遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる"ヤングタイマー"なクルマを振り返るのがこのコーナー。今回は数あるイタリア車の中から、まさかのブラーボ/ブラーバを選びましたヨ!!
ボクらのヤングタイマー列伝第27回『MVSヴェンチュリ』の記事はコチラから
ボクらのヤングタイマー列伝:第27回『MVSヴェンチュリ』ポルシェやフェラーリにも負けないフランス製スーパースポーツの意欲作
"ゴルフと本当に勝負する気があるのか!?"というデザインを纏うあたり、さすがイタリア車!
フィアットといえばパンダ、プントや500が日本ではよく知られています。ところがそれはフィアットの車種のごく一部。日本に入ってきていないフィアットは膨大にあります。今回取り上げたのはそんなフィアットの中から、『ブラーボ/ブラーバ』です。ブラーボ(Bravo)は3ドア、ブラーバ(Brava)が5ドアハッチバックでした。厳密には一部が日本の地を正規で踏んでいます。そう、アレです。3ドアが『ブラビッシモ』として販売されていました。ブラーボという車名で販売されなかったのは、単に三菱に『ブラボー』という車種があったからでして……(涙)。
そのブラーボ/ブラーバは1995年に登場。初代フィアット・ティーポの後継モデルにあたるCセグメントのハッチバックです。巨人、フォルクスワーゲン・ゴルフに真っ向から当たるモデルなのにヌメッとしたボディラインで、ブラーバに至ってはスリットのようなテールランプ、ずんぐりとしたフォルムを持ち、"ゴルフと本当に勝負する気があるのか!?"というデザインを纏うあたりは、さすがイタリア車だなと感じるポイントです。
日本では3ドアのごく一部グレードが売られただけのクルマなので、情報が著しく少ないブラーボ/ブラーバ。下は1.2、上は2リッターまで数種のガソリンエンジンと1.9リッターのディーゼルエンジンを横置き搭載する定石どおりのFF車です。さすがにブラーバを運転したことはありませんが、右ハンドル+1.6リッター+4速A/Tというフツーのスペックを持つブラビッシモは、ソツのないとてもよくできた実用車でした。
フィアットって、グランデプントなどもそうなのですが、非走り系の地味~なモデルでも広い車内を持ち、走る、曲がる、止まるという基本的な性能がしっかりしていて、実用車として必要なツボを高いレベルで抑えているのが好きなのです。古のフィアットではリトモのセダン版『レガータ』あたりがそんなクルマでした。あれはシートが抜群に良かったなぁ。まあ、かつてはどんなに実用車として素晴らしくても品質が伴っていないという欠点がありましたが(涙)。
ところで、ブラーボ/ブラーバは2001年にフルモデルチェンジして、エッジが立ったデザインのスティーロにバトンを渡しました。で、そのスティーロの後継はというと、これがまたブラーボなのです。2007年登場の2代目は、ドア数に関係なくブラーボです。でもそのデザインがパッと見グランデプントにそっくり。トリノに行ったらひとまわり大きくてやたらにカッコいいフィアットが大量に走っていて、"これはなんだ!?"と驚愕&混乱した記憶があります。そしてご存知かどうかわかりませんが、その後継の車名にはティーポが復活……。このように、本国フィアット道は奥深く険しいのでありました。
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みんなのコメント
日本仕様のブラビッシモは、アイシン精機製のオートマを載せたのが売りだった。当時のフィアットの日本法人は、日本で車を売ることよりも日本の部品メーカーとのパイプを築くことに全力を挙げていて、ブラビッシモはその結果報告的な役割を課せられた商品だったと思われる。そのせいか、ユーザーレビューでは「(当時の)イタリア車にしては例外的に故障が少ない」「その代わりイタリアらしい走りの楽しさは希薄。地味な普通の車」という評価が目立った。恐らく、トランスミッション以外にも日本メーカーの部品が使われていたのではないだろうか。数の出そうな4/5ドアの車型を選ばなかったのも、そういう内輪のための商品だったからだろう。
全部想い出補正。