軽メーカーの雄、スズキ・ダイハツの名4モデルの最も売れた時代を調査。当時の時代背景もご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年2月26日号に掲載した記事の再録版となります)
解説/片岡英明
アルト ワゴンR ジムニー ミラ……スズキ・ダイハツの名モデルたちが最も売れた時代
■スズキ 3代目アルト(1988年~1994年)…約122万台
スズキ 3代目アルト(1988年~1994年)
●スズキ 3代目アルトの魅力
550cc軽カーの時代に、税制の盲点をついてボンネットバンブームの火付け役となったのがアルトだ。
初代モデルは徹底してシンプルな設計とし、驚異的な激安価格を打ち出した。2代目ではベビーギャングのワークスを送り込む。3気筒DOHCインタークーラーターボはパワフルで、高回転まで元気いっぱいだった。
3代目アルトは1988年秋に登場。使い勝手のいいスライドドアのスライドスリムを仲間に加え、高性能エンジンを積むワークスは丸型ヘッドランプやエアロパーツを身にまとって独立したグレードになっている。もちろん、走りの実力も引き上げられた。
1990年春には排気量を660ccに拡大。消費税の導入に伴って商用車のメリットが薄れたためフロンテを吸収。乗用登録モデルを主役の座に就け、ユーザー層を大きく広げている。
ワークスはフツーのアルトと大きく差別化を図ったことが好調な販売に結びついた。ファミリー系は使い勝手のいい5ドアHBが中心となり、排気量も増えたから売り上げを伸ばした。
●全世代に見る3代目アルトの売れっぷり
約84万台を売った初代、約93万台を売った2代目も立派だが、唯一国内累計販売台数で100万台を突破したのは3代目。4代目以降は身内にワゴンRが現われたこともあって、それまでの勢いに翳りが見られはじめた
●スズキ 3代目アルトの諸元(lb)
・全長3195×全幅1395×全高1410mm
・ホイールベース:2335mm
・車重:620kg
・エンジン:直3SOHC
・総排気量:547cc
・最高出力:42ps
・最大トルク:4.4kgm
・価格:78万8000円
●ちなみに…1988年はどんな年だった?
ラニーニャにより世界各地で異常気象。世間を騒がせたのがリクルート事件。F1ではA・セナがマクラーレン・ホンダで初戴冠。クルマ界ではシーマ現象ね。
■ダイハツ 2代目ミラ(1985年~1990年)…約161万870台
ダイハツ 2代目ミラ(1985年~1990年)
●ダイハツミラ2代目の魅力
爆発的なヒット作となったアルトの刺客としてダイハツが送り込んだ個性派のボンネットバンがミラ。乗用車シリーズはクオーレを、商用登録のボンバンはミラクオーレを名乗って1980年6月にデビュー。ヨーロッパのコンパクトカーを思わせるキュートな1.5BOXフォルムが女性を中心に人気だった。
ミラとクオーレは、1985年夏にデザインだけでなくシャシーからパワーユニットまで一新したL70系にバトンタッチする。ボンネットは一段と短くなり、快適に座れるように背を高くした。ボンバンでも気持ちよく座れるなど、パッケージは秀逸だ。
メカニズムにも強いこだわりが見られる。シャシーは新設計だし、FF車はストラットとセミトレーリングアームの4輪独立懸架をおごった。エンジンは新開発のEB型3気筒SOHCユニットだ。547ccで、フラッグシップのターボTRとエアロパーツ装着のTR-XXは空冷式インタークーラーターボで武装。廉価モデルから実用性と走りの実力が高かったから引っ張りダコの人気者になったのだ。
●全世代に見る2代目ミラの売れっぷり
スポーツグレード、TR-XXが初めて設定されたモデルが2代目。3代目も累計で120万台以上販売するなど高い人気を誇った。月平均販売台数が3000台ほどで、やや影が薄い現行ミラの姿からはチト想像できない
●ダイハツ 2代目ミラの諸元(クオーレターボCR)
・全長3195×全幅1395×全高1415mm
・ホイールベース:2250mm
・車重:590kg
・エンジン:直3SOHCターボ
・総排気量:547cc
・最高出力:52ps
・最大トルク:7.1kgm
・価格:87万5000円
●ちなみに…1985年はどんな年だった?
日航ジャンボ機墜落事故発生。いじめ問題が深刻化。関越自動車道が全線開通したのもこの年。大阪ではプロ野球の阪神タイガースが優勝して大フィーバー!
■スズキ 3代目ワゴンR(2003年~2008年)…約106万台
スズキ 3代目ワゴンR(2003年~2008年)
●スズキ 3代目ワゴンRの魅力
1993年秋に登場し、ハイトワゴンブームをけん引したのがワゴンRだ。デビューした時は運転席側のドアが1枚、助手席側ドアは前後2枚の変則ドアだった。だが、途中で5ドアHBを加え、大ブレークしている。
爆発的に売れて軽自動車の代表車となったが、最も成功したのは2003年に登場した3代目。走りの実力だけでなく内装の質感も高め、キャビンもひとクラス上の広さと快適性を誇った。またエンジンのクリーン化など、環境対策にも熱心に取り組んだ。
3代目ワゴンRはデザイン的な面白みはないが、ボディ先端の見切りがよく、ビギナーや小柄な女性でも運転しやすい。また、パッケージングがよかった。キャビンは広いだけでなく居心地がいいのだ。また、ラゲッジルームの広さと使い勝手も一級だったのも人気に拍車をかけた。
そしてヤンママをひきつけたのがスポーティな顔立ちのスティングレー。フロントマスクを変え、エアロパーツを装着したスティングレーを最後に投入したが、この戦略が成功。販売の上乗せに大きく貢献していた。
●全世代に見る3代目ワゴンRの売れっぷり
昨年9月にデビューしたばかりの現行5代目も、12月までの段階で約6万台を販売するなど好調。総じてワゴンRの販売台数はどのモデルも優秀で、2代目も106万台を売った人気モデルだったりする。立派なもんです
●スズキ 3代目ワゴンRの諸元(FX)
・全長3395×全幅1475×全高1643mm
・ホイールベース2360mm
・車重820kg
・658cc
・直3DOHC
・最高出力54ps
・最大トルク6.4kgm
・価格101万3000円
一時代を築いた横綱貴乃花が引退。日経平均株価が7607円88銭の大底を記録。世界的な出来事ではイラク戦争が開戦。野中広務氏の「毒まんじゅう」が流行語大賞に。
●ちなみに…2003年はどんな年だった?
* * *
【番外コラム】軽SUVの名門。スズキ ジムニーが輝いてたのは?
現在、軽SUVとして唯一*残る存在になったジムニー(*執筆当時)。アーバンSUVが裸足で逃げ出す、優秀すぎる悪路走破性などからも、まさに「名門」と呼ぶにふさわしいモデルだ。
で、そのジムニーの「一番輝いていた時代」を調べてみたのが下の表。ジムニーはモデルライフが長く、同じ代のなかでもフルチェンジ級の変更があったりして判定が難しいが、とりあえず販売台数No.1は2代目という結果になった。
スズキ ジムニー
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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