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なぜポルシェはリアエンジン車を作り続けるのか 継続でみえた可能性 再び主役に?

掲載 更新
なぜポルシェはリアエンジン車を作り続けるのか 継続でみえた可能性 再び主役に?

もくじ

ー RR、デメリットの果ての孤高
ー 続けることで広がったRRの可能性
ー 1周回ってRRが再び主役に?

あまり売れないスポーツカー メーカーが用意するワケ 情緒と技術向上が関係か

RR、デメリットの果ての孤高

長野県、善光寺の御本尊は数え年で7年に1度ご開帳される。実際にお目見えするのはご本尊ではなくその御身代りなのだが、ひとびとはその瞬間をことさら楽しみにしている。

クルマのモデルチェンジもこれと似たサイクルで行われることが多く、1964年にデビューし今日まで幾代にも渡って繰り返されてきたポルシェ911の代替わりはその度に注目を集める。

その他大勢のモデルチェンジの肝が「変更された部分」にあるのに対し、911のそれは変わることのない大原則に重きが置かれている。911のご本尊、大原則と言えばそれはポルシェが頑なに拘ってきたリアエンジン・レイアウト(RR)に他ならない。

パワーを効率よく路面に伝えられる、とだけ説明されることが多いRRのメリットだが、原初の発想は違った。前輪が舵を切るものである以上、駆動は後輪で行うことが当然であり、また広い室内空間を求めるのであればノイズの大きなパワーパックはリアエンドに位置する方が好ましかったのである。

スポーツカーではなく2列シートを持った実用車のためのレイアウトとして重宝されたRRが、なぜポルシェ911へと継承されたのか。今さらその理由を長々と述べる必要はあるまい。1930年代にフェルディナント・ポルシェ博士が設計したドイツの国民車こそが博士の考える究極であり、911の精神的な原点だからである。

フォルクスワーゲン・ビートルが証明しているように、RRはコンパクトなエンジンを搭載した実用車の場合デメリットはあまり多くない。だがRRはパワーが増す毎に、エンジンが重くなる毎に、ターボによってその出力特性が急激になるほどに、ホイールベースが詰まるほど、リアタイヤを太くするほど、限界域における操安性がトリッキーになる傾向がある。

時代に合わせた動力性能を得るため、その全ての禁を犯し続けてきたクルマこそがポルシェ911であり、それがRRレイアウトのライバル不在という孤高のポジショニングを作り上げる要因にもなっているのである。

続けることで広がったRRの可能性

デメリットの多い大パワーのRRレイアウトを大前提としつつ、そのネガティブをひとつひとつ潰してきた流れがそのままポルシェ911の歴史になっている。だが911という危うい看板商品の裏側で、’70年代のポルシェのエンジニアたちが「理想論への回帰」を目論んでいたことは秘密ではない。

トランスアクスルによって前後重量配分の最適化をはかり世界最高のFRスポーツカーと言われた944や928、そしてレーシングカーの開発で培ったノウハウの活用とコストダウンを両立した914等がそれである。

「911以外のポルシェ」は最高レベルの評価を得たが、しかし商業的に成功するには至らなかった。最高であることと魅力的であることは別の話。突き詰めるべきは誰も追従することのできないRRであると、この時ポルシェは確信したのである。

’70年代の終わり頃、RRレイアウトの弱点を克服するアイデアが浮上する。それは911のAWD化である。

ミドシップのスポーツカーを4駆にするには、一旦リア側に取り出した出力をエンジンブロックの脇を掠めてフロント側に送る複雑なシステムが必要になる。だが車体後方からエンジン、クラッチ、ファイナルドライブ、ギアボックスという順で並ぶ911ならば、ギアボックスから前方にプロペラシャフトを伸ばすことも容易だった。

AWD化された911はRRの弱点であるリア寄りの重量配分が是正され、またスタビリティの確保にも成功している。ダカールラリーやル・マンで実績をあげた後、それは’80年代の終わりにカレラ4として具現化されたのだった。

1周回ってRRが再び主役に?

AWD化以外にもポルシェ911、RRのメリットは代替わりするごとに増している。

現代の自動車シーンではすっかり当たり前になったスタビリティコントロールの恩恵を最も大きく受けているのは限界域でナーバスな挙動に陥りやすい911であるに違いない。

一方後輪を操舵することで実質的にホイールベースを可変させドライバビリティを高めるリアステアの恩恵も、FFやRRといった割り切ったレイアウトに対して特に有効だ。今日において自動車のスタイリングを決定づけている印象がある歩行者保護の規則に対しても、RRやミドシップは有利に働く。

昨今、自動車テクノロジーの最先端とRRが再び結びつきそうな気配は、EVシーンに満ちている。レシプロ・エンジンを搭載したクルマとしてはポルシェ911とルノー・トゥインゴ/スマート・フォーフォー以外に存在しないRRレイアウトだが、ことEVの世界ではBMW i3やスマート・フォーツー・エレクトリックドライブなど、それほど珍しくはないのである。

モーターとアクスルを一体化させ、一方バッテリーはフロアに敷き詰めるかセンタートンネル内に詰め込むというEVの常套レイアウトを、そのままポルシェ911のプラットフォームに当てはめるのに大した想像力はいらないはずだ。

今年9月のフランクフルトショーでお披露目されると噂されているポルシェ・タイカン。この4シーターEVスポーツカーからリアドアとフロント側のモーターを省くと、そこにEV版のポルシェ911が現出する(?)と考えるのは時期尚早だろうか。

ともあれ、かつては厄介者扱いされ、誰も手を出さなかったRRレイアウトは、ポルシェ911によってのみ生き長らえ、今まさに1周回って脚光が当たりはじめているのである。

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