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ちょっと「度を超えた」挑戦? TVR T 400R 346km/hのタスカン ナンバー付きGT1マシン(1)

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ちょっと「度を超えた」挑戦? TVR T 400R 346km/hのタスカン ナンバー付きGT1マシン(1)

340km/h以上のレーサーという、大胆な挑戦

恐れを知らない野心と楽観主義。少量生産のスポーツカー・メーカーを営むうえで、重要な精神かもしれない。ただし、過信は良くない。何事も適量が重要といえる。

【画像】ナンバー付きGT1ル・マン・マシン T 400R ミレニアム前後のTVRたち 3代目グリフィス・プロトも 全126枚

英国のTVRは、時速200マイル(約321km/h)超えのレーサーへ挑んだ。しかし型式認証や製造品質、販売後の保証など、退屈でも重要な現実に直面。資金繰りが悪化し、ブランドの成長を止めてしまった。

TVRは、歴史の浅いスポーツカー・メーカーではない。だが規模は小さく、予算が潤沢とはいえなかった。ほぼゼロの状態から最高速度340km/h以上を誇るホモロゲーション・モデルを開発し、販売することは、少し度を超えた挑戦だったのかもしれない。

今回ご紹介する特別なタスカンは、エンジンやボディ、インテリアだけでなく、シャシーまで、ほぼすべての部品が新たに設計・製造されていた。グレートブリテン島中西部、ブラックプールに構えた、広くないワークショップで。

新車時の価格は、約7万5000ポンド。利益は多くなかったが、小さな金額ではなかった。年間の生産数が1000台以下の、知名度がさほど高くないブランドにとっては、売ること自体も課題の1つだった。

それでも、当時の同社を率いていたピーター・ウィーラー氏には計画があった。1962年以来となる、ル・マン24時間レースへの復帰だ。

視界に入ったスポーツカーレースの頂点、GT1

1970年代には、TVR 1600Mと3000Mがモータースポーツで活躍。TVRタスミンは、1987年の750モータークラブ・チャンピオンシップというイベントで24戦中21勝という、大戦果を挙げていた。あいにく、公道用モデルは作られなかったが。

1990年代に入ると、2代目のTVRグリフィスが信頼性の向上へ貢献。曲線美の2代目タスカンが、ブランドの知名度を牽引した。モータースポーツとの距離が遠くないメーカーとして、ル・マンは挑戦すべきイベントだった。

20世紀末から、TVRは好調の波に乗っていた。しかも、ロータス・エスプリはモデル末期を迎え、300馬力前後のスポーツカー市場に穴が開こうとしていた。ウィーラーの視界には、当時のスポーツカーレースの頂点、GT1クラスがしっかり捉えられていた。

タスカンへ高性能仕様を追加するのに、充分な背景は存在していたといえる。GT1クラスのホモロゲーション・モデルとして、タスカン Rの開発は1999年にスタートした。

主任デザイナー兼エンジニアを担当したのは、同社のジョン・レイブンスクロフト氏。レーシングカー開発で定評のあった、英国のロールセンター・レーシング社との協働体制も組まれた。

スタイリングは、通常のタスカンと酷似していた。しかし、アルミホイールとヘッドライト以外は、GT1マシンとしての専用開発。スチール製のチューブラーシャシーを、軽量・高剛性なカーボンファイバー製パネルが包んだ。

3996cc直列6気筒は405psを達成

21世紀初頭のル・マン24時間レースをGT1クラスで戦うには、フランス・サルト・サーキットのミュルザンヌ・ストレートを320km/h以上で走れる必要があった。そのため、有機的なカーボン製ボディは、風洞実験にかけられた。

普及したばかりのコンピューター支援による設計、CAD技術を利用し、空気抵抗を示すCd値は0.32。最高出力も充分だったが、滑らかなフォルムが346km/hの最高速度を実現した。

エンジンは通常のタスカンにも積まれていた、直列6気筒のスピードシックス・ユニットがベース。 初期のプロトタイプでは3996ccで、最高出力は405psを達成。ボルグワーナー社製のクロスレシオ5速MTと、リミテッドスリップ・デフが、それを受け止めた。

フロアパンは、アルミニウム製のハニカム素材。サスペンションは古典的なダブルウィッシュボーン式で、ガス封入ダンパーとスチールコイルが支えた。フロント側には、1本のアンチロールバーも備わった。

タスカン Rのプロトタイプは、2000年のロンドン・モーターショーでお披露目。 Y276 XBVのナンバーで登録され、パープルのボディカラーが来場者へ鮮烈な印象を残した。

ところが、リアライトは公道用モデルとして必要な型式承認にそぐわなかった。ボディと一体で成形されていたため、リアまわりは再設計に。またル・マンを主催するFIA(国際自動車連盟)の要求に従って、仕様違いの2台を作ることも求められた。

写真でごまかした25台の販売車両の生産

TVRが準備した2種類のプロトタイプの内、片方が4.0LエンジンのT 400Rで、今回ご紹介する車両そのもの。PN02 ZNGのナンバーで登録された。もう一方はPL03 BXYのナンバーで、4.2LエンジンのT 440R。車名の数字は、最高出力を示していた。

さらに、必要に応じて長距離用の大容量タンクを載せた2シーターか、小さな51Lタンクの2+2を選択できるようにした。ただし、想定価格が7万1995ポンドと7万4995ポンドで差が小さく、T 400Rの販売は見送られた。

新しいTVRは英国で話題となり、BBCの人気番組、トップギアではジェレミー・クラークソン氏がドライブ。民放局の人気番組、フィフス・ギアでも、レーシングドライバーのマーティン・ブランドル氏が試乗している。

開発では、2つの課題も浮上した。その1つ目が、FIAのGT1規格をクリアするには、資金難の中で25台の販売車両を生産する必要があること。ところが、審査は資料の提出で良かった。

ウィーラーはそもそも作るつもりがなかったようで、PN02 ZNGのナンバーのT 400Rを、アングルを変えながら撮影し、証拠として写真を提出したらしい。実際に販売されたのは、2台のT 440Rのみだ。

1台目は、英国の実業家、ローレンス・トムリンソン氏が購入。2+2のシートレイアウトが指定された。2台目は、当初はウィーラーが自ら購入。2004年には、TVRを買収したロシアの実業家、ニコライ・スモレンスキー氏へ所有権が移っている。

この続きは、TVR T 400R ナンバー付きGT1ル・マン・マシン(2)にて。

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