現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 「傾かないクルマ」音響メーカーが作った? トヨタ・セルシオで離れ業 "ジャンプ" も披露

ここから本文です

「傾かないクルマ」音響メーカーが作った? トヨタ・セルシオで離れ業 "ジャンプ" も披露

掲載 8
「傾かないクルマ」音響メーカーが作った? トヨタ・セルシオで離れ業 "ジャンプ" も披露

電磁技術で常に水平保つ

最近、ポルシェの新しいアクティブ・ライド・システムに驚かされた。2.4トンのパナメーラ・ターボで、サーキット走行でもロールとピッチを見事なまでに抑え込んだのだ。

【画像】現代の「セルシオ」も世界に誇る高級車だ!【レクサスLS 500hを写真で見る】 全20枚

しかし20年前には、予想もしなかった企業からの斬新なサスペンションに感銘を受けた。BOSE(ボーズ)のリニアサスペンションだ。

ポルシェのシステムでは、ダンパー内部の電動油圧ポンプで圧力を調整し、伸長と圧縮を行うことで車体を常に水平に保つ。

BOSEのシステムでは、各車輪の上部、通常はコイルスプリングとダンパーがある場所に、コイルと磁石を内蔵したリニアモーターが配置されていた。

電流を流せば、最大20cmも車高を上下させることができる。電流は、BOSE独自のアルゴリズムを搭載したコンピューターからの指示に応じてパワーアンプから供給される。ポルシェと同様、BOSEのシステムも「受動的(リアクティブ)」ではなく「能動的(プロアクティブ)」なものである。

「ジャンプ」も可能なサスペンション

足回りとしては、フロントがトーションバーとマクファーソンストラット、リアがウィッシュボーンとなり、車輪には過度のバウンドを防ぐダンパーが内蔵されている。

基本的には、コンピューター制御の電磁パルスで作動するオーディオ・スピーカーのコーンと同じ仕組みであり、パワーアンプにはオーディオ・アンプと同じスイッチング方式が使われている。

4本の車輪を個別制御することで、ピッチングやローリングが防止され、凹凸の激しい路面やコーナリング、ブレーキングでも姿勢を崩さない。さらに、路上の障害物を文字通り “飛び越える” ことさえ可能だ。

なお、列車や飛行機のようにバンクさせながら曲がることもできるが、テストでは安全上の問題があることが判明した。

BOSEは当時のトヨタ・セルシオ(レクサスLS)に搭載し、デモ走行の動画を公開した。セルシオは標準装備のスチール製スプリングでも非常に乗り心地が良いのだが、動画を見ると、どんな路面でもスムーズに走る姿に驚いてしまう。ジャンプする瞬間も必見だ(動画はYouTubeなどの動画投稿サイトでも見ることができる)。

これもまた驚くべきことだが、ダンパー内部の電動モーターでエネルギー回生まで行うため、サスペンション・システム全体の電力使用量はエアコンの3分の1しかないという。

「本業」より重要だった? ボーズ博士の意志

米国人のアマー・ボーズ(Amar Gopal Bose)氏は1956年、名門マサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学の博士号を取得した。ボーズ博士はお祝いに高級ステレオを買ったが、その音質に失望し、オーディオ科学の研究に没頭。1964年に自身の名を冠した企業を設立する。

この頃、彼はポンティアックとシトロエンを購入した。どちらも、斬新なエアサスペンションとハイドロニューマチック・サスペンションに興味を持ったからだ。

1980年から最適なサスペンションの研究を始め、たどり着いた結論は、「乗り心地」と「ボディコントロール」という相反する性質を両立させる速度、強度、効率を備えた従来のシステムは存在しないが、電磁気的なものなら可能性があるというものだった。

そこで、数人のエンジニアとともにリニア電磁モーター、パワーアンプ、制御アルゴリズムの改良に取り組むことになった。今ほどコンピューターが高性能ではなかった時代、計算には苦労したことだろう。彼らのサスペンションが実証できるようになるまで、四半世紀を要した。

ボーズ博士は高級車メーカーとの共同開発を望んでいた。2004年の弊誌の取材で、「彼らには勇気がいることだろう」と語っている。

「我々に近い哲学を持つメーカーを求めている。手抜きはしたくない。BOSEにとっては、サウンドシステムよりも重要かもしれない」

しかし、問題もあった。ボーズ博士が目標とした追加重量は90kgで、消費者の購入コストは1万ドルにも上るとの予測もあった。結局、どのメーカーもそこまでの勇気はなかった。

その後、同技術は腰の悪いトラック運転手のためのアクティブシートの開発に使われ、97%が快適性の大幅な向上を報告している。そして、ボーズ博士が亡くなってから4年後の2017年、BOSEはMIT卒業生が立てたクリアモーション(Clearmotion)という企業に技術を売却した。

クリアモーションは最近、「CM1」というデジタル・シャシー技術をニオET9に搭載すると発表した。これは電磁式ではないが、ボーズ博士のアルゴリズムを使って油圧機構を制御する能動的なシステムである。

こんな記事も読まれています

大型免許必要サイズの巨大ボディ!! テスラ[サイバートラック]は超快適車だった!? 日本での発売はあるのか
大型免許必要サイズの巨大ボディ!! テスラ[サイバートラック]は超快適車だった!? 日本での発売はあるのか
ベストカーWeb
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #14 【日産 グロリア】
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #14 【日産 グロリア】
グーネット
小山美姫が初予選で感じたスーパーGTの難しさ「タイヤのおいしいところを使えなかった」
小山美姫が初予選で感じたスーパーGTの難しさ「タイヤのおいしいところを使えなかった」
AUTOSPORT web
明暗別れたホンダ・シビック陣営の予選。ホームの鈴鹿がアゲインストの難コースに!? /第3戦予選
明暗別れたホンダ・シビック陣営の予選。ホームの鈴鹿がアゲインストの難コースに!? /第3戦予選
AUTOSPORT web
予選Q2のユーズドで驚異的な速さを見せたENEOS福住仁嶺、MOTUL千代勝正。決勝は天候が鍵に/第3戦予選
予選Q2のユーズドで驚異的な速さを見せたENEOS福住仁嶺、MOTUL千代勝正。決勝は天候が鍵に/第3戦予選
AUTOSPORT web
本場ドイツのエンジン技術を磨け! 整備士不足時代に「体験」で学ぶ
本場ドイツのエンジン技術を磨け! 整備士不足時代に「体験」で学ぶ
ベストカーWeb
くるまりこちゃん OnLine 「桜シーズン! 」第99回
くるまりこちゃん OnLine 「桜シーズン! 」第99回
ベストカーWeb
驚速D’station Vantage GT3、初ポールの秘訣はタイヤ、新型の能力、チームの対応力にあり
驚速D’station Vantage GT3、初ポールの秘訣はタイヤ、新型の能力、チームの対応力にあり
AUTOSPORT web
バニャイア、母国で今季スプリント初勝利。マルティンが転倒で、M.マルケスが3連続2位/第7戦イタリアGP
バニャイア、母国で今季スプリント初勝利。マルティンが転倒で、M.マルケスが3連続2位/第7戦イタリアGP
AUTOSPORT web
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #13 【ルノー カングー】
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #13 【ルノー カングー】
グーネット
「悔しい」予選2番手のスバルBRZ。重要な決勝に向けてのセット変更と井口&山内のドライビング
「悔しい」予選2番手のスバルBRZ。重要な決勝に向けてのセット変更と井口&山内のドライビング
AUTOSPORT web
「手応えあり」のSHADE RACINGと「全然わからない」Studie。雨予報の鈴鹿でミシュランの逆襲はあるか
「手応えあり」のSHADE RACINGと「全然わからない」Studie。雨予報の鈴鹿でミシュランの逆襲はあるか
AUTOSPORT web
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #12 【フォード エコノライン】
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #12 【フォード エコノライン】
グーネット
商用バン&ワゴン宿命の対決 ぶっちゃけハイエースと日産NV350キャラバンどっちがいいの?
商用バン&ワゴン宿命の対決 ぶっちゃけハイエースと日産NV350キャラバンどっちがいいの?
ベストカーWeb
あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
ペドロ・アコスタ、2025年よりレッドブルKTMファクトリー・レーシングに昇格が決定/MotoGP
ペドロ・アコスタ、2025年よりレッドブルKTMファクトリー・レーシングに昇格が決定/MotoGP
AUTOSPORT web
藤井誠暢「タイヤがすべて」 ファグ「イギリス人だから雨は得意だよ(笑)」【第3戦GT300予選会見】
藤井誠暢「タイヤがすべて」 ファグ「イギリス人だから雨は得意だよ(笑)」【第3戦GT300予選会見】
AUTOSPORT web
初ポール獲得のアレジ「本当に最高。好物をいっぺんに食べているよう!」【第3戦GT500予選会見】
初ポール獲得のアレジ「本当に最高。好物をいっぺんに食べているよう!」【第3戦GT500予選会見】
AUTOSPORT web

みんなのコメント

8件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

593.3787.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0277.5万円

中古車を検索
セルシオの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

593.3787.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0277.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村