいてクレジットを算定するので、PHEVでもバッテリー容量を十分確保できればよいということになる。もちろん、EV、FCVは有利なのはいうまでもないが。

現状ではEVはバッテリー価格、航続距離で課題があり、FCVは車両価格、水素供給インフラに課題がある。そのため、いくらカリフォルニアといえども一般ユーザーは購入しにくい。だが、PHEVであれば俄然、現実味を帯びているというわけだ。

■ヨーロッパのCO2規制
一方、ヨーロッパでは、自動車メーカーの企業平均(その自動車メーカーで販売している全部のクルマの加重平均値)となるCO2排出量規制は、2020年には95g/kmとする規制が始まる。この規制は当然ながら大排気量車を多くラインアップしているプレミアム・メーカーには厳しくなる。もちろんヨーロッパの使用環境では、EVは価格と航続距離、FCVは車両価格と水素インフラの課題があるため、ここでもPHEVの必然性が大きくなってくる。

さらに、ヨーロッパのCO2排出量規制では、PHEVの排出ガス=燃費計算には「ECE R101」と呼ばれる計算式が適用され、充電された電力での走行(充電電力の発電時のCO2はゼロと計算し、排出ガス・ゼロとする)、ハイブリッド走行でのCO2排出量、エンジンのみでのCO2排出量(走行距離25kmに限定)を前提とした計算式=25km+EV走行距離/25kmでトータルのCO2排出量を算定するしくみだ。この計算式で25kmという距離はヨーロッパの都市圏での平均的な走行距離を根拠にしている。

例えばこの計算式によると、メルセデス・ベンツS500(435ps/V8型エンジン)の燃費は12.9km/L、CO2排出量は210g/kmだが、S500 PHEV(333ps/V6+80kWモーター)では30kmのEV走行ができる。ハイブリッド走行化によりCO2排出量は約73%程度にまで削減でき、これをPHEVによる削減係数値で割ると、燃費は3.0L/100km、CO2排出量は69g/kmと計算され、CO2排出量は66%低減できるとされるのだ。

■PHEVが増える理由
しかもベース車へのPHEV導入コストは専用開発が求められるEV、FCVの開発より圧倒的に安く、小型車カテゴリーにおける48Vマイルドハイブリッド・システムと並んで、最もコストパフォーマンスが優れていると考えられるのだ。一方で、当初はEVほどではないにしてもリチウムイオン電池の供給の問題が存在もしている。

それは、ミツビシ・アウトランダーは自社のEV電池技術をベースにいち早く実用化できたのだが、それ以外のカーメーカーはリチウムイオン電池の確保が大きなハードルになっているのだ。ところが現在では、主として韓国のLGやサムソンから安くリチウムイオンバッテリーが得られることができるようになりPHEVの実用化が加速しているわけだ。

またヨーロッパのメーカーはこれまでディーゼル・エンジンによりCO2排出量削減を指向していたが、RWE(公道での実排気ガス計測法)の導入の気配や、近い将来に導入されると予想されるPM2.5規制を考慮すると、今後は電気駆動のEV車とガソリン・エンジンによるPHEVが有力と考えられる。こうした背景によりPHEVモデルが続々と登場しているというわけなのだ。

このようにアメリカでのZEV規制、ヨーロッパでの企業平均CO2排出量規制を両立させるには、大排気量モデルが多いドイツのプレミアムカー・メーカーはPHEVの一択しかないのである。これがPHEVに集中しているトレンドの背景となっている。


この記事を画像付きで読む(外部サイト)

文:Auto Prove
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

今夏は海?それとも山? アクティブな夏にぴったりな輸入車5選
今夏は海?それとも山? アクティブな夏にぴったりな輸入車5選
グーネット
トラブルさえなければ……レッドブル角田裕毅、まさかのパワーロスで予選Q3進出逃し怒りあらわ「ラップ自体はかなり良かった」
トラブルさえなければ……レッドブル角田裕毅、まさかのパワーロスで予選Q3進出逃し怒りあらわ「ラップ自体はかなり良かった」
motorsport.com 日本版
4度F1王者の名は伊達じゃない! レッドブル苦戦もフェルスタッペン最速でポールポジション獲得。角田裕毅12番手|イギリスGP予選
4度F1王者の名は伊達じゃない! レッドブル苦戦もフェルスタッペン最速でポールポジション獲得。角田裕毅12番手|イギリスGP予選
motorsport.com 日本版
フェルスタッペンが6戦ぶりのPP獲得。角田裕毅はQ3進出に0.115秒届かず【予選レポート/F1第12戦イギリスGP】
フェルスタッペンが6戦ぶりのPP獲得。角田裕毅はQ3進出に0.115秒届かず【予選レポート/F1第12戦イギリスGP】
AUTOSPORT web
F1イギリスGP予選速報|フェルスタッペン、英国のファンの夢打ち砕くPP獲得。角田裕毅は12番手でQ3に進めず
F1イギリスGP予選速報|フェルスタッペン、英国のファンの夢打ち砕くPP獲得。角田裕毅は12番手でQ3に進めず
motorsport.com 日本版
プリウス インプレッサスポーツなど強豪並み居るなかアクセラスポーツが首位奪取!!! 全長4000mm以上の5ドアハッチバックモデルランキング2014【ベストカーアーカイブス】
プリウス インプレッサスポーツなど強豪並み居るなかアクセラスポーツが首位奪取!!! 全長4000mm以上の5ドアハッチバックモデルランキング2014【ベストカーアーカイブス】
ベストカーWeb
フォルナローリがF2初優勝……昨年F3未勝利でチャンピオンに輝いた男が、ついに勝った。宮田莉朋は20位|FIA F2シルバーストン・スプリントレース
フォルナローリがF2初優勝……昨年F3未勝利でチャンピオンに輝いた男が、ついに勝った。宮田莉朋は20位|FIA F2シルバーストン・スプリントレース
motorsport.com 日本版
フォルナローリがFIA F2初優勝。FIA F3未勝利王者が4年ぶりのトップチェッカー/第8戦レース1
フォルナローリがFIA F2初優勝。FIA F3未勝利王者が4年ぶりのトップチェッカー/第8戦レース1
AUTOSPORT web
新「エントリーコンパクトモデル」続々登場! 豪華「高級レザー内装」דスポーティ”デザインを採用! メルセデス・ベンツ「A/CLA/GLA」に「アーバンスターズ」モデル追加
新「エントリーコンパクトモデル」続々登場! 豪華「高級レザー内装」דスポーティ”デザインを採用! メルセデス・ベンツ「A/CLA/GLA」に「アーバンスターズ」モデル追加
くるまのニュース
ミッドナイトブルーの衝撃! 「美しき青と1/10秒の精密さ」が共鳴するゼニス新作の革新性とは
ミッドナイトブルーの衝撃! 「美しき青と1/10秒の精密さ」が共鳴するゼニス新作の革新性とは
VAGUE
破格すぎる50万円から狙える!! 中古のマツダ アテンザワゴンがディーゼル搭載で良いぞ! 狙い目の価格帯はどこ?
破格すぎる50万円から狙える!! 中古のマツダ アテンザワゴンがディーゼル搭載で良いぞ! 狙い目の価格帯はどこ?
ベストカーWeb
「THE TOKYO TOILET / SHIBUYA」が始動。写真家・森山大道による写真のインスタレーションを展示
「THE TOKYO TOILET / SHIBUYA」が始動。写真家・森山大道による写真のインスタレーションを展示
GQ JAPAN
ホント? 「バウルーで焼けば何でも美味しくなる」(ヒロシ) キャンプツーリングでいろいろ焼きまくってみた!!
ホント? 「バウルーで焼けば何でも美味しくなる」(ヒロシ) キャンプツーリングでいろいろ焼きまくってみた!!
バイクのニュース
550馬力の「“新”ステーションワゴン M3 CS」発表! 専用「カーボン」採用ボディ×強化サスペンション装備! 時速100km加速「3.5秒」のBMW新モデル発売
550馬力の「“新”ステーションワゴン M3 CS」発表! 専用「カーボン」採用ボディ×強化サスペンション装備! 時速100km加速「3.5秒」のBMW新モデル発売
くるまのニュース
人気の大型アドベンチャーバイク ホンダ「XL750トランザルプ」2025年モデルが新登場 納期はどれくらい? 販売店に寄せられる反響とは
人気の大型アドベンチャーバイク ホンダ「XL750トランザルプ」2025年モデルが新登場 納期はどれくらい? 販売店に寄せられる反響とは
VAGUE
角田裕毅が5番手……浮上のきっかけは掴めたか? 最速はルクレール。終盤赤旗2回の波乱のセッションに|F1イギリスGPフリー走行3回目詳報
角田裕毅が5番手……浮上のきっかけは掴めたか? 最速はルクレール。終盤赤旗2回の波乱のセッションに|F1イギリスGPフリー走行3回目詳報
motorsport.com 日本版
いまバーカウンターにプライベート空間までもつ「超豪華バス」が大人気! 価格で勝負しない戦略がヒットの要因
いまバーカウンターにプライベート空間までもつ「超豪華バス」が大人気! 価格で勝負しない戦略がヒットの要因
WEB CARTOP
グーマガ 今週のダイジェスト【6/28~7/4】あの「グランディス」が復活!
グーマガ 今週のダイジェスト【6/28~7/4】あの「グランディス」が復活!
グーネット

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677 . 3万円 698 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

498 . 0万円 880 . 0万円

中古車を検索
ロータス ヨーロッパの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677 . 3万円 698 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

498 . 0万円 880 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村