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元に戻せる電動化キット エレクトロジェニック・ポルシェ911 964へ試乗 充足感は低くない 後編

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元に戻せる電動化キット エレクトロジェニック・ポルシェ911 964へ試乗 充足感は低くない 後編

運転で得られる感覚的な充足感は高い

電気自動車へコンバージョンされた、エレクトロジェニックのポルシェ911 964。案の定、クラシックな空冷911ならではといえる、個性や魂といった側面は失われていた。それでも、運転が退屈なわけではない。

【画像】元に戻せる電動化キット エレクトロジェニック・ポルシェ911 BEV化事例は他にも 全133枚

マニュアル・トランスミッションが存在しないことで、クルマとの一体感や操作している実感は薄まっている。セレクタースイッチをDに回し、アクセルペダルを踏むだけで勢いよく加速が始まる。

駆動用モーターは滑らかに回り、低回転域から不足ないパワーを生み出す。100km/h程度までの鋭さは、新しいツインモーター仕様のBEVに匹敵するだろう。それ以上の速度域になると、徐々にトルクが低下していく。

大多数のクラシック・ポルシェのオーナーは、エレクトロモッドによって運転しやすくなったと感じると思う。現実的に引き出せる速さも、上昇したと思えるはず。

そのかわり、オリジナルほどの聴覚的な喜びは得られない。手入れの行き届いた空冷ボクサー・ユニットが回転数を高める時に体感する、ドラマチックさはない。

ただし、駆動用モーターは無音ではない。エレクトロジェニック社は、あえてノイズを隠したり、人工的なエンジン音を重ねたりはしていない。電気モーターらしい唸りで、内燃エンジンと比べれば単調ながら、聴き応えがないわけではない。

運転で得られる感覚的な充足感は低くない。コミュニケーション力があって、活気に溢れていて、アナログ感がある。内燃エンジンが存在しなくても。

ステアリングや姿勢制御に明確な影響

小さな911のフロントには、約250kgの駆動用バッテリーが載っている。フロントアクスルに掛かる重量は小さくない。ステアリングホイールは重く、両腕には相応の筋力が求められる。

エレクトロジェニック社は、ステアリングコラムへ後付けできる電動パワーステアリング・キットを用意しており、試乗車にも装備されていた。それでも、アシストされていないかのように力が必要だった。

最近はクラシカルな見た目が人気で、デモ車両もワイドなフックス風ホイールを履くスタイルで仕上げられていた。この幅広いタイヤも、重さを増加させている原因の1つになっていると思う。

オリジナルから増えた120kgの車重は、そこまで大きな数字ではない。しかし、フロントが相対的に重くなったことで、タイトコーナーでグリップ力を探るような場面や、コーナーの出口で素早く修正舵を与えたい場合に、足かせになることは否めない。

写真でもご覧いただけるとおり、姿勢制御にも小さくない影響が出ている。ちなみに、スタビリティ・コントロールは備わらない。

コーナーを攻め込んでみた限り、オリジナルのシャシーが受け止めきれる重量の限界に近いように感じられた。ボディロールを制御しきれず、乗り心地も落ち着きを失う場面がある。とはいえ、日常的な速度域なら運転を楽しめるはず。

考え抜かれ費用対効果の高いキット

太いトルクを引き出しやすいだけに、リミテッドスリップ・デフが欲しい。今のところキットとして提供されていないものの、準備中だという。

路面が乾燥していても、きついコーナーからの立ち上がりで内側のリアタイヤが簡単にスピンしてしまう。濡れた路面では悩まされる可能性が高い。クラシック・ポルシェを頻繁に雨へさらすオーナーは、少ないと思うけれど。

LSDが装備されれば、エレクトロジェニック社のエレクトロモッドは完璧な仕上がりに近づく。電動化されたポルシェ911をお考えなら、望ましい内容になるのではないだろうか。フロントノーズの重さは、解決できないとしても。

BEVが町に溢れる時代が来ても、愛するポルシェで走り回れる。シャシーには一切手を加えないため、内燃エンジンへ戻せる点も評価できる。

とはいえ、筆者ならまだエレクトロモッドは見送りたい。可能な限り多くの空冷911が、オリジナル状態を維持して欲しいと考えている。合成燃料を燃やして運転できる近未来が来る可能性を信じたい。

エレクトロモッドを否定するわけではない。より電動化に適したクラシック・スポーツカーは、ほかにも沢山存在する。そして、エレクトロジェニック社のキットほど考え抜かれ、費用対効果の高い事例は多くない。

筆者にとって、空冷のフラット6はとても特別な存在だ。ポルシェの911にとって、個性を決定づける魂のようなメカニズムだと思う。ポルシェ自身が、911を電動化する時が来るとしても。

エレクトロジェニック・ポルシェ911 964(英国仕様)のスペック

英国価格:約10万ポンド(約1610万円/ベース車両別)
全長:4245mm(964)
全幅:1660mm(964)
全高:1310mm(964)
最高速度:193km/h以上
0-100km/h加速:5.0秒以下
航続距離:321km
電費:4.8km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:約1500kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:62.0kWh
急速充電能力:50kW(DC)
最高出力:218ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:シングルスピード

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みんなのコメント

2件
  • こういう古い魅力的な車をEV化するのは悪くないと思うし、内燃機関が許されない状況になれば自分も欲しいとは思う。
    ただ911って、あのキーを捻った瞬間「ボフゥーッ」って正に車が目覚める瞬間があって、運転中常にエンジンが心臓であるという感覚を楽しみながら乗る車なので、乗ってた人には寂しいかもねぇ。見た目は同じでも中身は機械の体みたいな…999の世界だね(・∀・;
  • 何もかもがデバイス制御の電気自動車に
    モーターにLSDの組合せ
    って!聞いててホッとしました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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