現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 人間中心というより、バッテリー中心!? 儚くも消えた日産の“ルネッサンス”|一代限りで消えたクルマVol.003:日産ルネッサ

ここから本文です

人間中心というより、バッテリー中心!? 儚くも消えた日産の“ルネッサンス”|一代限りで消えたクルマVol.003:日産ルネッサ

掲載 更新 10
人間中心というより、バッテリー中心!? 儚くも消えた日産の“ルネッサンス”|一代限りで消えたクルマVol.003:日産ルネッサ

世の中には、フルモデルチェンジされずにその役目を終え、一代限りで消えていくクルマがある。そんななんとも悲しいクルマたちを毎回1台取り上げ、「なぜそんな憂き目にあってしまったのか?」と振り返ってみようと思う。

■21世紀のクルマを新たな方向へと導く

なぜ平板なデザインに? VWロゴ、変更の理由…日産も間もなく!?

名前はいいと思ったんだけどなぁ。

語源は、もちろんルネッサンス。でも、ルネッサは何を復興・再生したかったんだっけ? 大きく傾いていた日産の経営状態とまでは、さすがに言わなかったはずだし。

なかなか思い出せないので、発表・発売時のニュースリリースを引っ張りだしてみる。

すると、車名の由来がしっかり載っていたが、この説明文が長い。それでも無駄な文言はなく要約が難しいので、以下にそのまま引用する。

『14世紀から16世紀にかけてイタリアを中心にヨーロッパ全土で行われた“人間中心”の近代化への転換を図る文化革命運動「ルネッサンス〈RENAISSANCE〉:文芸復興、再生」をイメージして名付けた造語。“人間を中心に置いたクルマづくり”の「復興、再生」を表現するとともに、21世紀のクルマを新たな方向へと導く「革新」の存在になってほしい、という思いを込めた。』〈1997(平成9)年10月22日の「日産ニュースフラッシュ」より〉

そうだ、人間を中心に置いたクルマづくりだった。このフレーズ、今ではほかのメーカーでも耳にするような…。

■リムジンばりのニールームスペース

開発コンセプトは“パッケージ・ルネッサンス”。ルネッサの“人間中心”は、従来のクルマと一線を画する室内空間の贅沢な使い方にあった。

背の高い3ナンバーワイドのミドルサイズボディは、一躍大ヒットした初代ホンダ・オデッセイと同等。しかし、室内をあえて2列シートとし、後席に570mmのロングスライド機構を与えることで、後席にはまさにリムジンばりの圧倒的ニールームを実現していた。さらに、運転席・助手席は回転機構を備え、停車状態では前後席の対面シートも楽しめた。前席はコラムATと足踏み式パーキングブレーキで、左右・前後のウオークスルーが可能だった。

このシートアレンジを可能にしたのは、床下にシートのスライド機構を収められる二重フロアのボディ構造。ルネッサのパッケージは元々、床下に大容量バッテリーを内蔵するEV(電気自動車)のために開発された。主力市場は、ZEV(無公害車)の販売義務づけを見据えた米カリフォルニア州。そのプラットフォームを一般的なガソリン車と共用にするため、パッケージの特徴を新しい2列シート車の提案に活用したのがルネッサだった。

じつは、車名の由来の引用にはまだ続きがある。

『さらに「ルネッサ」(R’nessa)」の頭文字である「R」には、「Run(走り)」、「Relax(リラックス)」、「Recreation(レクリエーション)」という意味を持たせた。』

実際、走りはよかった記憶がある。ボディは高剛性。足まわりは、FFがマルチリンクビーム、4WDはマルチリンクとともに日産自慢のリヤサスで、二重フロアによる腰高感がほとんど気にならないロール剛性と、優れた接地性を両立していた。エンジンはFFが2L・NA、4WDは2Lターボ&2.4L・NAと充実のラインアップ。

また、レクリエーションについても、前述の回転対座シート、余裕の積載容量やユーティリティレールなどを備えた荷室など、レジャーなどに活躍するだけの資質はあった。

■とはいえ、後席は快適ではなかった…

しかし、もう一つのR、リラックスについては、残念ながら車名どおりではなかったのだ。

後席はニールームが有り余る広さでも、フロアに対してシート位置が低く、ヒザを抱える体育座りのような着座姿勢。頭上高の余裕も少なかった。ボディの全高は、今でいうとスバルのレガシィアウトバックくらい。一方、フロア地上高は本格オフローダーなみに高かったから、それも道理だった。乗降性についても、とくに後席はお世辞にもホメられなかった。

月販目標はオデッセイの向こうを張る6500台。果たして、これが売れなかった。

最大の敗因は、やはりパッケージ。室内長とアレンジは確かに目を引いたが、乗降性にも影響した全高/室内高の低さは如何ともし難かった。また、2列シートだけどミニバンなのか、背が高いけどステーションワゴンなのか、商品ジャンルが曖昧でユーザーに伝わらなかった点もある。同じプラットフォームで開発された3列シートミニバンのプレサージュは、ある程度の販売実績を残している。

人間中心というより、バッテリー中心。ルネッサによるルネッサンスは成し遂げられることなく、2001年に幕を閉じた。

肝心のEVはといえば、カリフォルニアだけでなく(現地名はアルトラEV)、翌98年国内にもルネッサEVの名で導入された。販売台数は両車合わせて約200台。これもほかの旧世代EVと同じく露と消えたが、リチウムイオンバッテリーやモーターをはじめとする様々な技術開発は、2010年12月に発売された新世代EVの初代リーフにつながっている。

〈文=戸田治宏〉

こんな記事も読まれています

車内でスマホを快適チャージ!  新機軸携帯充電アイテムを【特選カーアクセサリー名鑑】
車内でスマホを快適チャージ! 新機軸携帯充電アイテムを【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
Moto3イタリア決勝|山中琉聖が初表彰台獲得! アロンソがポールから逃げ切り3連勝
Moto3イタリア決勝|山中琉聖が初表彰台獲得! アロンソがポールから逃げ切り3連勝
motorsport.com 日本版
日産「新型スポーツSUV」まもなく登場へ! 430馬力超え×「GT-Rの技術」融合!? 6月発売の最強”フラッグシップ” 新型「アリア NISMO」 どんなクルマ?
日産「新型スポーツSUV」まもなく登場へ! 430馬力超え×「GT-Rの技術」融合!? 6月発売の最強”フラッグシップ” 新型「アリア NISMO」 どんなクルマ?
くるまのニュース
BMW『X1』シリーズに2仕様を追加…ガソリンとBEVのいずれもベーシック
BMW『X1』シリーズに2仕様を追加…ガソリンとBEVのいずれもベーシック
レスポンス
左折するのに右にハンドルを切るのは道交法違反!?「右振り左折」は安全面・マナー面的にも悪癖なので改めましょう
左折するのに右にハンドルを切るのは道交法違反!?「右振り左折」は安全面・マナー面的にも悪癖なので改めましょう
Auto Messe Web
スズキ フロンテクーペGX(昭和46/1971年9月発売・LC10W型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト065】
スズキ フロンテクーペGX(昭和46/1971年9月発売・LC10W型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト065】
Webモーターマガジン
37号車Deloitte TOMSの笹原&アレジ組、悲願のスーパーGT初優勝! 14号車ENEOSは痛恨のドライブスルーに泣く|スーパーGT第3戦鈴鹿
37号車Deloitte TOMSの笹原&アレジ組、悲願のスーパーGT初優勝! 14号車ENEOSは痛恨のドライブスルーに泣く|スーパーGT第3戦鈴鹿
motorsport.com 日本版
ニコ・ヒュルケンベルグ、ニュル24時間レースに登場「F1の物語が終わったら」参戦の可能性も? スポンサーも挑戦を歓迎
ニコ・ヒュルケンベルグ、ニュル24時間レースに登場「F1の物語が終わったら」参戦の可能性も? スポンサーも挑戦を歓迎
motorsport.com 日本版
フォーミュラもGT500も乗った百戦錬磨のレーシングドライバーでも難しい! ドラテクだけじゃ闘えないラリーの奥深さとは
フォーミュラもGT500も乗った百戦錬磨のレーシングドライバーでも難しい! ドラテクだけじゃ闘えないラリーの奥深さとは
WEB CARTOP
ホンダ:全車投入の新型エアロでハンドリングと最高速が改善。ミル「進化に満足」/第7戦イタリアGP初日
ホンダ:全車投入の新型エアロでハンドリングと最高速が改善。ミル「進化に満足」/第7戦イタリアGP初日
AUTOSPORT web
JAFが「いろいろなモビリティ」サイト公開---混在する交通社会
JAFが「いろいろなモビリティ」サイト公開---混在する交通社会
レスポンス
米と伊の一流ブランドがコラボした奇跡のクルマ……かと思ったら大ゴケした「クライスラーTCバイ・マセラティ」
米と伊の一流ブランドがコラボした奇跡のクルマ……かと思ったら大ゴケした「クライスラーTCバイ・マセラティ」
WEB CARTOP
【MotoGP】今季限りで現役引退のアレイシ・エスパルガロ、来季はホンダのテストライダーに就任との情報。復活を後押しできるか?
【MotoGP】今季限りで現役引退のアレイシ・エスパルガロ、来季はホンダのテストライダーに就任との情報。復活を後押しできるか?
motorsport.com 日本版
「釣り」に行くなら「スバルSUV」が最強ってホント? 釣り仕様の「レガシィ アウトバック」でガッツリ楽しんでみた!
「釣り」に行くなら「スバルSUV」が最強ってホント? 釣り仕様の「レガシィ アウトバック」でガッツリ楽しんでみた!
くるまのニュース
120台以上のランボルギーニが集結!ボロネーゼがオーナー限定のサーキットイベント「BULL FESTA in FUJI SPEEDWAY」を開催
120台以上のランボルギーニが集結!ボロネーゼがオーナー限定のサーキットイベント「BULL FESTA in FUJI SPEEDWAY」を開催
@DIME
小松菜奈&松田龍平のW主演 記憶をなくした男女の魂の交錯を描く『わたくしどもは。』
小松菜奈&松田龍平のW主演 記憶をなくした男女の魂の交錯を描く『わたくしどもは。』
バイクのニュース
【MotoGP】ドゥカティ、プラマックの陣営残留確定を待ち望む。マルケス去就を左右する”サポート独占”契約は未締結
【MotoGP】ドゥカティ、プラマックの陣営残留確定を待ち望む。マルケス去就を左右する”サポート独占”契約は未締結
motorsport.com 日本版
中上貴晶、ホンダ勢最上位につける「新型エアロは特に最高速で好感触」/第7戦イタリアGP初日
中上貴晶、ホンダ勢最上位につける「新型エアロは特に最高速で好感触」/第7戦イタリアGP初日
AUTOSPORT web

みんなのコメント

10件
  • 確かに後部座席に乗った瞬間「あれ?」

    広いけど床が高くて体育座りみたいな感じに。
    プレサージュもそうだったけどそこが惜しかったね。
  • 確かに このクルマは隠し部屋があって狭かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

188.2292.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.834.8万円

中古車を検索
ルネッサの車買取相場を調べる

日産 ルネッサの中古車

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

188.2292.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.834.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村