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新感覚のホットハッチ──新型アバルト500eカブリオレ試乗記

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新感覚のホットハッチ──新型アバルト500eカブリオレ試乗記

アバルト初の電気自動車「500e」のカブリオレに今尾直樹が試乗した。印象はいかに?

忍者的な速さ

品のいいミニバン──新型ホンダ・オデッセイ試乗記

今回、都内で1時間ほど試乗した小型EVは、フィアット500eのアバルト版にして、エレキで走る1分の1の、オモチャだった。アバルト500eは新しい未来をビリッと感じさせてくれる。

筆者なんぞはステランティスの地下駐車場に拝借にうかがったときからして、胸がときめいた。広報の担当の方が乗り込んだ真っ赤なアバルト500eは、100%エレクトリックなのに、グオッと叫んで目を覚まし、“ガンラガラガラガンラガラガラ”と、まるでガソリンのハイチューンエンジンのようなアイドリング音を発しながら、ゆっくり動きはじめたのだからして。地下駐車場だから音が反響する。

う~む。なんてバカバカしいんだぁ。電気自動車がガソリンエンジン顔負けの大仰な騒音を発するなんて! しかも、リヤエンジンのヌオーヴァ・チンクチェントみたいに、わざわざリヤから!! 笑っちゃうよね。リヤの荷室の床下にわざわざスピーカーを配して、外部に人工的につくった音を聴かせる。こんな突拍子もないことを思いつき、そして、ここが肝心なところですけれど、実行してみせた。ヴィヴァ、イタリア。やっぱりイタリア人は天才だ。

アバルトのホームページに行くと、ブオンッ、ブオンッ、というブリッピングサウンドを聴ける。「レコードモンザ」という、現行アバルトのガソリンエンジン車用エグゾーストシステムのサウンドを分析し、数人のメンバーが延べ6000時間を費やしてつくったものだという。未聴の方はぜひお試しください。

この外部音は停止時にオン/オフできる。ということなどのコクピットドリルを担当の方から受け、地下駐車場から表に出る。走り出した途端、乗り心地がいいことに驚く。もしかして、フィアット500eより快適ではあるまいか。フィアット版は205/45R17、アバルト版は205/40R18に1インチ、タイヤサイズがアップされているのに……。

筆者の記憶によると、おなじ500eでもフィアットのそれも、小型車としては驚嘆の落ち着いた乗り心地を披露する。アバルト版はそれをベースに、若干ファーム方向にセットされている。その分、フラットで、しかもしなやかさが残っている。すばらしい。

モーターの最高出力はフィアット版の118ps/4000rpmから155ps/5000rpmに、最大トルクは220Nm/2000rpmから235Nm/2000rpmにアップ。性能向上は制御の変更もあるにせよ、そもそもモーターの型式が異なる。リチウムイオンバッテリーはフィアット500e用とまったくおなじで、パワーだけ上がっているから、電力消費は当然増え、航続距離は短くなる。カタログ上だと、一充電の走行距離は335kmから303kmへと、およそ1割減っている。キャンバストップ風にリヤのウインドウ部分までオープンになるカブリオレの場合は、294kmにとどまる。試乗車のカブリオレは車重がフツウの屋根のモデルより20kgほど重いことが影響しているのかもしれない。

タイヤの銘柄はブリヂストンのポテンザスポーツ。ランボルギーニ「ウラカン」でも採用されている高性能タイヤと同じシリーズだ。1インチアップもあって、ステアリングは若干重めで、それがスポーティネスにつながっている。

車重は1380kgで、内燃機関のアバルト695Cより200kg以上も重い。2クラス上の現行フォルクスワーゲン「ゴルフ」の1.5リッターモデルと同等の重量である。乗り心地のよさは現行ゴルフに匹敵する。と、申し上げても過言ではない。

そんな車重もなんのその。235Nmのトルクは強力で、アクセルを軽く踏み込むと、ブオーッという乾いた人工音を轟かせながら、軽やかに交通をリードする。0~100km/h加速7秒というのは、1.4リッター・ターボで180ps、スポーツ・モード時には250Nmを発揮して、200kgも軽いアバルト695と同等の数値である。でもって、外部音をオフにすると、聞こえてくるのはロード・ノイズだけとなる。そこにはただ風が吹いているだけ、のような、忍者的な速さを披露する。

スポーツカー本来のあり方をEVで提示走行モードにはデファクトの「ツーリズモ」、「スコーピオン・ストリート」、「スコーピオン・トラック」の3種類がある。「スコーピオン・ストリート」はいわばSモードで、ここまでは1ペダルで操作できる。アクセルをオフにするとブレーキを踏んだときに近い減速が得られる。慣れると使いやすい。もっとも、「スコーピオン・トラック」だと、通常の2ペダル運転ができるので、1ペダルに慣れなくても使いやすい。

電力消費は激しい。ステランティスの地下駐車場で電気エネルギーは100%、走行可能距離はカタログの294kmよりも短い259kmとスクリーンに表示されていたのはちょっと気になるけれど、たいへん正直な表示なのだろう。都内を1時間ほど走りまわった1時間後、車載コンピューターは電気エネルギー残量79%、走行可能距離164kmと表示した。距離計によると45km一般道を走っただけなのに、走行可能距離は130kmも短くなった。してみると、アバルト500eは満充電でも実際は150kmほどしか走れないことになる。

だけど、これでいいのだ。と、筆者は思うのである。だって、長いこと乗っていたら飽きちゃう可能性がある。いくら優れた音響エンジニアでも、変速ギヤを持つ内燃機関のような起伏に富んだサウンドをつくりだすことは現段階ではできない。短いからこそ、楽しい。

アバルト500eの新しさは、外部にエンジンの音を轟かせて、他人に見せびらかす。というスポーツカー本来のあり方をEVで提示したことだと筆者は思う。なんだって、あなたはこんなオモチャみたいなEVを買ったのか? と、問われたとき、オーナーは誇らしげに、あるいはちょっとはにかみながら、こう答えられる。

「私はガソリン自動車が大好きなんです」

今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストの1台に選んだ選考委員諸氏も、きっとおなじ思いだろう。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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