現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > スズキのEV戦略はインドから。どうしてEVの生産拠点を日本に設けないのか、理由と懸念すべきポイントを考えます【Key’s note】

ここから本文です

スズキのEV戦略はインドから。どうしてEVの生産拠点を日本に設けないのか、理由と懸念すべきポイントを考えます【Key’s note】

掲載 16
スズキのEV戦略はインドから。どうしてEVの生産拠点を日本に設けないのか、理由と懸念すべきポイントを考えます【Key’s note】

なぜ日本ではなくインド?

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「スズキのEV戦略」です。40年以上、インドでの生産にかかわっているスズキ。同社がインドにてEVを生産する計画があるという報道がありました。なぜ、インドなのでしょうか? その理由について木下さんが迫ります。

中国でカスタムカーを見かけない理由とは? 厳しい車検制度のせいで自由に改造を楽しめません【Key's note】

40年以上続くインドとの関係

「スズキがEVの生産をインドで計画している」

そんなニュースを耳にしても、さして驚くほどのことではないのかもしれない。

スズキは古くからインドの成長性に期待をしてきました。いまから42年ほど前の1982年にインド国営企業マルチ・ウドヨク社と合弁生産で合意し、翌1983年から生産を開始しています。そのマルチ・ウドヨクの株を過半数取得して子会社化したのが2002年です。それ以降着実に販売を伸ばしてきており、今では年間200万台規模の生産能力を誇るまでに成長しました。

インドへの貢献度が高く評価され、モディ首相とも親交が深いようです。現地ではもはやスズキはインドのメーカーと信じて疑わないユーザーも多くいるのではないかと想像します。

世界的にEV信仰が盛り上がっているいま、将来の経営を盤石にするために、胸襟を開いたインドの生産を重視するのも当然のことかもしれません。

なんといってもインドは中国を抜いて世界で14億人というもっとも人口の多い国になったわけですし、経済的にも将来性があります。これまでは低価格帯を主力に販売台数を稼いできたスズキですが、利益率の高い高価格帯を充実させる必要があり、富裕層が多く、中間層でさえ給料が右肩上がりに伸びているインドは狙い目の市場なのです。(※編集部注:2023年の国際連合人口部統計データでは、インドが14億2862万7663人で1位、中国が14億2567万1352人で2位となっている)

スズキは2030年までに、生産能力を今の2倍、400万台にまで引き上げる計画だとしています。鼻息が荒いのも納得します。ただし、この攻めの経営が首尾よく進むかは未知数です。インドの自動車販売台数は右肩上がりの伸びだとはいえ、EVの販売台数はまだ約8万台に止まっています。668万台に達した中国の約1%未満ですから、すぐに高収益が得られると考えづらいのも確かです。

トヨタや日産、あるいはホンダといった大手が、現地現物の思想により、中国や欧米での生産力を増強しているとはいえ、あえてインドに目を向けて独自の戦略が成功するかは未知数でしょう。

EV生産には、サプライチェーンが欠かせません。バッテリー等の供給体制が不可欠です。スズキのEVは現在、資本提携関係にあるトヨタとの共同開発によるもの。そこから脱して、独自の供給網を確保することも容易ではありません。リスク覚悟の経営戦略とも言えなくもありませんね。

もっとも、大手がインドの将来性を理解しながらも拠点にしないのは、スズキほどインドと密接な関係ではないからです。“しないのではなくできない”のです。その点ではスズキは、これまでのインドとの厚い関係があります。

将来的にはインドを生産拠点に、アフリカや日本への輸出基地に据える目論みのようです。そうです、スズキはもはや、インドの会社になろうとしていると言っていいのかもしれません。誤解を招きそうな表現ですが、それほどインドに傾注していることには間違いはなさそうですね。

日本で生まれたスズキが日本の経済成長の波にのったように、今後はインドの成長性に期待しているのかもしれません。

こんな記事も読まれています

BEVが急速に普及したタイで成長鈍化の予想! それでも中国メーカーが押し寄せるのは日本進出への布石か
BEVが急速に普及したタイで成長鈍化の予想! それでも中国メーカーが押し寄せるのは日本進出への布石か
WEB CARTOP
インド乗⽤⾞市場でEVの出荷量が倍増、全体の2%を占めるまで成長
インド乗⽤⾞市場でEVの出荷量が倍増、全体の2%を占めるまで成長
@DIME
クルマを巡り米中の殴り合い勃発! 中国[EV]に関税100%アップ表明で始まった[米中自動車戦争]の行く末は!?
クルマを巡り米中の殴り合い勃発! 中国[EV]に関税100%アップ表明で始まった[米中自動車戦争]の行く末は!?
ベストカーWeb
【本田宗一郎DNAは息づいている】 型破りで破天荒なホンダの目標 EV化の裏には現実的な考えが
【本田宗一郎DNAは息づいている】 型破りで破天荒なホンダの目標 EV化の裏には現実的な考えが
AUTOCAR JAPAN
中国EV、タイで存在感を発揮。日本車は今後どう立ち向かうべきか……【バンコク国際モーターショー】
中国EV、タイで存在感を発揮。日本車は今後どう立ち向かうべきか……【バンコク国際モーターショー】
くるくら
中国市場はまだまだEV化の流れが止まらなかった! 内燃機関からPHEVを介してEVシフトするシナリオの中身
中国市場はまだまだEV化の流れが止まらなかった! 内燃機関からPHEVを介してEVシフトするシナリオの中身
THE EV TIMES
中国EVアイウェイズ、国内市場から「撤退」 価格競争で経営難 欧州へ軸足移す
中国EVアイウェイズ、国内市場から「撤退」 価格競争で経営難 欧州へ軸足移す
AUTOCAR JAPAN
自動車大手7社の“通信簿” お家芸のHV好調、歴史的な円安と値上げ効果で過去最高[新聞ウォッチ]
自動車大手7社の“通信簿” お家芸のHV好調、歴史的な円安と値上げ効果で過去最高[新聞ウォッチ]
レスポンス
ホンダが四輪電動化をアップデート、投資は倍増の10兆円に
ホンダが四輪電動化をアップデート、投資は倍増の10兆円に
レスポンス
ホンダ三部社長ブレずに「2040年にBEV+FCV100%、2030年に40%(200万台)」を明言 ホントか…? ホントに出来るのか??
ホンダ三部社長ブレずに「2040年にBEV+FCV100%、2030年に40%(200万台)」を明言 ホントか…? ホントに出来るのか??
ベストカーWeb
ホンダ「脱ガソリン」実現へ、EV苦戦の中国でも人員削減[新聞ウォッチ]
ホンダ「脱ガソリン」実現へ、EV苦戦の中国でも人員削減[新聞ウォッチ]
レスポンス
EV開発で大注目! 結局「全固体電池」は何がスゴいのか
EV開発で大注目! 結局「全固体電池」は何がスゴいのか
Merkmal
EVでは脱炭素の解決にはならない!? いま「EVは踊り場」といわれるワケ
EVでは脱炭素の解決にはならない!? いま「EVは踊り場」といわれるワケ
WEB CARTOP
ホンダ、2030年度までの10年間で10兆円投資 電動化やソフト領域の強化でEVで稼ぐ事業構造へ
ホンダ、2030年度までの10年間で10兆円投資 電動化やソフト領域の強化でEVで稼ぐ事業構造へ
日刊自動車新聞
タイにヒョンデが「N」で参戦! ただし「タイ人の好み」を把握している日本車の壁はそう簡単に崩せない
タイにヒョンデが「N」で参戦! ただし「タイ人の好み」を把握している日本車の壁はそう簡単に崩せない
WEB CARTOP
スズキ、2024年内「新型車」導入か!? 軽商用モデル計画も進行中!「過去最高」売上高と営業利益更新!
スズキ、2024年内「新型車」導入か!? 軽商用モデル計画も進行中!「過去最高」売上高と営業利益更新!
くるまのニュース
ロータスが持続可能なモビリティの未来を牽引する動画を公開。2038年までのカーボンニュートラル達成に向けた戦略とは
ロータスが持続可能なモビリティの未来を牽引する動画を公開。2038年までのカーボンニュートラル達成に向けた戦略とは
Auto Messe Web
ロータスがEV充電の不安を解消! 60万カ所の充電ステーションで欧州の移動の心配は実質ゼロに!?「エレトレ」から順次「エメヤ」にも拡大
ロータスがEV充電の不安を解消! 60万カ所の充電ステーションで欧州の移動の心配は実質ゼロに!?「エレトレ」から順次「エメヤ」にも拡大
Auto Messe Web

みんなのコメント

16件
  • b05********
    少し前に見たニュースにて、インドと言うかニューデリーは大気汚染が深刻で、
    PM2.5の平均値が北京の2倍だと書かれていました。
    日本で需要が無いからというより、大気汚染対策が急務だから、という事情もあるのではないでしょうか?
  • mob********
    インドは地産地消の意識が強く、完成車の輸入は嫌がりますし、
    需要の薄い日本で生産するより将来性のあるインドでEV生産する方が合理的だと思います。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

139.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.989.9万円

中古車を検索
Kの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

139.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.989.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村