現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 最新 i7の防弾仕様「プロテクション」へ試乗 動きが鈍重では無意味 BMWの特別プログラムを体験(2)

ここから本文です

最新 i7の防弾仕様「プロテクション」へ試乗 動きが鈍重では無意味 BMWの特別プログラムを体験(2)

掲載
最新 i7の防弾仕様「プロテクション」へ試乗 動きが鈍重では無意味 BMWの特別プログラムを体験(2)

装甲性能が高くても動きが鈍重では無意味

装甲性能を高めても、動きが鈍重では攻撃から逃げられない。動的能力の高さも、プロテクション・モデルでBMWが開発時の目標としたことの1つだ。「充分な敏捷性がなければ、保護しても意味はありません」

【画像】まるで違う「装甲」性能 760iとi7のプロテクション仕様 通常の7シリーズとSクラスも 全127枚

「これは密接に関係しています。攻撃を受けている場合、最も重要なことは危険からできるだけ早く脱出すること。安全に。1秒の違いが大切になります」。BMWのプロテクション・モデル開発を率いる、アクセル・スタナー氏が説明する。

今回筆者が訪れたのは、旧東ドイツのテンプリンという街にある、旧ソ連軍の飛行場。訓練を受けたドライバー・チームの指導を受けながら、BMW最新の装甲車両、i7 xドライブ60 プロテクションへ試乗させていただく。

始めは、徐行スピードでの簡単な方向転換。続いてバックでの走行。日が暮れても体験は続き、ヘッドライトを灯さず130km/hで走行し、障害物を避けるように車線を変更するという運転で、1日は終わった。

この内容は、BMWのプロテクション・モデルを運転するドライバーが、起こりうる事態へ対応できる技術を身につけるための、訓練プログラムと同等だという。つまり、ただ指定されたルートを走るだけではない。

ある時点で、奇襲攻撃を受ける。もちろんシミュレーションだが、7シリーズの直ぐ側で火炎瓶が爆発するタイミングがある。筆者が運転するi7 プロテクションも、激しい炎をかすめるように走ることとなった。

車内は不気味なほど静か 想像以上に機敏

ぱっと見は通常のi7と似ているが、車高は高い。ドアは間違いなく重く、開閉する動作は、銀行に据えられた金庫の扉のよう。通常の7シリーズではないことがわかる。

反面、車内空間は通常のi7 xドライブ60とほぼ同じ。豪華に仕立てられたインテリアの中で、ゆったりくつろげる。

ツインモーターが生み出す強力なトルクで、i7 プロテクションの加速は鋭い。フルパワーを与えると、フロントノーズが大きく持ち上がる。市街地の速度域を超えると、装甲装備で車重が1.7t以上も増えたことを実感する。

高速域での速度上昇は、素早いというより堂々。駆動用バッテリーに蓄えられた電気を、沢山消費していく。

とはいえ、i7 プロテクションの印象が最も良いのは高速道路だろう。キャビンは不気味なほど静か。BMWがプロテクティブ・コアと呼ぶ装甲構造と多層ガラスが、風切り音やロードノイズの殆どを遮断するためだ。

軽くない車重は、常に感じ取れる。特にコーナリングで。躍動的にボディを旋回させるには、両腕でステアリングホイールを意図的に回す必要がある。操縦性には、大幅に増加した質量が生む物理的な特性が作用する。

ブレーキもアップグレードされている。加速時と同様に、減速時にはフロントノーズが沈み込む。

少なくとも、ステアリングの反応は正確。アクティブ後輪操舵システムも実装され、想像以上に機敏に走る。ボディは大きいが、狭い道での取り回しも難しくないだろう。プログラムには、障害物を連続して避ける内容が含まれていたから、間違いない。

購入時は事前に厳正な審査を受ける

タイヤは、ミシュラン・プライマシーPAXというランフラットで、サイズは255-740 R510。これも通常のアイテムと異なり、攻撃を受けてもある程度の機動性を確保できるよう、ホイールの内側に特別な構造体が埋め込まれているらしい。

向かうところ敵なしといえる、BMWの電動リムジンは、ドイツのディンゴルフィング工場で生産される。通常の7シリーズと一緒に。しかし、装甲装備に関しては多くが手作業だという。

世界中の政府や企業が、特別な要人を守るため、BMWのプロテクション・モデルを利用している。購入に際しては、最終的な契約が結ばれる前に、同社による厳正な審査を受けるそうだ。

「私たちは、誰にでも販売するわけではありません。弊社のプロテクション事業は、商業的な側面もある一方で、テロリストの手へ渡らないよう管理してもいるんです」。スタナーが厳しい表情で話す。

サルーンだけでなく、SUVの5Xにもプロテクション仕様がある。防弾性能では、i7がドイツ基準のVPAMで最高評価、VR10なのに対し、VR6へ落ちる。その代わり、オフロード性能は高い。実際、険しい路面を走破してみせた。

この場合、多くが期間限定のリースとのこと。満了後は、BMWへ返却される。

新しい量産車の多くが、衝突安全基準のNCAPで、安全性の高さを主張する。しかし、i7のプロテクションは桁違い。世界で最も恐れられているマシンガンの銃口が向けられても、動揺せずに運転し続けられることだろう。

番外編:プロテクションのスペックは秘密

BMWの通常の量産車と異なり、プロテクション・モデルのスペックは秘密が守られている。「特定の要素は、外部へ知られないことが重要です。テロリストの有利になることはしたくありませんから」。とスタナー。

ただし、いくつかの数字は明らかになっている。今回試乗したi7 xドライブ60 プロテクションの車重は、4375kgある。昨年AUTOCARで試乗した通常のi7は、2758kgだ。

これにより、0-100km/h加速は4.7秒から8.1秒へ遅くなる。最高速度は159km/hへ制限される。内燃エンジンで走る760i xドライブ・プロテクションの車重は、少し軽く3890kg。0-100km/h加速は6.8秒で、最高速度は210km/hと高い。

重装甲化は、電費や燃費へ与える影響も小さくない。i7 プロテクションは3.3km/kWhで、760i プロテクションでは6.8km/Lに留まる。それでも、充分な距離は逃げられるだろう。

こんな記事も読まれています

レクサスの中国製コピー? 上級ワンボックスEVが英国上陸 マクサス・ミファ9へ試乗 価格なりの高水準
レクサスの中国製コピー? 上級ワンボックスEVが英国上陸 マクサス・ミファ9へ試乗 価格なりの高水準
AUTOCAR JAPAN
249km/hに耐えるソフトトップ メルセデス・ベンツCLE 450 カブリオレへ試乗 美しい海岸線を味わいたい
249km/hに耐えるソフトトップ メルセデス・ベンツCLE 450 カブリオレへ試乗 美しい海岸線を味わいたい
AUTOCAR JAPAN
フェラーリSF90 XX スパイダーへ試乗 胸が打たれるほど「公道」で素敵 HVの総合1030馬力!
フェラーリSF90 XX スパイダーへ試乗 胸が打たれるほど「公道」で素敵 HVの総合1030馬力!
AUTOCAR JAPAN
可能性は感じる ケド「宿題」も多い オモダ5 プロトタイプへ試乗 1.6Lターボの新型SUV
可能性は感じる ケド「宿題」も多い オモダ5 プロトタイプへ試乗 1.6Lターボの新型SUV
AUTOCAR JAPAN
悪路のスーパーヒーロー ジープ・ラングラーへ試乗 ロックレールで側面衝突に対応 12.3型モニター獲得
悪路のスーパーヒーロー ジープ・ラングラーへ試乗 ロックレールで側面衝突に対応 12.3型モニター獲得
AUTOCAR JAPAN
「ゲレンデ」にも電気の時代が来た! メルセデス・ベンツGクラス G 580へ試乗 破壊的に速い4モーター
「ゲレンデ」にも電気の時代が来た! メルセデス・ベンツGクラス G 580へ試乗 破壊的に速い4モーター
AUTOCAR JAPAN
最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ
最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ
AUTOCAR JAPAN
もっと燃費が良ければ理想的! マツダMX-30 R-EV 長期テスト(2) パワージェネレーターが故障
もっと燃費が良ければ理想的! マツダMX-30 R-EV 長期テスト(2) パワージェネレーターが故障
AUTOCAR JAPAN
ジープ・アヴェンジャー 詳細データテスト 低重心ゆえの良好な操縦性 日常的な乗り心地には注文あり
ジープ・アヴェンジャー 詳細データテスト 低重心ゆえの良好な操縦性 日常的な乗り心地には注文あり
AUTOCAR JAPAN
「ルビコン」と「サハラ」は別用途 【ジープ新型ラングラーを早速試乗】 その違いとは?
「ルビコン」と「サハラ」は別用途 【ジープ新型ラングラーを早速試乗】 その違いとは?
AUTOCAR JAPAN
模擬銃撃戦までやるってミッションインポッシブルかよ!? BMWの要人警護ドライビングレッスンが想像の斜め上すぎる!
模擬銃撃戦までやるってミッションインポッシブルかよ!? BMWの要人警護ドライビングレッスンが想像の斜め上すぎる!
WEB CARTOP
走りを楽しみたい人へ──新型レンジローバースポーツ試乗記
走りを楽しみたい人へ──新型レンジローバースポーツ試乗記
GQ JAPAN
スーパーSUVの本命、ついに日本で乗った!──新型フェラーリ プロサングエ試乗記
スーパーSUVの本命、ついに日本で乗った!──新型フェラーリ プロサングエ試乗記
GQ JAPAN
【最新モデル試乗】モーターとエンジンの「いいとこ取り」。時代を先駆けるクラウン・スポーツPHEVの迫力世界
【最新モデル試乗】モーターとエンジンの「いいとこ取り」。時代を先駆けるクラウン・スポーツPHEVの迫力世界
カー・アンド・ドライバー
“クルマ好き憧れのブランド”の真価を体験!「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」に行ってみた!! 最新「911」の運転体験に気分がアガる
“クルマ好き憧れのブランド”の真価を体験!「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」に行ってみた!! 最新「911」の運転体験に気分がアガる
VAGUE
【欧州市場投入】「マツダCX-80」高性能と最大7人乗りのゆとりある室内空間を実現
【欧州市場投入】「マツダCX-80」高性能と最大7人乗りのゆとりある室内空間を実現
AutoBild Japan
【最新モデル試乗】新たなオールマイティSUV登場! 三菱トライトンはメルセデスGクラスより強い存在感を放つ
【最新モデル試乗】新たなオールマイティSUV登場! 三菱トライトンはメルセデスGクラスより強い存在感を放つ
カー・アンド・ドライバー
【試乗記】Hyundai IONIQ5 Nの基礎体力アップと「楽しい」に繋ぐ遊び心、そして圧倒的ハイパフォーマンスに笑顔
【試乗記】Hyundai IONIQ5 Nの基礎体力アップと「楽しい」に繋ぐ遊び心、そして圧倒的ハイパフォーマンスに笑顔
Auto Prove

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

BMW i7

5.0 2件

新車価格(税込)

1598.02198.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1388.02080.0万円

中古車を検索
i7の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1598.02198.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1388.02080.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村