国産車の速度メーターは、普通車の場合、多くのクルマで180km/hが上限となっている(軽自動車は140km/h)。コンパクトカーからミニバン、SUV、セダンなど、エンジン排気量やスペックが全然違うのに、多くのクルマが上限値180km/hとなっているのは何故なのか、そしてこの「180」という数字はどうやって決められたのか!??
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、SUZUKI
なぜ速度メーター上限が180km/hなのか…の理由がまさかの「なんとなく」ってマジか?
180km/hまでしか出すことができないから
現在市販されているすべての国産車は、180km/h以上は出すことができないよう、燃料カットが入る速度リミッターが採用されており、ハイパフォーマンスエンジンを積んだモデルであっても、国産車は例外なく、公道で180km/h以上出すことはできない。これは交通事故を減らすために取り入れられたメーカーによる自主規制。速度超過への対策としては、かつては、105km/hを越えると「キンコン」と鳴る速度超過警告ブザー(速度警告音)なども導入されていたが、音によって集中力を欠くなどの理由で、速度リミッターに置き換わった。180km/hまでしか出すことができないため、表示の上限も180km/hとなっているのだ。
センチュリーの速度メーター。上限はもちろん180km/h表示となっている
180km/hとなったのは「たまたま」!??
ではなぜ「180」だったのか。速度メーターの上限表示が「180km/h」となった理由は諸説ある。よくいわれるのは、「高速道路で100km/hの速度を維持して勾配6%の坂道を登るためには、平坦路を180km/h出せる性能が必要だった」という説だ。だが、たとえば1.5Lガソリン車と3.0Lガソリン車とでは高速巡行を続ける余力は全く異なるなど、クルマによって結果は全く変わってくる。どのような性能のクルマを基準として割り出したのか不明確であり、記録も残っていないようで、疑わしい。
もうひとつが、表示上限を180km/hにすると高速走行しているときにさっと確認しやすい、という理由だ。針で示す速度メーターの場合、表示上限を180km/hにするとちょうど真上に近いところに100km/hのメモリがくる。これは確かにそうなのだが、ただ、上限200km/hにして真上を100km/hにしたほうが分かり易いとも考えられ、180km/hとした理由とするには若干弱い。
筆者が考えるに、おそらく、多くの自動車メーカーがたまたま使っていた上限180km/h表示をもって自工会が決めた、というのが理由ではないだろうか。似たような話で、1989年に当時の運輸省(今の国土交通省)が認定したフェアレディZ(Z32)の最高出力280馬力をもって、自工会が自主規制ラインを280馬力にした、という件もある。おそらく、自動車メーカーが180km/hとしていた理由もそれほど根拠がなく、「なんとなくこのくらいでいいんじゃないの」というレベルだったのではないだろうか。
スイフトスポーツのスピードメーター。上限はなんと260km/hまで刻まれている。ちなみに100km/hは左側の9時の位置にあり、12時の位置には180km/hが表示されている
デジタルメーターによって、表示上限はどうでもよくなった
ただ昨今は、180km/h以上を表示させている国産車が増えてきている。国産スポーツカーの代表例でもある日産GT-R(R35)は、2007年デビュー当初から340km/hだ。燃料カットによる速度リミッターは他の国産車と同じく180km/hにセットされているが、速度リミッターは国内の主要サーキットのパドックに入ったときのみに解除が可能(GPSの位置情報をもとに解除が許される、国土交通省の認可も得ているシステム)であり、GT-Rといえども公道では180km/h以上出すことはできない。
またレクサスは、ISからLS、UXからLXまで、全車が200km/hを超える上限表示となっているほか、トヨタGRヤリスは280km/h、マツダロードスターは200km/h、スズキスイフトは220km/h、スイフトスポーツは260km/hなど、国産モデルでも180km/h以上を表示させるクルマが増えてきた。
また、昨今はデジタルメーターにして、針のメーターを廃止するクルマが増えている。スポーツカーであっても、GRスープラ、GR86、GRカローラなどでは針のメーターを廃止し、かわりにレーシングカーのようにタコメーターを大きく中央へ表示し、シフトチェンジのタイミングを分かり易くしている。
デジタルとなると、「速度の表示上限」という概念自体がなくなる。もちろんクルマの性能としては、どちらも国産車であれば180km/h以上を出すことができないことには変わりはないのだが、フルスケール300km/h超のメーターを積んだスポーツカーに心躍らされるクルマ好きとしては、なんとも寂しい状況。ただ、使いもしない領域の速度の表示など、大半のクルマユーザーにとってはどうでもいいことであり、視認性や無駄を排除して突き詰めれば、針の速度メーターの廃止は当然のことなのかもしれない。
フェアレディZのアドバンスドドライブアシストディスプレイ。写真はスポーツモード表示の場合で、タコメーターのレッドゾーンが直上に来るようにデザインされている
◆ ◆ ◆
もはや表示上限の大きさにこだわる時代ではないようだ。ただ、デジタルディスプレイであっても、たとえばフェアレディZ(RZ34)のように、ノーマル表示モードにすると、針のメーター表示が現れる(スポーツ表示モードだとタコメーターが中心となり、速度は3桁のデジタルとなる)ような、クラシカルな針のメーター表示も残していただけるといいな、と思う。
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みんなのコメント
我々一般人には縁のない事だけどねw
50年前の車やけど