エンスト(エンジンストール)の経験はあっても、エンジンが壊れる「エンジンブロー」を経験した人は、ほとんどいないのではないでしょうか。エンジンブローは、エンジンを構成する部品が何らかの原因で破損してしまう、今となっては稀な不具合ですが、非常に危険で事故にもつながるので注意が必要です。
ここでは、エンジンが壊れる瞬間にエンジン内で何が起こっているのか、その原因と、直前に現れる前兆について、解説していきます。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:写真AC_ FineGraphics
写真:写真AC、TOYOTA、Mr.ソラン
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メンテナンス不足や間違った使い方で、エンジンは壊れる
エンジンブローが起こるには、それなりの原因があります。エンジンは、高温高圧と高速回転に耐えるように設計されていますが、それはあくまで規定の条件が守られることが前提です。ユーザーがオイル交換をしなかったり、点検を怠ったり、想定外の使い方をすれば、エンジンブローは起こってしまいます。エンジンブローを起こす主要な原因としては、次の4つが挙げられます。
・潤滑不良によるエンジン焼き付き
・異常燃焼によるピストンや点火プラグの溶損
・オーバーヒートによるシリンダーヘッドの熱歪み、ガスケット吹き抜け
・砂のような異物混入によるライナー内壁の損傷、水侵入によるウォーターハンマーの発生
それでは、それぞれの具体的な現象と原因、発生直前に起こる前兆について話を進めましょう。
エンジンブローの主要な原因は、潤滑不良、異常燃焼、オーバーヒート、異物/水の混入(PHOTO:写真AC_ FineGraphics)
アイドルが不安定、加速が鈍くなる→オイル不足や劣化オイルなどによる「焼き付き」
エンジンの摺動部に潤滑オイルが供給されない、あるいは潤滑性の悪い劣化オイルが供給されると、摩擦熱によって摺動部が焼き付き(固着)を起こしてエンジンが停止します。
摺動部とは、潤滑が必要なピストンとシリンダーライナー間、コンロッドやクランクシャフトなどのジャーナル部です。通常、摺動部にはオイルの液膜が形成され、金属同士が直接接触(金属接触)しないようにしてフリクションを下げています。
潤滑不良になる原因としては、オイル漏れなどによるオイル不足、劣化オイルの長期使用、オイルポンプの破損、異物混入によるオイル配管の閉塞などです。
潤滑不良が始まると、フリクションが大きくなってくるので、アイドルが不安定になる、加速が鈍くなる、燃費が悪化するという前兆が現れます。ただし、完全にオイル供給が絶たれると、あっという間に焼き付いてしまいます。
エンジンルームから煙や水蒸気、マフラーから白煙が→冷却系の不具合による「オーバーヒート」
「オーバーヒート」とは、本来80度前後に制御されるはずのエンジン冷却水の温度が、100度以上に上昇して沸騰してしまう不具合です。シリンダーヘッドの下面が熱によって歪み、シリンダブロック上面との間に挟んであるシリンダーヘッドガスケットから燃焼ガスや沸騰した冷却水が吹き抜けて、エンジンが停止します。
主としてラジエーターやサーモスタット、ウォーターポンプの作動不良、冷却系配管からの冷却水漏れといった冷却系の不具合によって発生します。
冷却水や燃焼ガスの吹き抜けが発生すると、シリンダーヘッド下面から煙(燃焼ガス)や白い水蒸気が出てきます。また、冷却水経路とオイル経路がつながると、燃焼室に水やオイルが混入するので、排気から白煙が発生します。インパネ内には冷却水温計があるので、その指示によって早めにオーバーヒートを察知することができます。
「キンキン」「カリカリ」などの異常な燃焼音→ピストンや点火プラグの溶損
激しいプレイグやノッキングによって燃焼温度が過昇温すると、ピストンや点火プラグが溶損してエンジンが止まります。ノッキングは、燃焼火炎が広がる前に燃焼室端面で未燃混合気が自己着火する現象。プレイグは、点火スパークの火花でなく、点火の前に燃焼室壁面や点火プラグがヒートスポットになって熱面着火する現象です。
原因は、オーバーヒートなどで燃焼室の壁面や点火プラグの温度が異常に上昇する、あるいは点火系の不具合によって点火スパークが適正な時期に飛ばないなどです。
異常燃焼が起こると、キンキン/カリカリといった通常とは異なる大きな燃焼音が発生します。ノッキングは、すぐに大きなトラブルになることはありませんが、プレイグは即座に点火プラグやピストンが溶損することがあるので危険です。
ノッキングは未燃ガスの自己着火、プレイグはヒートスポットによる熱面着火(イラスト:著者作成)
災害による異物混入
砂などの燃えない異物がシリンダーに混入すると、ピストンとシリンダーライナーの摺動面が損傷します。また水害などでシリンダーの中に水が浸入すると、ウォーターハンマー現象が起こり、エンジンが破損します。ウォーターハンマーとは、非圧縮の水を無理やりピストンで圧縮することによって、コンロッドやクランクシャフトが曲がったり、酷い場合は折損する現象です。
異物混入や水の侵入は、災害や水害にあった場合に起こりうる不具合です。災害に被った直後にクルマを動かす場合は、エアクリーナーのエレメントをチェックして、砂や水が入った形跡がないか確認しましょう。
シリンダーに大量の水が浸入すると、ウォーターハンマーによってコンロッドが曲がったり、折損する恐れがある(イラスト:著者作成)
インパネの警告灯が点灯したらすぐに点検を
クルマのインパネには、故障や不具合などをドライバーに注意、警告する警告灯が装備されています。エンジン関係では、エンジン警告灯、エンジン油圧警告灯、水温警告灯の3つです。
・エンジン警告灯
エンジン/トランスミッションに何かしらの異常がある場合、各種センサーが検知して警告灯が点灯
・エンジン油圧警告灯
潤滑オイル不足や油圧が下がった時に、点灯または点滅
・水温警告灯
冷却水不足やサーモスタット、ラジエーターの作動不良によって、エンジン冷却水が過昇温すると点灯
警告灯が点灯したら、速やかにディーラーや整備工場で点検を行う必要があります。迅速に対応すれば、エンジンブローは回避可能です。
不具合の前兆や警告灯を無視しないで!!
現在のエンジンの信頼性は高く、何か問題が発生したときでも、それを回避するような制御が組み込まれているので、滅多なことではエンジンブローが起こることはありません。
しかし、不具合の前兆や警告灯を無視し続けていると、エンジンが修復不能状態に陥り、エンジン載せ替え費用で50万円以上払う羽目になりかねません。「後悔先に立たず」にならないように注意しましょう。
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みんなのコメント
韓国系や中華系の車は下からの全抜きが出来ない車だと知って置く必要が有る。
稀に、そのような車を日本で所有してる人が自分でオイルパンから抜いてオイル交換した場合には、規定値でドレンコックを締め付けたつもりだろうけどエンジンの振動で徐々に緩んで、オイル漏れを起こしてエンジン焼き付けてしまう。
特に韓国系の車は工業精度が曖昧なだけに注意が必要です。