現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【名車への道】’71 マセラティ ギブリ

ここから本文です

【名車への道】’71 マセラティ ギブリ

掲載 1
【名車への道】’71 マセラティ ギブリ

クラシックカー予備軍モデルたちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!過去記事はこちら

名門グランプリメーカーが作ったプレステージカー

過去記事はこちら

——今回は取材時に松本さんが見つけた車にしてみました。正直あまり知らない車ですが……。

松本 僕は歴史に残るような車を、車好きの読者を含め、もっと多くの人に知ってもらいたいんだよ。それで、先日取材したときに奥にひっそりと佇んでいたこの車を見つけてね。正直言ってグッときたね。

——みなさんに知ってほしい車、ということですね。

松本 そうだね。僕は基本的に美しい車が好きなんだ。しかも、自分が生まれた1966年あたりのモデルは特に惹かれる。僕が今まで所有してきたモデルも圧倒的にその年代が多いんだよ。

——なるほど。思い出補正みたいなものですね。

 松本 今回の車がこれ、マセラティ ギブリSS。デザインは泣く子も黙るジョルジエット・ジウジアーロなんだけど、この当時はカロッツェリア・ギアというところに籍を置いていたんじゃないかな。

——カロッツェリア・ギアは聞いたことありますね。カルマン・ギアも関係あるんじゃないですか? あと最近までフォード車にバッジが付いていなかったでしたっけ?

松本 おぉ、知ってるねぇ。もちろんカルマン・ギアもそうで、ギアのデザインでカルマン社が製造したモデルだよね。そういえば若い頃、僕はフォード テルスターワゴン・ギアという車に乗っていたんだよ。車がエンブレムに負けてた、不思議な車だったね(笑)。それほど貫禄のあるエンブレムだったなぁ。確か、カロッツェリア・ギアは70年代にフォードに買収されて現在に至っているんじゃないかな。だからフォード車にはいろいろとギアという名が付いているんだよね。

——あー、なるほど。そういう流れなんですね。

松本 さて、今回の名車ギブリSSなんだけど、今見てもこれほど伸びやかでエレガントなボディって、そうそうないんじゃないかと思うよ。アストンマーティン DBSなんかは間違いなく影響を受けているよね。古い映画で恐縮だけど『太陽が知っている』という映画があってね。アラン・ドロンやジェーン・バーキンなどそうそうたる顔ぶれが出演していた映画なんだけど、そこにギブリが出てるんだよ。裕福を象徴する車として登場するんだけど、とても印象に残っていてね。時代の潮流に乗るためにマセラティは60年代から、フェラーリ 410などに代表されるような、ド級のプレステージスーパーツーリングモデルをラインナップしていくんだ。それには、フェラーリのようにグランプリの流れをくんだハートが必要だったんだ。そこで白羽の矢が立ったのが、世界スポーツカー選手権に勝つために生産されたマセラティ 450Sというワークスモデルなんだ。この車のV8エンジンは4.5Lで、400馬力以上を発生していたといわれていてね。相当のポテンシャルをもった純レーシングエンジンだったんだ。そのユニットをベースにしたロードゴーイングカーであり、コンフォータブルなグランツーリスモがギブリなんだよ。

——フェラーリ 275とかデイトナ、ランボルギーニだとミウラとかが同時代ですよね? ライバル的関係だったんですか?

松本 ライバル関係というより、グランプリメーカーであるマセラティが作るプレステージカーこそ、その方向性を示したモデルと言った方がいいね。なんたってマセラティはフェラーリよりも歴史が古く、しかもレーシングカーのみの販売で、国から援助があったアルファ ロメオと互角に戦った会社なんだよ。マセラティも本当はレーシングカー一筋で行きたかったと思うけど、60年代に入る前にワークスが撤退してしまうんだ。その時の最後のワークスエンジンに手を入れたのがギブリが積んでいるエンジンで、V型8気筒としてはまさに最高峰だったろうね。

——話を聞いてるだけでもう凄い車じゃないですか……。

松本 でしょ? ミッドシップやV12に立ち向かうワークス譲りのV型8気筒、そしてFRだからね。しかもエレガントなスタイリング。明らかに他のプレステージカーとは違っていたんだ。ギブリは1966年のトリノショーでデビューしたんだけど、その時は4.7Lまでキャパシティを大きくして、さらにウェーバー製のキャブレターを4基も積んで310馬力を発揮したんだ。最高速度は250km/hだから十分すぎるグランツーリスモなんだよ。1967年から73年までの6年間だけ生産されてね。クーペとスパイダーを合わせて1170台ほどが作られたといわれているんだよ。

 ——かなり少ないですね。ビジネスとして成立してたんですかね?

松本 この当時としては成功した部類だと思うよ。僕が以前に乗っていたポルシェ 911Sがクーペだけで530台、タルガを含めても1200台には届かなかったからね。ド級のプレステージカーとしては大成功なんじゃないかね。しかもアメリカをメインにせずの販売だからね。アメリカ頼みの時代にあってもこういうこびないイタリアン魂は、どんなメーカーでも好きだなぁ。

——ちなみにSSってどういう立ち位置なんですか?

松本 SSはハイパワー仕様のモデルなんだよ。ギブリSSはドライサンプはもちろんだけど4.7Lから5Lまでスープアップして330馬力まで出力を上げているんだ。

——しかし綺麗なボディデザインですよねぇ。

松本 当時、ギブリは一台一台をハンドメイドみたいに作っていて、ビスポークみたいなモデルだったからね。

——なんか他にはないグランドツーリスモ感が伝わってきますね。ただパワーがあるだけではなく上品さもあって。

松本 ホントにわかるの(笑)? 僕が思うには、ただスピードを狙うフォルムやエンジンだけでなく、裕福な人々が好むスタイリングにしてる点がいいんだよね。決して派手すぎないインテリアとのバランスもいいし、英国車に似た気品を感じさせるモデルだと思うんだよね。マセラティの量産FR史上、最初で最後のエレガンスプレステージモデルこそマセラティギブリSSだと思うんだよね。

 

マセラティ ギブリ

ギアに在籍していたジウジアーロがデザインを手掛けた、2シーターのグランツーリスモ。鋼管フレームを用いたファストバックスタイルに仕立てられ、マセラティ初のリトラクタブル式ヘッドライトを採用する。そして1970年、さらに高性能なギブリSSが登場した。※カーセンサーEDGE 2022年8月号(2022年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています文/松本英雄、写真/岡村昌宏

【取材協力】COLLEZIONEカーセンサーEDGE.netはこちら

こんな記事も読まれています

驚速D’station Vantage GT3、初ポールの秘訣はタイヤ、新型の能力、チームの対応力にあり
驚速D’station Vantage GT3、初ポールの秘訣はタイヤ、新型の能力、チームの対応力にあり
AUTOSPORT web
バニャイア、母国で今季スプリント初勝利。マルティンが転倒で、M.マルケスが3連続2位/第7戦イタリアGP
バニャイア、母国で今季スプリント初勝利。マルティンが転倒で、M.マルケスが3連続2位/第7戦イタリアGP
AUTOSPORT web
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #13 【ルノー カングー】
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #13 【ルノー カングー】
グーネット
「悔しい」予選2番手のスバルBRZ。重要な決勝に向けてのセット変更と井口&山内のドライビング
「悔しい」予選2番手のスバルBRZ。重要な決勝に向けてのセット変更と井口&山内のドライビング
AUTOSPORT web
「手応えあり」のSHADE RACINGと「全然わからない」Studie。雨予報の鈴鹿でミシュランの逆襲はあるか
「手応えあり」のSHADE RACINGと「全然わからない」Studie。雨予報の鈴鹿でミシュランの逆襲はあるか
AUTOSPORT web
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #12 【フォード エコノライン】
キャンパーたちのアウトドア系愛車スナップ #12 【フォード エコノライン】
グーネット
商用バン&ワゴン宿命の対決 ぶっちゃけハイエースと日産NV350キャラバンどっちがいいの?
商用バン&ワゴン宿命の対決 ぶっちゃけハイエースと日産NV350キャラバンどっちがいいの?
ベストカーWeb
あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
ペドロ・アコスタ、2025年よりレッドブルKTMファクトリー・レーシングに昇格が決定/MotoGP
ペドロ・アコスタ、2025年よりレッドブルKTMファクトリー・レーシングに昇格が決定/MotoGP
AUTOSPORT web
藤井誠暢「タイヤがすべて」 ファグ「イギリス人だから雨は得意だよ(笑)」【第3戦GT300予選会見】
藤井誠暢「タイヤがすべて」 ファグ「イギリス人だから雨は得意だよ(笑)」【第3戦GT300予選会見】
AUTOSPORT web
初ポール獲得のアレジ「本当に最高。好物をいっぺんに食べているよう!」【第3戦GT500予選会見】
初ポール獲得のアレジ「本当に最高。好物をいっぺんに食べているよう!」【第3戦GT500予選会見】
AUTOSPORT web
D’station Vantageがチーム初ポール。ダンロップの1-2に最重量muta GR86が続く【第3戦GT300予選レポート】
D’station Vantageがチーム初ポール。ダンロップの1-2に最重量muta GR86が続く【第3戦GT300予選レポート】
AUTOSPORT web
W12との別れは「初体験」との出会い ベントレー・コンチネンタルGT スピード プラグインHVの試作車へ試乗
W12との別れは「初体験」との出会い ベントレー・コンチネンタルGT スピード プラグインHVの試作車へ試乗
AUTOCAR JAPAN
「ミラノデザインウィーク」に登場したクルマたちを一挙公開! 一番人気の会場はズバリ「ポルシェ」でした【ユーコ伊太利通信】
「ミラノデザインウィーク」に登場したクルマたちを一挙公開! 一番人気の会場はズバリ「ポルシェ」でした【ユーコ伊太利通信】
Auto Messe Web
スーパーGT鈴鹿でワンツーのトヨタ・スープラから感じられる“キャラ変”「セクター1、2であの速さというのは、今までなかったこと」
スーパーGT鈴鹿でワンツーのトヨタ・スープラから感じられる“キャラ変”「セクター1、2であの速さというのは、今までなかったこと」
motorsport.com 日本版
【正式結果】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 公式予選
【正式結果】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 公式予選
AUTOSPORT web
笹原&アレジ組が初ポール。3メーカー混戦、スピン&トラブル多発の鈴鹿を制す【第3戦GT500予選レポート】
笹原&アレジ組が初ポール。3メーカー混戦、スピン&トラブル多発の鈴鹿を制す【第3戦GT500予選レポート】
AUTOSPORT web
絶好調バニャイヤが決勝レースも勝利! バスティアニーニとドゥカティ母国ワンツー|MotoGPイタリア決勝
絶好調バニャイヤが決勝レースも勝利! バスティアニーニとドゥカティ母国ワンツー|MotoGPイタリア決勝
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1572.02048.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

204.01699.0万円

中古車を検索
ギブリの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1572.02048.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

204.01699.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村