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【試乗】スマートフォーツーmhdは、実は「ハイブリッドカー」ではなかった【10年ひと昔の新車】

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【試乗】スマートフォーツーmhdは、実は「ハイブリッドカー」ではなかった【10年ひと昔の新車】

2008年12月、メルセデス・ベンツ日本から環境性能を高めた「スマートフォーツーmhd」が登場した。「mhd」はマイクロ・ハイブリッド・ドライブの略称だが、エネルギー回生は行うものの電気モーターを動力源に使うことはなく、アイドリングストップ機構を備えることを示していた。ストップ&ゴーを繰り返すシティコミューターとして、「mhd」にはどんな狙いがあったのか。ここでは登場後まもなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年2月号より)

10・15モード燃費は約24%も向上して23.0km/Lをマーク
2人のためのミニマム・トランスポーターとして、すでに10年以上も前に世界の先陣を切って具体的提案を行ったスマートのプロジェクト。そんなスマートがさらなる時代の追い風を捉えるべく、最新モデルの心臓部に新たなデバイスを加える決断を下した。車名に加えられた「mhd」の記号が示す「マイクロ・ハイブリッド・ドライブ」システムの採用がそれだ。これにより、新型フォーツーの日本の10・15モードによる燃費性能は23.0km/Lという値をマークする。これは、従来型よりも約24%の向上に相当する。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

もっとも、前述の「マイクロ・ハイブリッド・ドライブ」というフレーズについては、実は少々注釈が必要だ。日常のニュースの中などでもすでにごく一般的に耳にするようになったハイブリッドという言葉。それはそもそも「異種交配種」という意味を持った英語から来たものだ。転じて自動車の場合には、異なる種類のパワーソースを備えたモデルを示すものとして使われる。そして現段階では、専ら「エンジンと電気モーターの2つを動力源として用いるクルマ」を指すものとなっている。

ところが、スマートmhdの場合にはその動力源に電気モーターを採用してはいない。すなわち、このクルマのモデル名に使われるハイブリッド・ドライブというフレーズは、エンジンとモーターの双方を備えることを示してはいないのだ。

となると、厳密にはこのモデルはいわゆる「ハイブリッドカー」としての定義は満たしていないとも受け取れる。このクルマに与えられたハイブリッド・ドライブという一節は、エコロジーに強い配慮を行ったこうしたモデルを世に送り出すダイムラーがマーケティング上で戦略的アピールを行うための、「イメージ・フレーズ」と考えた方が適切かも知れない。

それでは、そんなスマートmhdに与えられた新デバイスの肝とは一体何か? それはいわゆるアイドリングストップ装置である。そして、その装置が作動するロジックはいたってシンプルでもある。

車速が8km/h以下、アクセルはOFFでブレーキON。基本的にはこの条件を満たしていればアイドリングストップを実施。スピードメーター右横に設けられた「ECOインジケーター」の点灯でそれをドライバーに知らせる。一方でブレーキペダルをリリースすると即座にスターターモーターが回ってエンジンを始動。スタータージェネレーターの作動で再度エンジンに火が入るまでの時間は「わずか0.35秒」であるという。これが、全テスト時間660秒の内、アイドリング時間が28%近くの183秒にも及ぶ10・15モード試験における燃費を大幅に向上させる、唯一最大の要因でもあるわけだ。

アイドリングストップ後のエンジン再始動は非常に早い
そんなスマートmhdの実際の走りの印象は、良くも悪くもアイドリングストップ状態を明確に体感させるものだ。前述のように速度が8km/h以下になるとすでにアイドリングストップを行う条件を満たすため、日常シーンでも市街地での走行ではかなり頻繁にエンジン停止が行われる。信号待ちのため速度を落としながら前車に接近すると、すでに目標停止位置の数m手前でエンジンが停まって「惰性走行」に移る印象だ。

一方で、そうした状態からブレーキをリリースすると、なるほどエンジン始動はなかなかに素早い。ただし、スターターモーターの回転フィールは従来のスマートとほとんど変わらないから、ECOインジケーターの点灯/消灯を確認するまでもなくエンジンの始動はどんなシーンでも体感上かなり明確だ。

いかにエンジン始動が素早く行われるとはいえ、ブレーキペダルからアクセルペダルへと即座に踏み変えて素早い発進を行おうとすれば、そこではわずかなタイムラグが生じることは避けられない。そうした違和感解消のためにシステム作動をカットオフするスイッチも設けられてはいるが、現実にはドライバーはある程度の「予測運転」をするものだから、実はこのあたりは「慣れ」がすぐに解決をしてしまいそうなポイント。むしろ渋滞路の中で「ほふく前進」を繰り返すと、エンジンが頻繁に始動と停止を繰り返す方が気になる人が多いだろう。

ここで問題となるのは前述のようにエンジンの停止と始動はかなり明確で、端的に言ってアイドリングストップは決してスムーズに行われるとは言い難い点。が、そもそも燃料消費量などわずかなスマートに、敢えて「特別なデバイス」を設けたのがこのモデル。となれば、それが確実に作動していることを乗る人に敢えて知らせるというのも、「新たなプレミアム性アピールのひとつの手法」と解釈すべきなのかも知れない。(文:河村康彦/写真:小平寛)

スマート フォーツークーぺ mhd主要諸元
●全長×全幅×全高:2720×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:830kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:999cc
●最高出力:52kW(71ps)/5800rpm
●最大トルク:92Nm/4500rpm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:RR
●10・15モード燃費:23.0km/L
●タイヤサイズ:前155/60R15、後 175/55R15
●車両価格(税込):184万円(2008年当時)

[ アルバム : スマート フォーツークーぺ mhd はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • かつて評論家たちは
    「これからはアイストなくば車にあらず」
    とか言ってたのに、世間にアイストは結局省エネにならないことが明らかになると
    手の平を返したように今度は攻撃を始めた。

    まったく節操のない無責任な輩どもだ。
  • 当時は画期的な仕組みとして取り上げられていたね。
    このスマート、懐かしい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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