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3億円超のアルファ・ロメオの入手方法──新型33ストラダーレに迫る!

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3億円超のアルファ・ロメオの入手方法──新型33ストラダーレに迫る!

アルファ・ロメオの新型「33ストラダーレ」は、世界でたった33人のオーナーが幸運にも手に入れられた。ほかのモデルとはまったく違う特殊なオーダープラグラムとは? そして、日本人で唯一、購入権を得たオーナーにも迫る!

33ストラダーレの成り立ち

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アルファ・ロメオのティーポ33ストラダーレの復活がアナウンスされたのは2022年のF1イタリアGPで、1年後の昨年8月30日には全貌が明らかにされた。

「自動車史上、もっとも美しいスポーツカー」と、評される“33”の復活は、同時に、このブランドが高額少数生産車、いわゆるフューオフへの半世紀ぶりの回帰を意味する。これも大きなトピックスだ。

以来、ネットは(33ストラダーレの)次は「デュエット」だ、いや「ディスコヴォランテ」らしいと大いに沸いている。ちなみに今回の車名はティーポを外してシンプルに33ストラダーレとされた。

フューオフのポイントはカスタマイズ化。その流れは33ストラダーレの場合、最初にオーナーと専属スタッフによる仕様の取りまとめが行われ、続いて専門家で構成されるチームで点検を受ける。承認が下りると開発部門に発注というもの。製作はかのトゥーリング・スーパーレッジェーラ社で行われ、もちろんハンドメイド。“世界に1台だけ”にはシャシーナンバーも含まれ、アルファを示すZAR、車両コード33STRに続く8桁の数字のうち、最初の6桁はオーナーが決めるという。残り2桁はロットナンバーだ。要望を聞いてすべての仕様をとりまとめるのは「ボッテガ」(工房)の仕事、それを協議するチームはアルファ・ロメオCEOを責任者にデザインやヘリテージ、レースなど8部門のエキスパートで構成され、「33コミタート」(33委員会)と、呼ぶそうだ。おそらくこの流れや組織体制を雛型として今後フューオフが製作されるのだろう。

生産台数は車名にちなんで33台。未だ値段は伏せられているものの、日本円に換算すると3億円をラクラク超えると噂されている。驚愕のハイプライスながら、1967年デビューの33は当時の最高価格車だった。アルファロメオ「ジュリア」の8倍、ランボルギーニ「ミウラ」より15%高額だったというからこの点でもオリジナルに忠実である。ちなみにこちらのシャシーは18台製作され、そのうち12台に鬼才自動車デザイナー、スカリオーネの手がけたボディが架装されてエンスージアストのもとへ。残り6台はカラボ(ガンディーニ)やイグアナ(ジウジアーロ)に生まれ変わり、これまた自動車史上にその名を残す。

今回のプロジェクトで驚かされたのは、まだ最終デザイン、サイズやパワートレイン未公表の段階で予約が埋まったということ。それどころか33人を遥かに超える数の希望者が手を挙げたそうで、プロジェクト責任者のクリスティアーノ・フィオリオによると、予想していた“顧客を探す”仕事に代わって“オーナーに相応しい人をセレクトする”作業がおこなわれたという。昨年8月末の正式発表の段階で33人の幸せ者は決定済み。すでにカスタマイズが始まっていたようだ。

書類審査を経て購入権を獲得した幸運な日本人オーナーとは

日本からエントリーしたのは20人強。書類審査で5人に絞られ、そこからひとりが選ばれた。幸せ者の名前を内野徳昭。1927年に設立された内野製作所の3代目で、1960年生まれだ。ミシンの修理、織機から始まった内野製作所は、現在、四輪二輪を問わずすべての日本メーカーのプロトタイプ用ギヤ製作を主軸に、ホンダのF1や二輪レース、トヨタのWEC参戦車両、ニスモ、ホンダ、トヨタのスーパーGT500のエンジンギアなどを手がける。

所有する自動車は現在24台で、7台がイタリア車。フェラーリは4台。「458ピスタ」以外はクラシックで、308GTBは軽量グラスファイバーボデイの与えられた希少モデル。アバルト「750GTザガート」は1957年型である。アルファ・ロメオは2台。1台は「4C」で、これは彼にとって3台目の4Cにあたるそうだ。赤、白と乗り継ぎ、現在はブルーのスパイダー・スペシャルモデル。もう1台は「ジュリアGTA」。ジュリアは2台目で赤のクアドリフォリオから乗り換えた。このGTAはなんと通勤の足、日常的に使っているという。「気を変えたくなったら4Cで出勤しています」。スバラシイ。

もう分かると思うが、内野氏は日常の足としてアルファと触れ合ううちにクルマとしての良さやドライビングの楽しさを感じ取った。それで今回のプロジェクトにエントリーしたのである。

一方でアルファ・ロメオ側が33ストラダーレを彼に託すことにしたのは、収集の目的ではなく、走ることが好きで、クルマをよく知り、自動車を愛することが伝わってきたから。くわえて彼のアルファ・ロメオのナンバープレートは2台とも33。“理想的なスポーツカー”に敬意を表してこうしたのだという。

「これ以上 ぴったりなオーナーは世界を見渡してもいない」とはプロジェクト責任者の言葉。「何より……」と、こう続けた。

「我々は内野氏の人柄に魅せられたんです。自動車への愛情と知識、ドライビング経験も去ることながら、控えめで自然体、高飛車なところのまったくない温厚な人柄。アルファ・ロメオは自動車好きの心に寄り添うブランド、フューオフの世界に足を踏み入れてもそれは変わらない。彼の存在と人柄がこれを証明してくれると思います」

33ストラダーレをライブで見るとその存在感に圧倒される。凝ったディテールとクリーンなラインが見事に調和し、優れた質感が際立つ。機能と美の融合というアルファのデザインが如何なく発揮されたマスターピース。オリジナル同様、この先語り継がれる自動車になると思うが、一方で値段が値段だけに、承認欲求や爆買いのツールに成り下がってはあまりに残念だ。

しかし本人に会ってこの懸念は払拭された。プロジェクト責任者が言った通りの人柄。個人的には“品のある自然体”がもっとも印象に残った。本当のお金持ちというのはこういう人のことをさすのかもしれない。

内野徳昭は世界に散らばる33人の幸せ者のひとりだが、何より海をわたってこういうヒトと暮らすことになる33ストラダーレこそ、幸せ物である。

文・松本葉 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

9件
  • xqx********
    かつてギャラリーアバルト自動車美術館でオリジナルのティーポ33ストラダーレを見た印象は美しさと共に各部の作りがしっかりしてる感じで、そうした面も含めて使える美術品なんだと言う存在感があった。
  • まろまろ
    初代の無駄の無い美しい曲線美
    新型336空力的にも優れた曲線なのだろう
    ホイールは、初代のがカッコイイ!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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