この記事をまとめると
■中国の自動車メーカーBYDが日本に上陸し販売を開始する
電気代は高い? 急速充電でも速度が違う? オーナーが語るEV「充電」のリアル
■価格が安価でありながらスペックが優秀と話題になっている
■今後日本市場でどのように生き残っていくのかを考察した
輸入車のBEVが猛威を振う時代がすぐそこまで来ている
日本は「海外メーカーのクルマを売りにくい国」とされる。今は以前に比べて海外メーカー車(日本メーカーの輸入車を除く)の販売比率が増えたが、それでも約9%だ。海外には、自国以外のブランド比率が30%を超える国も多く、海外メーカーのノックダウン工場もある。それが日本では、海外メーカーの4輪乗用車は生産されていない。
つまり日本における輸入車は、販売面では依然としてマイナーな存在だ。しかし、この状況が、今後は変わるかも知れない。それを感じさせるのが電気自動車だ。電気自動車専門ブランドのテスラを含め、メルセデスベンツ、BMW、ポルシェなど、輸入車には日本車に比べて電気自動車のラインアップが多い。
直近では、中国のBYDが電気自動車のシリーズを公表した。このなかでアット3は、全長が4455mm、全幅は1875mm、全高は1615mmのSUV風5ドアハッチバックだ。モーターの最高出力は204馬力、最大トルクは31.6kg-mとされる。駆動用リチウムイオン電池の容量は58.56kWhで、1回の充電により485kmを走行できる。
BYDアット3の価格は440万円だ。経済産業省による補助金額は未定だが、住宅などに電力を供給する機能を備えるため、リーフe+Xなどと同じく85万円の交付を受けられる可能性が高い。そうなると補助金額を差し引いた実質価格は355万円だ。
海外製EVはますます脅威になるかもしれない
電気自動車の価格は、駆動用リチウムイオン電池の容量と航続可能距離に左右される。BYDアット3は、前述の通り駆動用リチウムイオン電池が58.56kWhで、1回の充電により485km(WLTCモード)を走行できる。
このデータは、リーフに60kWhの駆動用リチウムイオン電池を搭載して、450kmを走行可能なe+Xやe+Gに近い。そしてリーフの価格は、e+Xが525万3600円(経済産業省の補助金を差し引いて440万3600円)、e+Gは583万4400円(同498万4400円)だ。
BYDアット3の価格は440万円(同355万円)だから、リーフに比べて大幅に安い。しかも車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションなどを標準装着したから、装備はリーフe+Xよりも少し充実している。従ってBYDアット3の価格は、装備の違いも考慮すると、リーフe+Xに比べて実質的に100万円は安い計算だ。
クルマの売れ行きには、販売店のサービス体制(充電ネットワークを含む)や店舗数、ローンをはじめとする購入のしやすさも大きな影響を与える。とくに電気自動車では、先代リーフが、売却時の査定額を大幅に下げる前例を作った。BYDのような新規参入ブランドは、馴染みが薄く今後の存続も未知数だから、購入には勇気も必要だ。
そこを考えるとBYDアット3が即座に売れ行きを伸ばす可能性は低いが、価格を含めて商品力が高ければ、時間の経過に伴って定着していく。将来的に電気自動車が主力の時代になると、BYDが売れ行きを伸ばすようになるかも知れない
ちなみに、BYDアット3と同じ400万円台(経済産業省による補助金を差し引くと300万円台)には、海外ブランドの電気自動車が少しずつ増え始めた。ヒョンデ・アイオニック5も、価格が479万円で、補助金を差し引くと394万円だ(グレードにより金額が異なる)。
日本における電気自動車は、軽自動車のサイズと親和性が高い。軽自動車はセカンドカーの需要も多く、街中の移動が中心だ。そのために電気自動車を軽自動車のサイズで開発すれば、「1回の充電で走行できる距離が短い」という批判を受けずに済む。その意味でサクラやeKクロスEVなど軽自動車サイズの電気自動車が注目され、今後も堅調に売られるが、小型・普通車サイズについては輸入車に侵略される心配もある。
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そもそもガソリンより不便な電気にガソリンより高い金額を払う理由がない