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無念の生産終了!! アバルト124スパイダー惜別試乗 外見イタ車で中身は日本車の実力

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無念の生産終了!! アバルト124スパイダー惜別試乗 外見イタ車で中身は日本車の実力

 2016年にマツダロードスターのOEM車として販売を開始したアバルト124スパイダー。実は既に生産は中止されていて、ディーラーなどに残っている在庫のみなのだ。

 ベースとなるロードスターが1.5LのNAエンジンなのに対して124スパイダーは1.4Lターボと異なるパワーユニットを搭載し、足回りにも独自チューニングを施している。

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 さらにエクステリアもインテリアも異なるテイスト。ロードスターとはどう違うのか?改めてその魅力を検証してみよう。

文:松田秀士/写真:FCA、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】すでに生産中止!! 在庫販売のみとなったアバルト124スパイダーの雄姿を拝む

前後のオーバーハングがロードスターより長い

アバルト124スパイダーはロードスターのOEM車ではあるが、見た目も走りもオリジナリティをいかんなく発揮している

 アバルト124スパイダーがマツダロードスターをベースとしていることは多くの方がご存知のことと思う。

 諸元を比較すればわかると思うが、トレッド&ホイールベースは全く同じサイズだ。大きく異なるのは全長がアバルト124スパイダーが145mm長いこと。

 アバルト124スパイダーのエクステリアデザインを眺めて、まず目につくのは前後のオーバーハングがロードスターに比べて長いこと。

 これによって、アバルトらしい個性ある顔立ちと後姿を演出している。デザイン的にはややレトロっぽくもあるが、前後ともにキリッとした印象を与える。ロードスターに比べると、比較的(?)油顔といってもいいのではないだろうか。

アバルト124スパイダーはロードスターに比べて前後のオーバーハングが長い。そのため全長が145mm延長されている

124スポルトスパイダーのデザインをオマージュ

 フロントノーズを注意深く観察すると、ロードスターがフロントエンドへ向かうにしたがってボンネット上部から絞り込むように低くドロップしているのに対して、124スパイダーは真っ直ぐ伸びてスパッ!と切り立つようなデザイン。

 ヘッドライト廻りも、ロードスターはフロントノーズ中心にやはり絞り込むようにRを付けているのに対して、124スパイダーは真っ直ぐエンドまで伸ばしてスクエアに処理している。

左がピニンファリーナデザインの124スポルトスパイダー。左は日本では販売されていないノーマルの124スパイダー

 オプションのLEDヘッドライトは、大きな目ではっきりと前方を見据える。ロードスターはライトを見る角度によって、その表情を変えるが、124スパイダーはどこから眺めてもまっすぐ前を見ている。

 これは1966年に登場した元祖124ともいえる、ピニンファリーナがデザインした124スポルトスパイダーをフューチャーしたデザインともいえる。

 リアエンドで目につくのは左右4本出しのデュアルエクゾースト。そして、少し切れ上がったリアコンビネーションランプ。こちらはロードスターの丸形に対して、やはりオリジナル124から引き継いだ横長の角型。

 トランクリッドは、リアフェンダーが大きく覆いかぶさるように囲み、コンビネーションランプとともにV字型を強調。実は、トランク容量が8.5L増えているのだ。

リアビューもロードスターとは別物。4本出しのデュアルエキゾーストも精悍。リアコンビランプにもかつての124スポルトスパイダーをオマージュ

両車の最大の違いはパワートレーン

 シートは座面と背面がアルカンターラ素材で、セミバケットのように座面背面共に左右のサポートを意識した作りだ。

 そして、シートと同じ赤いステッチのステアリングにはトップに赤いマーキングが施される。握りは明らかに太めだ。メーターパネルはレイアウトこそロードスターそのものだが、文字盤はレッドに加飾されている。

インテリアデザインは基本的にロードスターと同じだが、ステアリングトップのレッドマーキング、メーターもレッド加飾が施されている

 とはいえ、着座しステアリングに手を置いたときに感じる各操作系は、ほとんどロードスターと同じである。

 そして、最大の違いがそのパワートレーン。124スパイダーには170ps/250Nmを発生する1.4L 直4のマルチエアターボエンジンが搭載されている。

 排気量では約100cc小さいが、最大トルクはロードスターよりも+約100Nmと強力で、2500rpmという低回転域から発生する。

 エンジンのパワーアップに合わせるようにタイヤも205/45の17インチが採用されていて、ロードスターよりもワンサイズアップ。

ロードスターが1.5L、SKYACTIV-Gに対しアバルト124スパイダーは1.4Lターボ。ターボによるビッグトルクが魅力的だ

 これは、ロードスター先代モデルのNCと同等のタイヤサイズだ。さらに、フロントブレーキにはブレンボが投入されている。

 重量が約90kg重くなったことにより、ビルシュタインダンパーを含めたサスペンションのバネ定数も高められているはず。

ロードスターRSはi-ELOOP&i-STOP装着車

中高回転域のフィールはロードスターにない力強さ

 では走り始めよう。

 ロードスターに対して一番気になるのはエンジンだ。1.4Lマルチエアターボエンジンの評価は、ジュリエッタやミトにも搭載され、世界的にも評価は高い。

 その構造は、吸気弁の作動をカムシャフトではなく油圧ピストンにより行い、電子制御することでより細かな可変吸気を実現している。これは、燃費向上に大きく貢献している。

ターボパワーによる中高回転域でのパワー感、トルク感はロードスターにない力強さがあり魅力的だ。ターボながら燃費性能も悪くない

 ロードスターが152Nmの最大トルクを4500rpmで発生させるのに対して、250Nmの最大トルクを2500rpmで発生させている。

 ギヤ比の詳細は入手できていないが、6速100km/h時のエンジン回転数はほぼ同じの2600rpmなので、その他のギヤ比もほとんど変わらないものと思われる。

 そのことを考慮して発進加速を比較してみると、3000rpm以下では両車ほとんど変わらない体感加速。

 停止状態からの出だしでは、ややロードスターのほうがレスポンスよく感じる。これは、やはりNAであることでアクセルに対するピックアップがいいことと、90kg差の車重が効いているのだろう。

 しかし、3000rpmを超えたあたりからマルチエアターボの本領が発揮され、トップエンドの6000rpmオーバーまで力強さが続く。

ロードスター同様に小気味よくシフトチェンジができる6MTにより走りの気持ちよさが倍加する。パーキングブレーキのレッドステッチにもこだわりを感じる

 この中高回転域のフィーリングはロードスターにはないもので、明らかに力強い。ロードスターの場合7000rpmオーバーまでしっかり回して、アップシフトした時により高い回転域に放り込めることによる繋がりのよさが魅力といえる。

 124スパイダーにはスポーツモードがあり、スイッチを入れると全体的にパワーアップしステアリングのフィーリングもしっかりとしてくる。

 そして、排気音の質感もよりレーシーなものに変化する。ターボゆえのオブラートに包まれた排気音と、ウエストゲートの開く音。これにはかなりそそられる。

固められたサスと強化されたボディ

 パワーと車重のアップ、そしてNC並みのタイヤグリップを得たことで、サスペンションは固められている。

 具体的なデータがないので、個人的なフィーリングを元に想像すると、軽く20%ぐらいはスプリングレート、ダンパー減衰力ともに固められているはず。

 そのくせ、低速域での乗り心地はロードスターよりもよく、シートの振動吸収力が高いことと、ダンパーの初期減衰のセットがボディとマッチしているのだろう。

ロードスターよりもパワーがあり、車重も重くなっているため、サスは固められ、ボディも強化されている。これらは走りにとても効果的

 そのボディも、ロードスターRSよりも強化されていると感じる。強化するポイントはセンタートンネルだろう。

 このため、コーナへ侵入する時の操舵に対して、初期のロールするフィーリングはロードスターと同じくらいだ。

 ただし、そこからさらにステアリングを切り足したときに、ロードスターはさらにロールを感じ内輪側のサスペンションの伸びあがりを感じるが、124スパイダーはあるところでロールそのものが止まり落ち着いた姿勢でコーナリングする。

 基本的に、この時のハンドリングは弱アンダーをキープ。そこから先のハンドリング変化は大きく変わることはない。

欧州では124スパイダーはラリーで大活躍。競技に使っているユーザーも多く、消滅を惜しむ声は絶えない

 だから、アクセルを全開しにしてターボパワーでグイグイと連続した加速を楽しみながらコーナリングしている時、安定性をしっかりと持たせるためのサスペンションセッティングであり、そのために必要なグリップ力を確保するためのタイヤサイズといえるだろう。

 実は、このコーナリング初期の応答感でいうと、サスペンションがソフトな方向のロードスターのほうが、初期ロールは大き目ながら応答性は速く感じる。

 おそらくこれは、フロントオーバーハングの長さとフロントノーズトップ部及びライト周りの質量が124スパイダーのほうが大きいことで、イナーシャが大きくなっているからではないだろうか。同じことがリア周りにもいえるかもしれない。

ブレーキの強化が走りに好影響

 デザインとハンドリングの関連が、この2台を乗り比べると感じられるのだ。

 124スパイダーには明らかにイタリアンの、しかもアバルトの血流がある。

 ロードスターは、何も考えることなく頭の中を空っぽにしてステアリングを操作できる素のよさがある。もちろん、このフィーリングは124スパイダーにも共通するものだ。

フロントブレーキに4PODのブレンボキャリパーが採用されている。ストッピングパワーだけでなくアバルト124スパイダーの走りを魅力的にしている

 しかし、124スパイダーはさらにどのような操作をすれば、より深く曲がり込ませることができるのか、どのタイミングでブレーキングとステアリングの操作をすればよいのか、ということを考えながらハンドリングする創造力の楽しさがプラスされている。

 これは、フロントブレーキに4PODのブレンボキャリパーが採用されていることが大きい。

 軽く踏み始める時のブレーキのタッチ。ハードブレーキングからペダルの踏力を緩めながらフロントノーズを起こし、コーナリングを始めるときのタイミング。この操作の確実性がロードスターよりも高いのだ。

 124スパイダーには、やはりアバルトというブランドに恥じないスパイスが投入されていた。

ロードスターのOEMであり共同開発車だが、イタリアの熱い血流が感じられるのはさすが。アバルト好きが多い日本、今後は中古でしか購入できないのは残念

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