自然と笑顔になるシンプルなオフローダー
グレートブリテン島の北東部、サースクの町に拠点を置くツイステッド社は、ランドローバー・ディフェンダーのモディファイが得意なことで英国では知られている。そんな彼らが、スズキ・ジムニー(ジムニー・シエラ)に目をつけた。
【画像】新ターボで167psへ増強 ツイステッド・スズキ・ジムニー 同社のレストモッド・ディフェンダーも 全110枚
筆者は、同社が手掛けるディフェンダーが好きだ。そして、ジムニーも大好き。2018年末に英国編集部が試乗した際も、「今年運転したクルマの中で、最も好感が持てる1台」だと評している。
乗り心地は落ち着かず、操縦性は今ひとつ。グリップ力も高いとはいえない。それでも、好ましい個性が備わるモデルに対しては、つい大目に見てしまいたくなる。振り返れば、初代ディフェンダーもそんなクルマだ。
ツイステッド社を創業したチャールズ・フォーセット氏も、似た考えを持っているに違いない。「アナログでシンプルなオフローダーです。運転していると、自然と笑顔になりますよね」。と、ジムニーを表現する。筆者もそう思う。
事実、初代ディフェンダーと現行型ジムニー(JB74W型)との共通点は少なくない。モノコック構造が一般的な時代に、別体のラダーフレーム・シャーシの上へ四角いボディを載せている。
フロントに4気筒エンジンが縦置きされ、前後ともリジットアクスルの四輪駆動。ローレンジ・トランスファーを備え、オンロードでの燃費を改善させるため、後輪駆動へ切り替えることもできる。
ベースは貨物用バン 新ターボで167psへ向上
悪路性能も立派だ。シャシーが路面と接する角度は、フロント側のアプローチアングルが約40度。ホイールベース間のブレークオーバーは28度で、リア側のデパーチャは約50度もある。ジープ・ラングラーにも劣らない数字が並ぶ。
ボディサイズは小さく、最小回転直径は9.8m。最低地上高は210mmあり、車重は1135kgと軽い。大きくパワフルなオフローダーでは走破できない入り組んだ場所にも、難なく立ち向かえる。小さいのに有能。魅力を感じないわけがない。
英国でも発売当初から人気を博したジムニーながら、CO2排出量が178g/kmと低くないことを理由に、2020年に販売を一時ストップ。商用車に対する規制の緩さに目をつけ、2021年からは貨物用のバン(LCV)として再販されている。
窮屈だったリアシートはなくなったが、4シーターとして乗られるシーンは限られるはず。ツイステッド社がベース車両とするジムニーも、その貨物用バン仕様となる。
彼らのモディファイはパワートレインにも及ぶ。1.5Lエンジンには新しいターボチャージャーが組まれ、最高出力は167psまで向上。アクセルオフと同時にブーストが抜ける悲鳴が響き、思わず頬が緩む。
サスペンションは、スプリングとダンパーを交換。ノーマルではアンチロールバーはフロントのみだが、安定性を求めてリアにも追加されている。
アルミホイールは、フェンダーラインとピッタリ揃う、5スポークの16インチ。タイヤは、BFグッドリッチのオールテレーンが組まれる。5本とも。
オリジナルと比べ物にならない車内の上質感
外装では、ボディ同色のドアミラーカバーとフロントグリルを獲得。メルセデス・ベンツGクラスに似た雰囲気を放つ。
インテリアも丁寧にアップグレードされ、ドアパネルやグラブハンドルなど、各部が上質なレザーで仕立てられている。道具のような雰囲気は残してあり、かなりイイ感じ。
スピードメーターとタコメーターは、独自のカウル内に収まる。主要なスイッチ類などは従来どおり。ダッシュボードの高い位置に、2DINサイズのアルパイン社製ヘッドユニットが収まる。
各部がソフトタッチ加工され、触感も良い。シートもレザー仕立て。荷室のパネルも丁寧に張り替えられている。上質感は、オリジナルと比べ物にならない。
快適性を考え、防音材も追加されている。長時間の高速移動が得意分野とはいえなかったジムニーだが、これなら辛いと感じることはなさそうだ。とはいえ、ジムニーがアウディQ7のように生まれ変わったわけではない。本来の魅力は変わらない。
ドライビングポジションは高く、全方向の視認性は良い。全長が3645mmしかないことを考えれば当然ながら、ボディ四隅の感覚が掴みやすい。
ステアリングホイールやペダル類の操作感は軽い。トランスミッションのタッチは少しあやふや。ステアリングレシオは、ロックトゥロック3.9回転とかなりスロー。予め、これらに慣れておく必要がある。
試乗場所は、ツイステッド社の拠点があるノース・ヨークシャー州。写真撮影にピッタリの美しい景色が広がり、道路環境も望ましい。
制限速度の範囲で気持ちイイ
前回、ジムニーへ試乗した時からだいぶ時間が経過しているが、ツイステッド社のチューニングが本格的なことは明らか。間違いなく速い。今回は高速道路を試せなかったものの、恐らく安定性にも不満はなさそうだ。
そもそも英国のジムニーは、郊外の一般道を走ることが多い。別荘やサマーハウスでの、移動手段にする人も少なくない。長距離旅行に駆り出される場面は、限定的なはず。
ただし、お値段は少々張る。実に、5万9400ポンド(約1075万円)。
確かに安くはないが、貨物バンのジムニーも、英国では3万ポンド(約543万円)を軽く超えている。ツイステッド社が施した仕事の内容を考えれば、法外な金額とまではいえないだろう。
最高に運転は楽しい。ポルシェ718ケイマンでワインディングを攻め込むのとは、意味が違うけれど。制限速度の範囲で気持ちイイ。しかも、オフローダーとしての能力は相当に高い。
試乗中、急な坂道が迫る未舗装の林道を発見。四輪駆動が必須なほど過酷な条件ではなかったが、巨大な水たまりでも不安なく突き進む。途中、トラクターと出くわしたが、狭いボディ幅ですれ違いも容易だった。
同社のフォーセットは、「最終的にスピードは余り関係ありません。操縦性のタイトさも、そこまで重要とはいえないでしょう。何より、そのクルマがどんな体験を与えるのかが大切です」。と、笑顔で説明する。
実際、ツイステッド・ジムニーは素晴らしい時間を提供してくれた。
ツイステッド・スズキ・ジムニー・リディファインド(英国仕様)のスペック
英国価格:5万9400ポンド(約1075万円)
全長:3645mm
全幅:1645mm
全高:1720mm
最高速度:177km/h(予想)
0-100km/h加速:7.0秒(予想)
燃費:13.0km/L
CO2排出量:173g/km
車両重量:1135kg
パワートレイン:直列4気筒1462ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:167ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:5速マニュアル(四輪駆動)
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