航続距離600kmを実現するロングレンジRWDが欧州に登場
テスラが売れ筋のモデルYに対して、最長航続距離を実現するロングレンジRWDグレードを欧州で設定。販売台数のさらなるテコ入れを目指しながら、さらに2024年末導入が噂されているモデルチェンジバージョンの「ジュニパー」について、現在までに判明している情報をまとめます。
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まず、モデルYの日本仕様における最新動向について、いくつか紹介していきたいと思います。4月から19インチのジェミニホイールがブラックに変更されていたり、エクステリアデザインに新色のクイックシルバーが採用されていたりと、いわゆるマイナーチェンジを行っています。
その一方で、航続距離や充電性能などのEV性能のアップグレードであったり、さらには生産国である中国市場で適用されているインテリアのアンビエントライトなどの採用が見送られてしまっているために、これら点については残念な部分であると思います。
また、テスラジャパンが追加で行ってきた販売促進戦略というのが、モデルYの全グレードに対して、注文から2カ月以内に納車を完了させることを条件として、追加で20万円分の一律値引きを実施するというものです。
やはり2023年シーズンについては、新型モデルS/モデルXの初期需要、および新型モデル3の初期需要がすべて重なった年であるにもかかわらず、なんと前年割れという厳しい販売台数に留まってしまっていたわけです。
そして、この2024年シーズンについては、その新型モデル3の初期需要の残りくらいしか、現時点で販売台数をプッシュするような材料がなく、果たして2024年シーズン、テスラジャパンがどれほど販売台数を死守することができるのかに大きな注目が集まってます。
そして今回、欧州市場において新たに判明したのが、モデルYに新たなグレードとしてロングレンジRWDグレードを追加したことです。じつはこのロングレンジRWDグレードについては、モデルYが正式発表された2019年当初の計画ではラインアップされていたものの、結局その正式発売後に、RWD、ロングレンジAWD、そしてパフォーマンスAWDという3グレード展開に制限。その後、RWDがラインアップから削除され、中国国内で生産がスタートした段階でRWDグレードが再度復活。そして今回、ドイツ・ベルリン工場で生産されるモデルYに対して、ロングレンジRWDグレードが追加設定されたことになったという経緯です。
それでは、今回のロングレンジRWDグレードについて、どのようなEV性能を実現しているのかを、現在ラインアップされているそのほかのグレード、日本市場でラインアップされているグレードとの違いも含めて簡単に比較しましょう。
まず初めに、モデルYのスペックを詳細に理解したい方が抑えるべきは、製造する工場や販売マーケットにおいて、同じグレードでもスペックが異なるということです。具体的にわかりやすいのがRWDグレードです。
この表で示されているのが、日本やカナダ、オーストラリアなどの東南アジア・オセアニア地域向けの中国製RWD。中国製であり中国市場限定のRWD。そしてベルリン工場製の欧州向けのRWDの3種類です。
まず大きい違いが、中国製については中国CATL製のLFPが採用されているものの、ドイツ製についてはBYD製のLFPが採用されているという点です。バッテリー容量が若干異なることによって、航続距離という点では、20インチホイールを装着する場合、欧州市場で採用されているWLTCモードクラス3において25kmほど違ってきます。それとは対照的に、充電性能についてはBYD製のLFPのほうが大きくリードしています。
また現在、中国製のRWDのなかでも、中国向けとそうでない場合でスペックが異なっている状況です。こちらはバッテリーは同じであるものの、搭載モーターが異なっています。中国市場向けには220kW、440Nmを発揮するモーターが搭載されていることで、その加速性能が大幅に向上。よって日本向けはゼロヒャク加速が6.9秒であるものの、中国向けは5.9秒と、動力性能が大幅に改善されているわけです。
そして、本題のロングレンジRWDグレードに関しては、WLTCモードクラス3において、最大600kmという航続距離を実現しています。この航続距離の長さを、すでに本国内でもラインアップされているロングレンジAWDグレードと比較してみると、35km分の航続距離延長ということになります。
やはり、同じLG製バッテリーを搭載しているものの、前輪側モーターが存在しないことで、その分だけ車両重量の軽量化に成功しており、具体的には欧州市場において20kg分の軽量化に成功していることから、電費性能が向上しているわけです。
ジュニパーはバッテリー変更で航続距離も伸長する見込み
また、ロングレンジRWDは、RWDグレードよりも車両重量が50kgも重いにもかかわらず、その加速性能はゼロヒャク5.9秒を実現。これは中国国内向けに採用されている新型の高出力モーターが搭載されていることで、加速性能を引き上げることができているわけで、RWDグレードの弱点でもあった動力性能に対しても妥協する必要がなくなっています。
そして、なんといっても注目はその値段設定です。ドイツ市場においては4万8990ユーロから発売されており、RWDグレードと比較すると4000ユーロアップするものの、ロングレンジAWDグレードと比較すると6000ユーロも安価に購入することが可能です。
RWDグレードでは航続距離の長さが物足りず、かといってロングレンジAWDでは1万ユーロも高額となってしまっていることで購入を躊躇してしまっていたユーザーにとっては、たったの4000ユーロで航続距離155km分を追加しながら動力性能も引き上げることができるということになり、非常に魅了的なグレードが追加されたことになったわけです。
そして問題は、このロングレンジRWDグレードが日本国内に導入されるのかという点です。結論としては、その導入はまだまだ先となるのではないか、もしくは導入されないと推測しています。
というのも、このロングレンジRWDはドイツでのみ製造されていることから、中国で製造されないと日本に導入されることはないという点。さらに、もしも中国で生産されたとしても、問題は中国国内を優先とすることで、日本導入は数四半期先となる可能性があるという点。
そしてもっとも重要なのが、モデルYのモデルチェンジバージョンである通称「ジュニパー」の導入が、いくつかのリーク情報では2024年末までに行われる可能性があるという点です。そうなると、少なくともジュニパー登場までは、ロングレンジRWDを日本で購入することはできないはずです。
一方で、このジュニパーに期待されているのが、搭載バッテリーの変更です。現状、噂されているのがCATL製のM3Pバッテリーです。これにより、航続距離の長さが懸念材料であったRWDグレードが、大きく性能改善される見込みであり、するとロングレンジRWDをわざわざチョイスする必要もなくなる可能性も出てきます。よって、そもそもテスラ側も、ロングレンジRWDをラインアップしない可能性も出てくるわけです。
そして日本国内の移動という点でいえば、現時点におけるRWDグレードでは、EPA基準で400kmジャスト程度という航続距離の絶対的な短さを指摘せざるを得ません。これが、440-450km程度に到達すると、別にRWDグレードであったとしても多くの需要を満たすことが可能であり、ラインアップ数を少なく抑えるという点でもRWDグレード一本で済むことから、ロングレンジRWDを日本国内で導入する意味は限定的となるのではないかと推測できるでしょう。
いずれにしても今回、欧州でモデルYに対してロングレンジRWDグレードが追加設定され、長距離走行の需要が大きい欧州市場でコストと航続距離のバランスが取れたことで、さらなる販売台数の増加に期待することが可能です。
他方で、
・あくまでもドイツ製に限定されており、「ジュニパー」の登場が控えていることもあって、日本への導入の可能性は現状低いという点 ・そのジュニパーの登場とともに期待されているRWDグレードの航続距離延長があれば、そもそもRWDグレードでこと足りてしまう点 ・LFPとは異なり、ロングレンジバッテリーの三元系については充電残量を8割程度に制限することも推奨されている点
これらを考慮に入れると、日本国内においてはロングレンジRWDグレードはおすすめグレードにはなり得ないというのが個人的見解です。
日本市場向けのモデルYに対する、ジュニパーをはじめとする最新情報がわかり次第、定期的に情報をアップデートする予定です。
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