現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 新型ホンダ アコードはアヴァンギャルドだ!

ここから本文です

新型ホンダ アコードはアヴァンギャルドだ!

掲載 更新 11
新型ホンダ アコードはアヴァンギャルドだ!

新型ホンダ「アコード」に今尾直樹が試乗した。印象はいかに?

なんて静かなクルマなのでしょう。

よく出来た背の高いヤツ~日産 ルークス試乗記

ベンチレーションのダクトの下に設けられているスターターのボタンを押すと、ピコピコっという電子音が控えめに何度か鳴り、真っ暗だったメーターナセルにブルーのメーターの画像が浮かびあがる。

センターコンソールの、通常だったらギアボックスのシフトレバーがある位置に、トランスミッションの切り替えボタンが縦列にP、R、N、Dと並んでいる。先代アコードの2016年のマイナーチェンジのときに導入された「エレクトリック・ギア・セレクター」が継承されている。私は発進したいので、Dを押してアクセル・ペダルを踏む。ほとんど無音で動き始める。静かである。2.0リッターの直列4気筒アトキンソン・サイクル・エンジンは眠ったままだからだ。

新型アコードは、先代同様、ハイブリッド専用モデルである。米国市場では、ハイブリッドのほかに、排気量1.5リッターと2.0リッターの直列4気筒ガソリンターボがあるというのに、「日本市場ではハイブリッドがないと、このクラスのセダンは始まらない」と、ホンダは考えている。そのハイブリッドを用意したところで、国内の販売目標台数は月間300台に過ぎないというのだから、ちょっとせつない。世界的に見て、本邦はセダン・マーケット縮小の先進国なのだ。

新型アコードに採用されているのは、フィットへの搭載を機に「e:HEV(イーエイチイーブイ)」と、改名されたホンダ独自の2モーター・ハイブリッド・システムである。基本的な仕組みは、先代の「Sport Hybrid i-MMD」と変わっていない。発電用と走行用、ふたつのモーターを持っていて、走行用のモーターは最高出力184ps/5000~6000rpm、最大トルク315Nm/0~2000rpmを発揮して、原動機としての主役を担う。

フロントに横置きされる2.0リッター直列4気筒アトキンソン・サイクルの高効率ガソリン・エンジンは、内径×行程=81.0×96.7mmのロング・ストロークで、13.5という高い圧縮比からすると、200psは軽くでそうだけれど、145ps/6200rpm、 175Nm /3500rpmという控えめな最高出力と最大トルクを生み出す。このエンジンはもっぱら発電用のモーターの動力源となって電気エネルギーをつくることに貢献し、高速巡航時にはエンジン直結クラッチをつないで前輪を直接駆動する。

これまでと異なるのは、バッテリーの電流を直流から交流に変換する等の「パワー・コントロール・ユニット」をコンパクトにしていること、小型・高出力密度のリチウム・イオン・バッテリーと制御用ECUなどを一体化した電源ユニットのIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)の構成部品を見直したことや2段積みレイアウトにしたことによってサイズを32%小型化して後席の下におさめ、トランクの容量を拡大していることだ。

筆者の記憶をたどると、この「e:HEV」システムは先代アコードの「Sport Hybrid i-MMD」時代よりもスポーツの度合いが抑えられ、効率重視になっているように思われる。EVモードで走る領域が確実に広がっている。

ディスプレイにドライブ・モードが刻一刻と連続的に変化していることが示されるが、その表示によれば、100km/hで巡航しているときも、エンジン直接駆動とハイブリッド、それにEVになったりもしている。巡航中はエンジンが稼働していても休止していても、音の質は変わらない。2.0リッターVTECは粛々と発電し、粛々と前輪を駆動するのだ。EVモード時に軽くアクセルを踏み込むと、電気モーターに特徴的な低速トルクでもって、スウッと音もなく加速する。なんて静かなクルマなのでしょう。

それだけに、2.0リッターVTECエンジンのまわしたときの味気ないサウンドが惜しい。まるでホンダの4気筒DOHCとは思えぬ、電気掃除機とか草刈機みたいな、業務用の、それこそ発電機みたいな、心躍らない音を発するのだ。

巨体に似合わぬ俊敏さ

「インサイト」を大きくしたようなデザインは、北米市場を大いに意識してカリフォルニアでつくり込まれたという。おそらくインサイトとか「シビック」がそうであるように、南国の太陽の下で見れば、エッジがとんがっていてステキに感じるに違いない。

外観に比して室内はオーソドックスだけれど、木目調パネルとレザー・シートがおごられていて、リラックスできる空間になっている。着座位置は低くて、視界は良好。

新開発の新世代プラットフォームは、低重心・小慣性を意識したもので、それは先代よりも全長を45mm縮めて、ホイールベースを55mm延ばし、全高を15mm低めたボディ・サイズにもあらわれている。全幅は10mm広がっていて、全長×全幅×全高は4900×1860×1450mmもある。メルセデス・ベンツ「Eクラス」やトヨタ「カムリ」とほぼおなじぐらいのサイズだけれど、全幅がこの3台のなかでもっとも広いためか、カムリやEクラスよりも運転していて大きく感じる。

サスペンションも一新。形式としては、フロントのマクファーソン・ストラットは先代とおなじで、リアはダブルウィッシュボーンからマルチリンクに変更している。アコードとしては初めてアダプティブ・ダンパー・システムを採用したことがニュースだ。

乗り心地は上々で、路面がうねったところではエア サスペンションみたいなフワフワ感がある。大きなクルマに乗っている感じがするのは、このゆったりとした乗り心地も大いに貢献している。

状況に合わせて、SPORT、NORMAL、COMFORTの3つのモードが選べ、ダンパー、ハイブリッド・システムのパワー・ユニット、パワー・ステアリング、アジャイル・ハンドリング・アシスト(前輪のブレーキを独立制御して車両の挙動をコントロールする)などを総合的に制御することで、走りのテイストを切り替えてくれる。

ということだけれど、筆者はもっぱらノーマルを愛好した。コンフォートにすると、ちょっとフワフワにすぎるし、スポーツだと若干、クルマが引き締まる感覚はあるものの、ドイツ車のノーマルとスポーツほどガラッと変わるわけではない。スポーツ・モードにすると、アクティブ・サウンド・コントロールがエンジン原音から抽出した加速サウンドを室内にもたらし、高揚感ある走りを演出するということだけれど、う~む、これにはちょっと賛同しかねる。

巨体に似合わぬ俊敏さとエレガントな挙動、ロールもピッチングも適度に抑えられていて、ハンドリングもいい。可変ステアリング・ギア・レシオも違和感がまったくない。違和感がないというのはとてもいいことである。

アコード・オウナーは都会派たるべし

新型アコードは、2019年のアメリカ市場で、およそ29万台を販売し、ベスト・セリング・カーの第11位、ホンダ車のなかでは「CR-V」、シビックに続く売れ行きを見せている大看板モデルだ。

せっかくアメリカのアコードには1.5リッターと2.0リッター、ふたつのターボ・エンジンもあるのだから、250万円ぐらいからスタートしてこれらを日本でも売ればいいのに……と、筆者なんぞは無責任に思う。

ところが、日本ではハイブリッドでないと試合に出られない、みたいなお話になっていて、カムリ同様、アコードもハイブリッド専用車になっているわけである(カムリも他国では、ガソリンモデルが販売されている)。

新型アコードの美点を味わうには、アクセルを全開にしてはいけない。アトキンソン・サイクルのエンジンに過度の高回転を要求するのはご法度である。モーターでの加速が味わえる程度に留めておけば、ため息が出るくらい静かで楽チンなセダンなのだ。ゆめゆめ、山道に行ってはいけない。アコード・オウナーは都会派たるべし。

印象的なことばがアコードのカタログにつづられているのでご紹介したい。

「世間の評判やイメージではなく、その奥にある本質を見極めようとする人がいる。時代を追いかけるのではなく、新しい時代を創ってゆく一人として、生きたいと願う人がいる。(中略)

 ACCORDのつくり手たちも、その一人だ。彼らによって、今の時代にふさわしい魂をふきこまれたACCORD。

絶対的な自信と品格にあふれたその一台が、本質を求めるあなたの感性を惹きつけるのは、決して偶然ではない」

1989年にインテグラに搭載されてデビューしたホンダVTEC(Variable ValveTiming & Lift Electronic Control System )はメチャクチャよかった。ガソリン・エンジンは官能的でなければならない、と考える私のようなタイプにとって1.6リッター・エンジンのマスターピースであり、それはNSX(初代)の3リッターV6へとつながっていったわけである。

しかるに、新型アコードのハイブリッドではVTECをもっぱら発電用のエンジンに採用、そのエンジンそのものには官能のカケラもない。VTECをつくったホンダ自身がモーター派に宗旨替えしてしまったのだ。

“いま”という時代が、エンジンはセクシーでなければならない、というような古い自動車の価値観の信者たちに改宗を迫っているのである。仮にエンジンの神様がいるとしたら、その神様を踏んづけて、新しい時代をつくろう、と。

え~い、踏んじゃえ! 神様、お許しください。

新型アコードはアヴァンギャルドだ。つまり、このアコードは、現代の自動車の最前線にいる、ということだ。たとえば、従来の、ガソリン・エンジンはまわすほどに楽しくなければならないという価値観に反しているところなぞ、アヴァンギャルドではないだろうか。発電用と走行用の2つのモーターから成るe:HEVというシステムもアヴァンギャルドであると思う。

そうして、たとえば、いま新型アコードを買って10年乗り続けたとしても、都市内の移動でこのクルマより静かで楽チンな自動車はあらわれてはいないのではあるまいか。自動運転とかコネクトとかのレベルは別にして。もし、そうであることが10年後に証明されたら、このアコードは現在にして未来のクルマであったわけだから、やっぱりアヴァンギャルドだった、ということになると思うのです。

未来に幸あれ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

こんな記事も読まれています

エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
motorsport.com 日本版
ボルボの最新BEV「EX30」の全身に息づく"ほどよきこと"の魅力
ボルボの最新BEV「EX30」の全身に息づく"ほどよきこと"の魅力
@DIME
トヨタが発表した不正行為と対象車種の一覧
トヨタが発表した不正行為と対象車種の一覧
日刊自動車新聞
「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか
「5ナンバー車」もはや中途半端? 規格を守る意義 “ちょっと幅出ちゃって3ナンバー”と、実際違いあるか
乗りものニュース
『フェルスタッペン×アロンソ』“最強タッグ”の可能性はあったのか? レッドブル重鎮マルコ「チームを良い方向に進めるのは難しかっただろう」
『フェルスタッペン×アロンソ』“最強タッグ”の可能性はあったのか? レッドブル重鎮マルコ「チームを良い方向に進めるのは難しかっただろう」
motorsport.com 日本版
[サウンド制御術・実践講座]「タイムアライメント」を使いこなせると、演奏を立体的に再現可能!
[サウンド制御術・実践講座]「タイムアライメント」を使いこなせると、演奏を立体的に再現可能!
レスポンス
【途中経過】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝1時間半時点
【途中経過】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝1時間半時点
AUTOSPORT web
そろそろ“フルモデルチェンジ”!? 17年モノ「ミニバン」に10年モノ「セダン」も!? ロングライフな「国産車」それぞれが愛される理由とは
そろそろ“フルモデルチェンジ”!? 17年モノ「ミニバン」に10年モノ「セダン」も!? ロングライフな「国産車」それぞれが愛される理由とは
くるまのニュース
【SUPER GT Round3 SUZUKA GT 3 Hours RACE】37号車Deloitte TOM’S 笹原&アレジ組がGT500初優勝!GT300は777号車D'station Vantage GT3が完勝
【SUPER GT Round3 SUZUKA GT 3 Hours RACE】37号車Deloitte TOM’S 笹原&アレジ組がGT500初優勝!GT300は777号車D'station Vantage GT3が完勝
Webモーターマガジン
マツダ、マツダ2とロードスターの現行モデルで不正判明 アテンザやアクセラのエアバッグ試験でも
マツダ、マツダ2とロードスターの現行モデルで不正判明 アテンザやアクセラのエアバッグ試験でも
日刊自動車新聞
ブガッティで1000キロの旅!「タイプ35」の100周年記念イベントが開催! 世界中のオーナーがクラシックモデルでフランスを巡りました
ブガッティで1000キロの旅!「タイプ35」の100周年記念イベントが開催! 世界中のオーナーがクラシックモデルでフランスを巡りました
Auto Messe Web
約30万円分のアイテムをお値段据え置きで特別装備!「フィアット・ドブロ」の限定モデルが登場、記念フェアも開催!
約30万円分のアイテムをお値段据え置きで特別装備!「フィアット・ドブロ」の限定モデルが登場、記念フェアも開催!
LE VOLANT CARSMEET WEB
マツダが発表した不正行為の該当車種一覧
マツダが発表した不正行為の該当車種一覧
日刊自動車新聞
【MotoGP】ツーリング状態が長かったイタリアGP決勝、タイヤ内圧ルールがその原因? マルティン主張
【MotoGP】ツーリング状態が長かったイタリアGP決勝、タイヤ内圧ルールがその原因? マルティン主張
motorsport.com 日本版
BMW『5シリーズ・ツーリング』新型にPHEV、EVモード95km…今夏欧州設定へ
BMW『5シリーズ・ツーリング』新型にPHEV、EVモード95km…今夏欧州設定へ
レスポンス
ベルトーネが創立110周年にハイパーカーを引っ提げて華麗に復活! 6月9日に公開される「GB110」とは
ベルトーネが創立110周年にハイパーカーを引っ提げて華麗に復活! 6月9日に公開される「GB110」とは
WEB CARTOP
スズキ、「アルト」のブレーキで不適切行為が判明 性能は問題なしと確認済み
スズキ、「アルト」のブレーキで不適切行為が判明 性能は問題なしと確認済み
日刊自動車新聞
贅の極みはLSかセンチュリーかLMか……グランエースもある! 国産車の後席でもっとも快適なのはドレなのか4台を比較してみた
贅の極みはLSかセンチュリーかLMか……グランエースもある! 国産車の後席でもっとも快適なのはドレなのか4台を比較してみた
WEB CARTOP

みんなのコメント

11件
  • 乗るとなあ~解るんだけど。
    絵で見てるのと実車じゃぜんぜん違うし。
    表面的な印象は少し安っぽいけど
    運転するとかなりの高級車。
    是非とも試乗を。
  • 全体的にかっこよくて価格もこなれてるでしょう。
    日本ではサイズが大きいことやブランド信者が多いから難しいけど、グローバルでは受け入れられる仕上がりだと思う。
    残念なのはホンダが積極的に採用してるボタン式シフトかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

465.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54.1345.0万円

中古車を検索
アコードハイブリッドの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

465.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

54.1345.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村