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かつて専売車種を置き「多チャンネル化」していた新車ディーラーが「統合」された悲しい事情

掲載 更新 29
かつて専売車種を置き「多チャンネル化」していた新車ディーラーが「統合」された悲しい事情

 この記事をまとめると

■2020年5月よりトヨタ系ディーラーが全車併売を開始した

同じ中身なのになんでこんなに差が付いた! 明暗クッキリ兄弟車の勝ち負け4選

■振り返ってみると過去、多くのメーカーが多チャンネル展開していた

■なぜこのような販売方法をとっていたのかについて解説する

 かつては各販売店に専売車が多く存在した

 最近の新車ディーラーの話題といえば、トヨタ系ディーラーが2020年5月よりトヨタ系正規新車販売ディーラー全店での全車併売(すべての店で原則すべての新車の購入ができる)をスタートさせたことが大きなトピックといえよう。全店併売後も多くの地域で、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店という4チャンネル体制が残っている。

 そしてチャンネルごとに資本の異なる販売会社となっていることが多いのに、全店併売化となったことで、たとえばルーミー同士など、同一トヨタ車同士の値引き競争がチャンネル間で激化している。消費者目線でいえばいまの状況は完全に“ウェルカム”なのだが、今後はチャンネル統合というものが各地で目立ってくることになるだろう。

 新車販売ディーラーの多チャンネル系列というと、いまではトヨタが目立つが、かつては多くのメーカー系ディーラーで多チャンネル化、そしてそれに伴う専売車のラインアップが盛んに行われていた。

 日産はいまでは、店舗外装などのイメージは統一しているが、そのなかに日産店、プリンス店、サティオ店が存在している(一部地域は除く)。そして、全店舗で全日産車が購入できるようになっている。そのため、前述したトヨタ系ディーラーと同じように、たとえばノート同士で値引きを競わせることが可能となる地域が多い。

 サティオ店はかつてサニー店と呼ばれ、さらに過去にはチェリー店まであった(いまでも一部存在している)。過去には日産店はブルーバード、プリンス店はスカイライン、モーター店はローレル、サニー店はサニー、チェリー店はチェリー(パルサー)といった専売車が各チャンネルに用意されていた。

 ホンダ系は、かつてクリオ店、ベルノ店、プリモ店を展開していた。いまは“ホンダカーズ”と屋号や店舗メージなどを統一しているが、会社名が以前のまま(ホンダクリオ●●といった感じ)ということも多い。クリオ店はアコードやレジェンドなどの上級車、ベルノ店はインテグラ、プレリュードといったパーソナル&カジュアルモデル、プリモ店はシビックや軽自動車などコンパクトカーなどが、それぞれ専売モデルとなっていた。

 ホンダカーズになってからは、全店全車種扱いとなったが、その後”スモールストア(コンパクトカーや軽自動車中心)”、”クオリティセレクト(上級車中心)”といった、”なんちゃって販売チャンネル分け”のように店舗選別を行うようになっている。

 マツダ店をメインに、マツダアンフィニやマツダオートザムといった名称のディーラーがあるマツダだが、現在ではどの店舗でもすべてのマツダ車を購入できる。

 しかし、バブルのころにはマツダ店、マツダアンフィニ店、マツダオートザム店、ユーノス店、オートラマ店とかなり積極的な多チャンネル化を進め、専売車を置いていた。

 “5チャンネル時代”ともいわれた当時は、たとえば、マツダブランドでミドルサイズセダンとなるクロノスというモデルがあったが、これはマツダ店扱いとなり、マツダアンフィニ店にはMS-6及びMS-8、ユーノス店にはユーノス500、オートザム店にはクレフ、オートラマ店にはフォードテルスターといった姉妹車がそれぞれラインアップされていた。

 また、アンフィニ店はRX-7、オートザム店はスズキからのOEM軽自動車、ユーノス店にはコスモやロードスター、さらにはシトロエンなどの一部輸入車、オートラマではフォードブランドのマツダからのOEM車と輸入フォード車などが専売車種としてラインアップされていた。

 つまり、専売モデルを有する販売ディーラーの多チャンネル展開というのは、過去には珍しいものではなかった。なぜそれがなくなってきたのかというと、日本の新車販売市場の縮小化に歯止めがきかないことがある。

 マツダが5チャンネル体制を構築したころ、つまり日本がバブル経済真っ盛りだったころに比べると、1990年(暦年/1月~12月)の日本国内での年間新車販売台数は約777万台となり、日本の新車販売台数はこれを頂点にいまもなお基本的に下降傾向が続いている。2020年はコロナ禍で一時的に大きく落ち込んだのであまり参考にならないので、2019暦年での年間販売台数を見ると約519万台となっており、1990年比で200万台以上落ち込んでいることになる。

 現在の中国の動きと根本は同じ!?

 一時の勢いはなくなってきているとはいうものの、まだまだ成長市場である、世界一の自動車マーケットとなる中国では、販売ディーラーの多チャンネル化は未確認だが、個々のメーカーでブランドの多角化は熱心に行われている。

 いまはコロナ禍で行くことができないが、筆者はコロナ禍前には毎年2回、春には北京か上海、秋には広州へモーターショーの取材に出かけていた(北京と上海は交互に隔年開催)。成長著しい中国の自動車産業は年1回だけウォッチしていたのでは“浦島太郎状態”といっていいほど、ガラッと様子が変わってしまうことが多い。最低でも年2回、複数のモーターショーを見てまわらないと情報整理が追いつかないのである。

 その追いつかない情報のひとつが“新ブランド”である。まったく新しいEVベンチャーのようなものもあるが、すでに完成車メーカーとして実績を積んできているメーカーが新たなブランド展開を始めることも多い。ファストファッションで例えると、ユニクロのようなメインブランドのほかに、GU(ジーユー)のようなお手軽ブランドを新たに始めたり、その逆でメインブランドより上級志向のブランドを立ち上げたりしているのだ。

 大手が零細完成車メーカーを買収して自分のブランドにしたりもしているので、エクステリアデザインはもとより、パワートレインなどにまったく共通性がなく、新ブランドとなっていることもあるので、見かけない新しいブランドがどのように誕生したかを調べるだけでも相当手間取るのである。

 このような中国の動きと、かつて日本で専売車種を設けた販売ディーラーの多チャンネル化が当たり前だったころは、根っこの部分では置かれた状況は同じといっていいだろう。新車販売市場が成長途上となっており、消費者の間でとにかくクルマというものがあらゆる面でトレンドとなり、生活の中で話題になることも多いほど注目されているのである。そのためいまの中国やかつての”バブル”のころの日本のような時期、つまり新車販売にまだまだ”のびしろ”がある時は、ニューモデルを出せば出すだけ売れるのである。

 世の中の新車に対する注目度は高く、「稼ぎが良くなったらクルマを持ちたい」という願望を強く感じる、いまの中国の様子は、筆者がかつてリアルワールドで見ていた日本のバブルのころの新車販売現場の様子を彷彿させる。専売車種を含め、クラスやキャラクターが似ている車種を集め、その扱い車種に合わせた店舗イメージなどに特化して多チャンネル展開するのは、そのクルマを気に入っているひととしては、より購買意欲を刺激され、新車販売市場が成長途上にあるころには、販売促進に対してはむしろより効果的だともいっていいだろう。

 ただし、専売車種や多チャンネル化は、新車販売市場が落ち込んで行けば、当然規模の縮小が行われていく。日産自動車は1999年にルノーと資本提携を結ぶと、さっそく国内の販売体制の再編を始めた。まずは、日産店とモーター店をブルーステージ、プリンス店、サティオ(サニーがなくなったのでサニー店が改名)、チェリー店をレッドステージとして、まずは、ブルーステージ内、レッドステージ内での全車取り扱いを行いながら、販売会社や販売車種の統廃合などの再編を進めた。そして、その後ブルー/レッドステージの2系列を2007年に廃止し、いまに至っている。

 苦境を脱するためにルノーとの提携を進め、国内販売体制の再編によりスリム化が進むなか、2002年にスズキからのOEM(相手先ブランド製造)となる軽自動車“モコ”がデビューした。当時はまだセドリックなどFR大型セダンもよく売れていたのだが、軽自動車のほうが売りやすく、よく売れたので、次第に販売現場が軽自動車、そしてコンパクトカー、ミニバンなどを積極的に売るようになり、店舗もキッズコーナーを充実させたり、子どもが喜ぶ店内装飾を施すなど、ファミリームードに溢れるものとなってきた。

 すると、代々セドリックなどの上級セダンに乗ってきた”お得意様”のなかには、「このような雰囲気のなかでは購買意欲がわかない」として、日産から去る(別ブランドへ流れる)といった動きも顕在化した。全店併売化はそのメーカーの新車がすべて買えるという利便性はあるのだが、結果的に売りやすいクルマだけばかりが売れるようになり、消費者としては選択肢の減少を加速させるリスクも孕んでいるのである。

 トヨタ系ディーラーで見れば、トヨタ店はクラウンやセンチュリーを専売していたので、店作りもかなり特徴的で、各店舗には個室となる商談スペースが用意されている。かつてトヨペット店ではマークIIが看板車種だったので、トヨタ店に近い雰囲気を持っている。

 これがカローラ店やネッツ店となると、いきなりファミリー的、カジュアル的な店舗作りとなっている。扱い車種の”クラス”をチャンネルごとに分けることは、そのチャンネルに行かなければならないという不便なところもあるが、それぞれの売りやすい環境を店舗内に維持することもできるので、結果的にメーカーとしてはまんべんなく新車を売ることができるというメリットがあるのだ。

 トヨタがいまも、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計の車名(通称名)別販売ランキングを見ると、他メーカーより偏りなくまんべんなく新車を売っているのは、長い間専売車種を残し、多チャンネル体制を維持してきたからといってもいいだろう。

 かつてカローラが“ベストセラーカー”と呼ばれていたころ、1500cc車が販売のメインとなっていたのだが、1800ccが販売のメインとされた兄貴格のコロナ(トヨペット店)、カリーナ(トヨタ店)にも1500ccモデルがラインアップされていた。

 そして、「俺はクラウンもあるトヨタ店扱いのカリーナがクラウンの流れも汲んでいるのでいい」や、「カローラよりも歴史があるし(当時)、マークIIは正式には“コロナ マークII”だ(当時)」などと、「カローラは売れすぎていてどうも」というひとたちが、それぞれのこだわりで、同じ1500cc車であっても、あえてカローラをチョイスしないひとも多く、よく売れていた。

 しかし、世の中のクルマ離れ(積極的な興味がなくなった)が進み、少子高齢化が進み、今後も新車販売市場の縮小が避けられないなかでは、専売車種やその専売車種を持つ多チャンネルディーラーの存在は、消費者から見れば「面倒くさい」となり、販売促進をむしろ阻害する存在になってしまったといっても過言ではない。

 以前、まだ全店併売化を実施していないころ、トヨタディーラーを訪れるお客のなかには、「ここはどんなクルマを扱っていますか?」などと聞かれることも珍しくなかったとのこと(それだけ世の中のクルマへの興味は薄れていった)。

 全店併売化前にはそんなトヨタディーラーでも、C-HRなど新しいモデルやハイブリッド車は全店扱いとなることが多かったので、国内販売では圧倒的なシェアを持つトヨタでも、専売車や多チャンネルの限界はすでに感じていたのかもしれない。専売車種や多チャンネル化は、メーカー全体で見た時の車種ラインアップ数の削減も進めにくいことにもなるし、消費者のクルマに対する“熱量(関心の薄れ)”ダウンや、消費者ニーズ(店舗ごとの雰囲気の作り分けよりもすべてひとつの店で買えるという利便性)の変化に対応するため、いわゆる”モノディーラー化(同じブランドの店ならば、どこでもなんでも売っている)”が進んできたといっていいだろう。

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みんなのコメント

29件
  • 日産は、レッドステージとブルーステージになったこともあったよね。
  • あっちの系列に投入された姉妹車の方がデザインいいじゃあないか!
    みたいな販売店スタッフ同士のやりとりはよくあった、とか
    勤めている知人は言ってたな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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