2022年にモデルチェンジを行って販売好調なトヨタシエンタ。そのライバルといえば、ホンダフリードだ。デビュー以来7年が経過しているが、いまだにホンダで一番売れているミニバンである。大人気のフリードだが、新型シエンタより優れている部分はどこなのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/ホンダ、ベストカー編集部
デビューしてから7年でもマジで売れてるホンダフリード!! 新型シエンタよりイケてるのはどこだ?
■ホンダ車の中で2番目に売れているフリード
ホンダフリードはデビューしてから約7年が経過しているが、一番売れているホンダのミニバンだ
2022年には、トヨタノア&ヴォクシーや日産セレナなど、3列シートのミニバンが豊富に登場した。その中で、登録台数の最も多い車種がトヨタシエンタだ。直近の2023年1~3月には、1か月平均で約1万2380台を登録した。
シエンタは2022年の発売だから設計も新しく、コンパクトミニバンとあって価格は割安だから、ミニバンの販売1位になるのも納得できる。ミニバンの販売2位はヴォクシーで、1か月平均約8840台を登録した。3位はノアで8790台であった。
注目されるのはミニバンの販売4位だ。ホンダフリードが1か月平均で約8360台を登録している。フリードの発売は2016年だから、7年近くを経過した設計の古いミニバンだが、登録台数は2022年に登場したノアやヴォクシーに迫る。
フリードの売れ行きは、ホンダ車では2番目に多い。ホンダの国内販売で1位の車種は、国内のベストセラーでもあるN-BOXで、2023年の1か月平均届け出台数は約2万2420台だ。この売れ行きは別格だが、ホンダで2位に入ったのが、約8360台のフリードだった。
常識で考えると、ホンダの国内販売2位はフィットだろう。伝統あるコンパクトカーで認知度も高い。現行型の発売は2020年だから、設計も新しい。それなのに2023年1~3月の1か月平均登録台数は約6200台だ。設計の古いフリードの74%しか登録されていない。
こちらはライバルのトヨタシエンタ。2023年1~3月には、1か月平均で約1万2380台を登録
またホンダには軽自動車のN-WGNもあり、この登場も2019年だから比較的新しいが、2023年の1か月平均届け出台数は約4480台だ。ベストセラーのN-BOXとエンジンやプラットフォームなどの基本部分を共通化しながら、N-WGNの売れ行きは、N-BOXの20%ときわめて少ない。
以上のように今のホンダの国内販売は、N-BOXとフリードを双璧として成り立つ。その切っ掛けは、初代(先代)N-BOXの大ヒットだ。2011年に登場して好調に売られ、2017年に発売された2代目の現行型は、魅力をさらに高めて国内販売の1位になった。
その結果、ホンダのブランドイメージも影響を受けた。今では「ボディが小さくて実用的なクルマを造るメーカー」になり、スライドドアを装着して背の高いコンパクトなN-BOXとフリードに人気が集中した。
N-BOXとフリードの外観と価値観は似ていて、ホンダの国内販売を支える存在だ。前述のフィットやN-WGNは、この2車種にユーザーを奪われて売れ行きを下げた。
そこでフリードとライバル車のシエンタを改めて比べたい。フリードが発売から7年近くを経過しながら好調に売られる背景には、ホンダのブランドイメージの変化もあるが、優れた商品力も影響を与えている。その魅力をシエンタとの比較で明らかにしたい。
■車内の広さを実感させるミニバンらしい外観
シエンタのボディフォルムは、ミニバンらしい室内の広さを実感させるもの
シエンタは2022年に登場した現行型で、サイドウインドウの面積を広げて車内の広さを強調するが、フリードは以前からミニバンらしい外観が特徴だった。全高もフリードが少し高く「ミニバンらしさ」を重視するユーザーに人気だ。
■2列目にキャプテンシートを設定
フリードの3列仕様は2列目にキャプテンシートを選択することができる
ミニバンの2列目では、セパレートタイプのキャプテンシートが高い人気を得ている。両側にアームレストが装着されて座り心地が優れ、少し豪華な気分も味わえる。2列目の中央が通路になるから、2/3列目の移動もしやすい。3列目の乗員が2列目に移り、スライドドアから乗り降りできて便利だ。
シエンタの2列目はすべてベンチタイプで、キャプテンシートは選べない。その点でフリードは、全グレードの2列目にキャプテンシートを用意した。
しかも一般的にキャプテンシートの価格はベンチタイプよりも高いが、フリードは逆だ。開発者は「キャプテンシートは人気が高く、大量に販売されるから、ベンチシートよりも価格を安く抑えることができた」という。
■3列目シートの足元空間が広い
フリードの3列目シート
身長170cmの大人6名が乗車した時、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ1つ分に調節すると、フリードでは3列目の膝先が握りコブシ2つ分になる。シエンタは、同じ測り方で握りコブシ0.5個分と狭い。
その代わりシエンタは、床と座面の間隔がフリードよりも40mm広い。従って腰が落ち込んで膝の持ち上がる窮屈な姿勢になりにくい。つまり一長一短だが、足元空間を広く確保したい場合は、フリードが広々としていて快適に感じる。
■3列目を格納する時のシートアレンジが簡単
フリードの3列目シートは跳ね上げ式となっている
3列目を格納して荷室容量を拡大する時、フリードでは、3列目を単純に左右に持ち上げて固定すれば良い。
しかしシエンタは、3列目を2列目の下に格納する。そのために2列目を一度持ち上げてからその下に3列目を収めて、2列目を再び元に戻す必要がある。3列目が完全に格納されて荷室に張り出さない半面、シートアレンジの操作は面倒だ。フリードなら簡単に扱える。
■4気筒エンジンを搭載
ホンダフリードの1.5L 4気筒エンジン
シエンタは現行型でノイズを抑えたが、登り坂などでアクセルペダルを踏み増した瞬間、直列3気筒エンジンの粗い音質が聞こえることがある。その点でフリードは、ノイズの音量は小さくないが、直列4気筒だから音質は馴染みやすい。フリードなら耳障りには感じない。
■シエンタを超えるフリードの魅力
フリードのハイブリッドシステムは1世代前のi-DCDとなっている
フリードの発売は2016年だから、2022年のシエンタに比べると、古さを感じる機能が多い。まずフリードのハイブリッドシステムは、i-DCDと呼ばれるタイプだ。今のホンダ車が搭載するe:HEVに比べて世代が古い。2WDのWLTCモード燃費は20.9km/Lで、シエンタGやZの28.2km/Lを大幅に下まわる。
フリードは操舵感も鈍く、シエンタに比べて手応えが曖昧だ。このほか今の技術進歩が著しい衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も、フリードは設計が古い。従ってフリードとシエンタを総合的に比べれば、設計の新しいシエンタの魅力が強い。
ただし車内の広さを想像させる外観、2列目のキャプテンシート、余裕のある3列目の足元空間、3列目の簡単な格納方法など、ミニバンにとって重要な機能とデザインには、発売から7年近くを経過したフリードに注目すべき点が多い。
つまりフリードの販売が好調な背景には、前述のN-BOXによって変化したホンダのブランドイメージもあるが、それだけで売れ行きを伸ばしたわけではない。フリードのミニバンとしての優れた商品力が強みになっている。
そしてフリードは、2024年の前半にフルモデルチェンジを受ける可能性が高い。次期型は現行型のセールスポイントを踏襲した上で、ハイブリッドはe:HEVに刷新され、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も進化させる。
コンパクトで実用的という、ホンダのブランドイメージに沿った新型車に発展するから、再び売れ行きを伸ばす。
逆にミドルサイズミニバンのステップワゴンは、相変わらず販売面の苦戦が続き、復活するLサイズのオデッセイも売れ行きを伸ばすのは難しい。今のホンダの国内販売は、N-BOXとフリードが支えるが、最も重要なことはミドルサイズ以上のテコ入れだ。
このことはミニバンに限らず、SUVのZR-Vやハッチバックのシビックにも当てはまる。
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みんなのコメント
軽自動車だけじゃ儲かりません。
フリードは、キャプテンシートを選択すると真ん中の空間ができて3列目がより広く感じる
非ハイブリッドも燃費は悪いが1.5Lのわりに良くできている。
乗りつぶす気(リセールバリューを気にしない)なら初期投資が安い非ハイブリッドも有りかもしれない。
フリードは出来すぎていて逆にモデルチェンジで失敗する恐れが有る。